#5 発覚(脚本)
〇洞窟の入口(看板無し)
野村ひより「健司くんと、この島で会ったんですか!?」
金田英二「ああ。一緒にいたのはほんの数日間だったけど、ケガも病気もなかったよ」
金田英二「彼には、何度も励ましてもらった」
兵藤明(健司に仲間がいたなんて・・・誤算だった・・・)
野村ひより「でも・・・はぐれてからもう、だいぶ経つんですよね・・・?」
金田英二「ああ。彼が戻ると思って、僕らの寝床で待っていたんだ」
金田英二「数日間経っても戻らないから、こうして探しに出たんだよ・・・」
野村ひより「そうなんだ・・・」
金田英二「だ、大丈夫!」
金田英二「彼、とてもたくましかったし、無事にやってるに決まってるさ!」
野村ひより「ありがとうございます。 ・・・そう信じたいです」
・・・信じたって無駄だ。死んでるよ。
確かにこの手で殺したんだ
野村ひより「3人で探せば、見つけられるかもしれない」
兵藤明「いや、金田さんが探し回っても見つからなかったんだ」
兵藤明「あまり無闇に動かない方がいい」
野村ひより「でも・・・」
兵藤明「食料だって、十分じゃない。 探しに行くにしても、準備してからにしよう」
野村ひより「そっか・・・そうだよね」
金田英二「す、すまないね。 貴重な食料を、いただいてしまって・・・」
野村ひより「何言ってるんですか。 金田さんはもう、私たちの仲間です」
野村ひより「私たち、これから力を合わせていきましょう!」
金田英二「ううう・・・ありがとう・・・」
兵藤明(くそっ! こんなオヤジを仲間に!? ふざけんなっ!)
〇海辺
兵藤明「・・・・・・」
野村ひより「金田さん、横になってすぐ寝ちゃった」
野村ひより「何日も一人でさまよい歩いて、疲れたんだと思う」
兵藤明「・・・そうか」
明は、ひよりの手を握る。
しかし、ひよりは優しくその手をほどく。
野村ひより「・・・ごめんなさい」
野村ひより「本当に・・・身勝手だと思う」
野村ひより「だけど・・・健司くんが生きてるかもしれないと思ったら・・・」
兵藤明「・・・・・・」
野村ひより「本当に、ごめんなさい。 都合の良いこと言ってるって分かってる」
野村ひより「それでも、許してくれるなら・・・これからも明さんとは助け合っていきたい」
兵藤明「・・・そうだね。そうしよう」
〇海辺
兵藤明「・・・なんなんだよ」
大きな石を持ち上げると、陸に上がってきていたウミガメに打ち付ける。
兵藤明「くそっ! 何がごめんなさいだ! ふざけんなッ!」
ウミガメの甲羅は陥没し、やがて絶命する。
兵藤明「俺は多くを望んじゃないッ!」
兵藤明「ひよりと二人で暮らせれば、それでいいのにッ!」
兵藤明「全部、金田とかいうあのオッサンのせいだ!」
兵藤明「・・・リセットしよう」
兵藤明「オッサンを消して、今まで通り、ひよりと二人きりに戻る」
兵藤明「時間が経って健司への思いが風化すれば、あいつの心は必ず俺に戻ってくる・・・!」
〇岩穴の出口
槍を持った明と金田が身支度を整えている。
兵藤明「じゃあ、狩りに行ってくるよ」
兵藤明「食料を十分に確保出来たら、健司さんを探しに行こうね」
野村ひより「うん・・・ありがとう」
金田英二「僕も足を引っ張らないように、明くんに狩りのノウハウを教わってきます」
野村ひより「金田さんも、ケガがないように気をつけてくださいね」
〇けもの道
兵藤明「このあたりには、イノシシが出るんですよ」
金田英二「ほぉ! ずーっと魚やキノコしか食べていないので、楽しみです」
兵藤明(殺されるとも知らずに、のん気なオッサンだよ)
兵藤明(もう、この辺でいいだろう。 オッサン、短い付き合いだったな・・・)
明は歩くペースを緩めて、金田の背後をとる。
兵藤明「死ね!」
明が槍で突こうとしたその時、
瞬時に金田が振り返り、明の顔を目がけて土を投げた。
兵藤明「なっ・・・!」
土が目に入り、よろめく明。
金田は明の槍を取り上げ、殴りつける。
金田英二「うおぉぉッ!」
兵藤明「うっ・・・!」
明の目の前が、真っ暗になる・・・。
〇けもの道
兵藤明「・・・いてェ・・・」
金田英二「き、気がついた?」
明は両手を木のつるで縛られて、座らされている。
兵藤明「・・・お前、どうして俺の動きが読めた?」
金田英二「君が持っていたこの槍、健司くんが持っていたものだろう?」
金田英二「最初は似ているだけだと思ったが、念のため警戒していたんだ」
兵藤明「へっ・・・バカなオッサンだと思ってたのによ」
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