#4 ひよりの心(脚本)
〇岩穴の出口
野村ひより「・・・明さん」
兵藤明「ひよりちゃん、気がついた?」
野村ひより「私、森の中で目の前が真っ白になって・・・」
兵藤明「すごい熱だったんだよ」
野村ひより「・・・ゴメンね。迷惑かけて」
兵藤明「こんな島で、十分な栄養も取れず・・・今まで頑張ってきたじゃん」
兵藤明「少し疲れちゃっただけだよ」
野村ひより「・・・ありがとう」
兵藤明「無理しちゃダメだ。まだまだ、ゆっくり寝てな」
野村ひより「・・・うん」
〇洞窟の入口(看板無し)
洞窟の前で明が火を焚いている。
野村ひより「明さん」
兵藤明「ひよりちゃん、まだ寝てなきゃ!」
野村ひより「ううん。だいぶ良くなったから」
兵藤明「そっか・・・よかった・・・。 丸二日寝てたから、お腹すいたよね」
兵藤明「今、貝のだし汁を作るから・・・」
そう言って明は立ち上がるが、ふらついてバランスを崩してしまう。
野村ひより「明さん、大丈夫!?」
兵藤明「おお・・・大丈夫、大丈夫」
野村ひより「明さん、すごく疲れてるみたい」
野村ひより「もしかして、ろくに寝ないで私の看病をしてたの・・・?」
兵藤明「病人が気にすることじゃないよ!」
野村ひより「明さん・・・」
〇洞窟の入口(看板無し)
明とひよりが月を眺めている。
野村ひより「明さん、助けてくれてありがとう」
兵藤明「助けたなんて、大げさだよ」
野村ひより「考えてみたら私、出会った時からずっと、明さんに助けられてるんだもんね」
兵藤明「当り前のことをしただけだって」
ひよりは、明の肩に頭を乗せる。
兵藤明「ひよりちゃん・・・」
野村ひより「明さんといると、落ち着くよ・・・」
明は、優しく身を離す。
兵藤明「・・・なぁ、ひよりちゃん、俺も男なんだ」
兵藤明「こんなことされたら・・・俺、我慢できなくなるよ」
野村ひより「我慢・・・しなくていいよ」
兵藤明「・・・え?」
野村ひより「前にキスした夜のこと、私も忘れたわけじゃないの」
兵藤明「・・・・・・」
明はひよりを抱き寄せると、口づけをする。
ひよりはただ、明に身を委ねる・・・。
兵藤明(ついに、心も体も一つになる時がきたっ・・・)
〇海辺
明とひよりが、手を繋いで散歩している。
野村ひより「こんな状況で、幸せだって思ってもいいのかな」
兵藤明「いいに決まってる。 俺たち、出会えて良かったんだ」
野村ひより「ホントはね・・・多分、心のどこかで分かってたんだ」
野村ひより「・・・健司くんには、もう会えないってこと」
兵藤明「ひよりちゃん・・・」
野村ひより「私、強く生きていかなきゃ・・・」
兵藤明「大丈夫。俺が支えるよ」
〇黒
これでいい・・・。すべて、うまくいった
〇洞窟の入口(看板無し)
兵藤明「これ」
野村ひより「綺麗・・・これ、スズラン?」
兵藤明「うん、その一種だと思う」
野村ひより「いいね、飾ろう!」
〇海辺
俺は知っていた。
スズランには毒があることを
花を見つけたあの日から、俺はひよりの食事に、少しずつ混ぜることにしたんだ・・・
野村ひより「晴れてるから、水平線が綺麗だね」
兵藤明「ああ、そうだね」
わざと体調を崩させて、つきっきりで看病する姿を印象づける。
そうやって、信頼を勝ち取る・・・
俺の作戦は、思惑通りに結実したわけだ・・・
兵藤明(俺を見つめるひよりの目、すっかり、信用しきってるじゃねえか・・・)
明は、ひよりの身体を抱き寄せる。
野村ひより「きゃっ! びっくりした!」
兵藤明「ゴメン。でも、こうしてると・・・ひよりの体温を感じられて・・・落ち着く・・・」
野村ひより「・・・私も、落ち着くよ」
ひより・・・お前はもう、俺のもんだ
〇けもの道
数日後
兵藤明「イノシシでもウサギでも、ここに落ちたら、串刺しでイチコロだな」
野村ひより「こわぁ・・・。野蛮・・・」
兵藤明「肉にありつけるチャンスが増えるんだから、文句言わないの」
野村ひより「は~い。了解です、明隊長」
兵藤明「いい返事ですね。ひより隊員」
あれから数日間、俺はひよりと楽しい日々を過ごしている。
自殺しようとしていた頃が嘘みたいだ
すると突然、茂みから蛇が飛び出してくる。
兵藤明「ひ、ひえっ!」
野村ひより「ど、どうしたの明さん!?」
野村ひより「ははは! なんだ、蛇か。 ほっとけば、どっか行くよ」
兵藤明「よく平気だな・・・」
野村ひより「大学の時の友達が飼ってたから。 ていうか明さん、蛇苦手なんだ。意外」
兵藤明「わ、笑うなよ・・・」
野村ひより「ん・・・?」
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健司……化けて出るパターンかなと思いきや、現実的な流れと登場で邪魔してきて(笑)。
無人島脱出バラエティや自殺本で鍛えた知識力がこういう時に活かされるのわかります×2……!
サバイバルって情報戦ですよね……!