一日目! 考えるより先に…(脚本)
〇開けた交差点
──オレのささやかな願い。
それは・・・
タカト「無遅刻無欠席!!」
そう、オレは中学時代、寝坊の連続で
ばあちゃんに迷惑をかけっぱなしだった。
だから高校生はそうはならないように、
早寝早起きを心がけ
こうして予鈴一時間前に着くよう
学校へ向かっているわけだが──
カスミ「うぅ・・・」
タカト「新学期早々、少女にぶつかってしまった!!」
タカト「おい君、だ、大丈夫か?」
カスミ「ううー・・・」
タカト「もしかして怪我をしてないか? 本当にごめん、ちょっと見せてみろ──」
カスミ「うーっ!」
タカト「・・・・・・」
タカト(行ってしまった・・・)
タカト(追いかけるか? 怪我をしていたし、裸足だった)
タカト(オレには無遅刻無欠席という ささやかな願いがあるのだが──)
タカト「怪我した子を無視することはできない!」
タカト「学校は、まあ何とかなるだろう!」
〇広い公園
タカト「この角を曲がった気がするんだが どこに行ったんだろう?」
「ううー・・・」
タカト「おっ、公園にいたのか 遊具の下に人影があるぞ」
狼「ぐるるるる・・・」
タカト「大きな狼だ!?」
思わず尻餅をついたが、よく見ると
この狼は脚を怪我しているようだった。
タカト「だ、大丈夫か? ひどい怪我だ──」
狼「がう、がう!」
タカト「うおっ、でかい牙!」
タカト「大丈夫、オレは敵じゃないぞ」
タカト「ばあちゃんに持たされた救急箱がある。 これを使おう」
狼「ううー・・・うう?」
タカト「ほら、包帯も巻いたぞ。 いい子にしてて偉いなあ」
狼「・・・・・・」
狼「わんわん!」
タカト「っちょ、礼なんていいよ! だからそんな舐めるなって!」
〇広い公園
タカト「な、なんだ?」
タカト「急に空が暗く── 一体どうなってる?」
モンスター「グオオオオ」
タカト「なんかヤバいのが現れたぞ!?」
狼「ううー!」
タカト「ギリギリかわされる・・・」
タカト「怪我してるから攻撃が決まらないんだ・・・ くそ、オレが戦えれば!」
モンスター「グオオオオ!」
狼「きゃん!」
タカト「狼! おいしっかりしろ、 オレがなんとかしてやるからな!」
狼「くぅーん・・・」
タカト「なんだ? 今は遊んでる場合じゃ──」
タカト(こいつ、何か言いたそうに ずっとオレの顔を舐めて──ん?)
タカト「な、なんだ? 体が──」
〇広い公園
タカト(ぽめ)「・・・・・・」
タカト(ぽめ)「ぽめ!?!?」
タカト(ぽめ)(なんか小さなフワフワな生き物に なってる──!?)
タカト(ぽめ)(でも。 なんだか力が湧いてくるぞ)
タカト(ぽめ)「うおおおっ!」
「!?」
タカト(ぽめ)「当たった! 必殺・体当たり!」
狼「危ない!」
タカト(ぽめ)「!!」
「グオオオオ!」
タカト(ぽめ)「なんとかかわしたけど・・・ ありゃなんだ?」
狼「あのドロドロは毒よ。 私が指示するから、うまく攻撃して」
タカト(ぽめ)「お、おう!」
タカト(ぽめ)(なんでか狼の言ってることが分かる、 気がする・・・まあいいか)
狼「左によけて! そのまま回り込んで!」
タカト(ぽめ)「うおおおおっ!」
「グオ・・・」
タカト(ぽめ)「決まった!」
狼「まだよ、最後にあいつに噛みついて! めいっぱい!」
タカト(ぽめ)「分かった!」
タカト(ぽめ)「がぶっ!」
「グ・・・・・・」
〇広い公園
タカト(ぽめ)「モンスターがきらきらした粒子に・・・」
カスミ「ふう・・・」
タカト(ぽめ)「今度はなんだ!?」
タカト(ぽめ)(狼が、さっきの女の子に変身した!)
カスミ「私の代わりに戦ってくれてありがと。 それに包帯も。こんなに助けてもらえるなんて思わなかったわ」
カスミ「私はカスミ。狼の妖怪の子孫。そして──」
カスミ「その力を分け与える者でもある。 あなたが変身したのも、それが理由よ」
カスミがおもむろに自分の服の袖をまくる。
白い透き通った肌があらわになる。
その腕を、3本の引っ掻き傷のような、
刺青のような痕が、覆っていた。
白と黒の、縞模様のようにも見える。
これが、彼女のような一族を示す証。
ある「呪い」の刻印だった。
カスミ(どうして彼、犬になっちゃったのかしら。 本来なら、狼になるはずが──)
タカト(ぽめ)「な、なにを言っているのかさっぱり 分からんが、オレは────」
タカト(ぽめ)「このまま学校に行けるのか!?」
カスミ「が、学校?」
タカト(ぽめ)「無遅刻無欠席が夢なんだ!」
カスミ「えっと、あなたが変身しちゃったこととか、妖怪とか、そういうのは──」
タカト(ぽめ)「むしろ面白かったくらいだ!」
タカト(ぽめ)(オレは昔から頭より体が先に動くタイプ、らしいが、犬になるパターンは初めてだな)
タカト(ぽめ)(オレはこの姿で授業を受けることができるんだろうか?)
カスミ「・・・そっか」
カスミ「なら、あなたに決めても、いいかな」
心配をするタカトをよそに、カスミは彼にそっと近づくと、
そのままキスをした。
タカト(ぽめ)「!!!?」
タカト「うおっ、戻った!」
タカト「よく分からないうちに元に戻ったぞ!」
タカト「ありがとう! カスミ!」
カスミ(何をしたかは、今は黙ってようっと)
こうして、意気揚々と登校したタカトは、
初日から遅刻したのだった。
つづく!
ポメラニアン満載!?やばい!今後のもふもふな展開が楽しみです!気になる〜!!
タカト(ぽめ)の可愛らしさにやられました!カスミの能力や正体、そしてモンスターについて気になることだらけですね。次話が楽しみになります!
変身して狼になるはずが、かわいい犬になってしまった主人公がどうなるのか楽しみです。
少女との出会いが、彼の日常を変えてしまうことになるのでしょうか?