破滅の孤島

平家星

#3 届かぬ想い(脚本)

破滅の孤島

平家星

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〇けもの道
  明は拳ぐらいの大きさの石を握りしめ、健司に近づいた。
  ひよりと二人きりになるには、こいつを・・・
  イノシシを担いで歩く健司は、明の様子に気がつかず、前を見たまま会話を続けている。
野村健司「3人でイノシシを食べられますね」
兵藤明「そうですね・・・」
  明は大きく振りかぶり、健司の頭に向かって思いきり石を振り下ろした。
兵藤明「死んでくれッ!」
野村健司「うっ・・・!」
兵藤明「ハァ・・・ハァ・・・」
野村健司「・・・お、お前何を・・・」
  明は馬乗りになり、健司の首を絞める。
兵藤明「起きるな! 起きないでくれッ!」
野村健司「・・・は・・・放・・・せ・・・」
兵藤明「かわいそうなんて思ってたら、生きていけない」
兵藤明「・・・そうだろ? なぁ!」
野村健司「ぐっ・・・げぇぇ・・・」
兵藤明「は、ははは・・・! 無様だな」
  やがて健司の身体から力が抜け、ピクリとも動かなくなる。
兵藤明「ハァ・・・ハァ・・・」
  明はゆっくりと立ち上がる。
  その手は、鮮血で汚れている。
兵藤明「やっと死んだか。これでいいんだ・・・」

〇けもの道
  明は健司の死体を草むらに引きずり入れ、
  木々を重ねて覆い隠した。
兵藤明「いいか? お前は、妻を残して飛行機事故で死んだ」
兵藤明「安心しろ。彼女は俺が、幸せにしてやるから」
  明は健司が持っていた槍を手に取る。
兵藤明「丈夫ないい槍だな」
兵藤明「こいつはお前の形見として、俺が使わせてもらうよ」

〇岩穴の出口
野村ひより「あ! 明さん」
兵藤明「ただいま」
野村ひより「えーっ!? イノシシ? すごいすごい!」
兵藤明「久々に肉が食えるよ」
野村ひより「やったー! ねぇ、こっちも見て!」
兵藤明「ん?」
  ひよりは大きな貝殻を明に見せた。
  貝殻上には、少しだけだが茶色っぽい粉が乗っている。
兵藤明「これ、塩?」
野村ひより「うん。海水を火にかけて、地道に作ったの」
兵藤明「肉と塩か、最高だな」
野村ひより「今夜はごちそうだね!」
兵藤明「・・・俺たち、幸せになろうな。 あいつの分まで」
野村ひより「ん? なに?」
兵藤明「何でもない。さあ、さっそく料理しよう」

〇海辺
野村ひより「はぁ~。美味しかったぁ・・・」
兵藤明「ひよりちゃんが作った塩のおかげだね」
野村ひより「明さんの獲ったお肉のおかげでしょ」
野村ひより「・・・あ~あ、健司くんにも食べさせてあげたいなぁ」
兵藤明(・・・また健司かよ)
野村ひより「彼、焼き肉大好きだったから」
野村ひより「食べ放題に行くと、店員さんが困るくらい注文するの」
野村ひより「私、いつも恥ずかしかった」
兵藤明「そうなんだ」
兵藤明(ああ。真実を言ってやりたい・・・)
兵藤明(『この世界にはもう、そんな男は存在しない』って)
野村ひより「ごめん。明さんには関係ない話だよね。 つい、思い出話なんかして・・・」
兵藤明「・・・いいんだよ、話したいことを、話してくれれば」

〇岩穴の出口
  寝床の中、横になっている二人。
  ひよりは、壁に飾っているスズランを見る。
野村ひより「あれ、スズラン、新しくなってる・・・?」
兵藤明「ああ。しおれかけてたから、交換したんだ」
野村ひより「・・・ありがとう。 お花があるだけで、気分が明るくなよ」
野村ひより「・・・おやすみ」
  ひよりはそうつぶやくと、すぐに寝息をたて始める。
  そんなひよりの顔を見ている明。
兵藤明「・・・・・・」
  ふと、目線を落とすと、ひよりの太ももが露わになっている。
兵藤明(くそっ、コイツ、やっぱりいい脚してんなぁ。 いっそのこと襲い掛かって・・・)

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