破滅の孤島

平家星

#2 遭遇(脚本)

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平家星

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〇海
  海に潜った明はしばらくすると、貝を手に水面へと上がってきた。
兵藤明「よし、うまそうなのが獲れたな」
  この島に流れ着いて、約2週間。
  未だに、俺とひより以外の人間の姿は見ていない
兵藤明(もっとも、俺にとっては好都合だが)

〇海辺
野村ひより「明さん、見て!」
  ひよりが持つ手製の網には、数匹の魚が入っている。
野村ひより「ついに獲れたよ」
野村ひより「明さんのアドバイスで、網の位置を変えてみたのが良かったんだと思う。さすがだね」
兵藤明「昔、キャンプ行ってた時期があったから」
野村ひより「へぇ~、そうなんだ」
兵藤明(・・・本当は、家でだらだらサバイバル生活のバラエティを見てただけだけど)
野村ひより「頼りにしてます!」
兵藤明(ひよりと二人きりで過ごす時間・・・俺は自分の存在意義を感じられる)
兵藤明(生まれて初めての感覚だ)
兵藤明「キノコを採って帰るから、先に穴に戻っててくれる?」
野村ひより「わかった」

〇森の中
兵藤明(毒毒しい色の物ほど、毒がない。 こっちはマンガから仕入れた浅い知識だ)
兵藤明(昨日少し食べて、安全を確かめることができた)
  ふと見ると、白い花が咲いている。
兵藤明(・・・キレイな花だな)

〇洞窟の入口(看板無し)
  海から少し離れたところにある横穴。
  明とひよりはここを寝床にしていた。
  明が中を覗くと、ひよりが枯れ葉を敷き詰めている。
野村ひより「あっ、明さん」
野村ひより「少しでも床をやわらかくしておいた方が、寝やすいと思って」
兵藤明「うん。いいと思う。・・・これ」
野村ひより「綺麗・・・これ、スズラン?」
兵藤明「うん、その一種だと思う」
野村ひより「いいね、飾ろう!」

〇岩穴の出口
  明とひよりが横になっている。
  穴の外には、遠く海が見える。
野村ひより「今夜は、海が綺麗だね」
兵藤明「ああ。月が海に映ってる」
野村ひより「大きな、クラゲみたい・・・」
野村ひより「こんな状況になるまでは、月なんかいちいち気に留めなかったなぁ」
兵藤明「ここだからこそ、見えるものもある」
野村ひより「・・・そうだね」
兵藤明「・・・・・・」
  ふいに、明がひよりに口づけをした。
野村ひより「!」
  一度は受け入れるが、ひよりはすぐに顔をそらした。
野村ひより「ごめんなさい。 これ以上は、やめておこう・・・」
兵藤明「・・・・・・」
野村ひより「私、健司くんが生きてるって信じてるから」
兵藤明「・・・そうか」

〇洞窟の入口(看板無し)
  細い槍を手に、明が身支度をしている。
兵藤明「じゃ、行ってくるよ。 ウサギの一匹でも獲れればいいけど」
野村ひより「気をつけてね!」

〇けもの道
兵藤明(・・・・・・)
兵藤明(昨日の夜は、いい雰囲気だったのに・・・)
兵藤明(まだ、手を出すには早かったか。 だが、これでいい)
兵藤明(ひよりは、強く拒否しなかった。 身体を許すまでは、時間の問題だ)
  ガサガサッ!
兵藤明「!? 何かいる・・・」

〇けもの道
  明が茂みに足を踏み入れると、少し先にイノシシがいるのが見えた。
兵藤明(イノシシ! しかし、この槍だけではどうにも・・・)
男の声「おい・・・」
兵藤明「!? 誰かいるのか!?」
  明が振り返ると、手に槍を持った男が、中腰で近づいてくる。
男「しっ、静かに」
兵藤明「あんたは・・・」
男「自己紹介はあとに・・・。 肉にありつけるチャンスだ」
男「協力しましょう」
兵藤明「あ、ああ・・・」
男「イノシシを追い回して、向こうの細い道に追い込んでください」
男「俺が向こうで待ち構えて、網を投げて、捕まえる」
兵藤明「分かりました」
男「向こうに回り込んだら、合図を出します」
兵藤明(何だアイツ・・・アイツも飛行機に乗っていたのか?)
兵藤明(この島に、定住民がいるとは考えにくいが・・・)
  明の見つめる先、小道の向こうに、男が現れた。
  手で合図を出す。
兵藤明(よし・・・)
兵藤明「うおぉぉぉ!」
  イノシシは、明の姿を見て、小道の方へ逃げていく。
男「ふんっ!」
  男が網を投げると、網に捕らわれたイノシシはバランスを崩し倒れた。
兵藤明「すごい! やった・・・」
男「安心するには、まだ早い」
  男は手に持っていた槍を、網の中のイノシシに突き刺す。
兵藤明「!」
男「死ねッ、死ねッ!」

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コメント

  • いやぁ……『黒いキューピット』の方といい、やはりスッと読めてそれでいて黒い展開が心地よい感じです……!🙂

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