第1話 イケメン探偵は颯爽と登場する(脚本)
〇黒
如月春香(どうしてこんな事になっちゃったんだろう)
如月春香(ついこの間までは普通の大学生だったのに)
如月春香(今は手足を縛られて椅子に拘束されてる)
如月春香(このままあいつに殺されちゃうのかな・・・)
如月春香(死ぬまでに一度でいいから素敵な恋がしたかった)
如月春香(できればイケメンと・・・)
如月春香(所長・・・助けて!)
〇女性の部屋
数カ月前
如月春香(所長がイケメンで目立つため、張り込みや尾行が伴う調査はご遠慮ください)
如月春香(なにこれ・・・)
如月春香(ってか、社名がイケメン探偵事務所って・・・)
〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「今日も平和だー」
インターフォンが鳴る
皇伽耶斗「嫌な予感しかしない・・・」
皇伽耶斗「はい、イケメン探偵事務所です」
???「ヤバっ、事務所名言うんだ」
皇伽耶斗「イタズラか」
「ちょっと待って!」
如月春香「うあっ!」
皇伽耶斗「どうかしました?」
如月春香「どうもこうも、あっちの部屋、ゴミ屋敷じゃないですか!」
皇伽耶斗「ああ、それなら大丈夫です、生ごみはありませんから」
如月春香「そういう問題じゃ・・・」
皇伽耶斗「こちらへどうぞ」
皇伽耶斗「早速ですが、仕事のご依頼ですか?」
如月春香「ええ、まあ・・・」
皇伽耶斗「こんなさびれた所に来るとは、あなたはよっぽどの物好きか」
皇伽耶斗「イケメン好きですね」
如月春香「違います!」
如月春香「私は大学生でお金がないので、安そうなところに来るしかないんです」
如月春香「確かにイケメンだけど・・・」
皇伽耶斗「何か?」
如月春香「いえ、何でも」
皇伽耶斗「で、ご依頼の内容は?」
如月春香「私、通学途中にある公園の横をいつも通るんですが」
如月春香「そこに数カ月前から黒猫が住み着くようになったんです」
如月春香「しばらくすると、ある女性がその猫に餌をあげるようになりました」
皇伽耶斗「はあ・・・」
如月春香「ところがある雨の強い日に女性の姿がなく」
如月春香「猫だけが女性の現れる場所に佇んでいました」
皇伽耶斗「はあ・・・」
如月春香「翌日、その女性を見かけたので、私話しかけたんです」
〇広い公園
如月春香「昨日、いらっしゃいませんでしたね」
黒柳京子「え?」
如月春香「その猫、あなたを待ってましたよ」
黒柳京子「・・・」
如月春香「たぶん、もうその子には自分で餌を手に入れる術がないんだと思います」
如月春香「あなたに餌をもらえるのが当たり前になってるから」
如月春香「毎日あげられないなら、最初からこういう事はしない方が良いんじゃないでしょうか」
如月春香「猫がかわいそう」
黒柳京子「すみません・・・」
〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「手厳しいなぁ」
如月春香「私なにか間違ってますか?」
皇伽耶斗「いや、間違ってはないと思いますけど・・・」
如月春香「それから数日は、女性も毎日来ているようでした」
如月春香「でも2週間後くらいかな」
如月春香「ある日、女性がひとりで佇んでたんです」
〇広い公園
如月春香「どうしました?」
黒柳京子「ああ・・・あなた」
如月春香「あれ、猫は?」
黒柳京子「いないんです」
黒柳京子「いつもこの時間はここにいるのに」
如月春香「どうしたんだろう・・・」
黒柳京子「・・・」
如月春香「今日は、何か事情があって来れないのかも」
如月春香「明日、また来てみましょう」
〇ダイニング(食事なし)
如月春香「でも、次の日もその次の日も猫は現れませんでした」
皇伽耶斗「はあ・・・」
如月春香「さっきから「はぁ」ばっかり」
如月春香「ちゃんと聞いてます?」
皇伽耶斗「失礼、つまり依頼というのは・・・」
如月春香「その猫を探してください」
皇伽耶斗「ネコヲサガス・・・」
皇伽耶斗「あれ、でも何であなたが?」
如月春香「女性に厳しいことを言った手前、ばつが悪いじゃないですか」
如月春香「私も探してはみたんですが見つからなくて」
如月春香「これはもう、プロの力を借りるしかないなって」
皇伽耶斗「プロ・・・」
如月春香「引き受けてくれなかったら、私SNSで拡散します」
如月春香「イケメン探偵事務所は、猫を見殺しにしたって」
皇伽耶斗「キョウハク・・・」
如月春香「受けてくれますね?」
皇伽耶斗「あー、わかりましたよ」
ゴミの山の中から申込書を引っ張り出してくる皇
皇伽耶斗「これにご記入ください」
如月春香「え、何で?」
皇伽耶斗「何か?」
如月春香「どうしてあのゴミの中から申込書をすんなり出せるんですか?」
皇伽耶斗「ああ、何がどこにあるのかは僕のこの灰色の脳細胞に入ってますから」
如月春香(何だ、たまたまか)
〇広い公園
ずっと来てるのか?
〇一戸建て
ここが家か
〇一戸建て
旦那は真夜中に帰宅
〇大きいマンション
帰宅前にここに寄ってるのか
〇職人の作業場
NPO法人ねこの里
〇応接室
ねこの里所長「餌をあげてくれて、真っ先にありがとうという気持ちですね」
ねこの里所長「餌やりさんにも事情があるでしょうから」
ねこの里所長「あげられない日もあるでしょう」
ねこの里所長「でも、私たちはそれを責めたりは致しません」
ねこの里所長「そういった事情を含めて、餌やりさんに猫の管理者になってもらえるように促していきます」
〇ダイニング(食事なし)
一週間後
如月春香「どうして報告がないんですか?」
如月春香「電話にも出ないし」
皇伽耶斗「いろいろと忙しくて」
如月春香「それで、猫は見つかったんですか?」
皇伽耶斗「あー、見つかりませんでしたー」
如月春香「ちゃんと探したんですか!?」
皇伽耶斗「あの猫はもう戻りませんね」
如月春香「どういう意味ですか?」
皇伽耶斗「発情期になってメス猫を探しに行ったのかもー」
如月春香「な、なにを言ってるんですか」
如月春香「ふざけないで!」
皇伽耶斗「見つけられなかったんで、調査費用は結構でーす」
如月春香「そんな適当な仕事して」
如月春香「あなたはイケメンなだけの最低野郎よ!」
〇大きいショッピングモール
約一月後
〇ショッピングモールの一階
如月春香(面接疲れた・・・)
如月春香「あっ」
黒柳京子「あなたは」
如月春香「お久しぶりです、お元気でしたか?」
黒柳京子「はい、おかげさまで」
如月春香「もしかして、今日はご主人とデート?」
黒柳京子「ええ、まあ」
〇モールの休憩所
黒柳京子「あの後、何度か公園に行ってみたのですが」
黒柳京子「猫には会えませんでした」
如月春香「そうですか・・・」
黒柳京子「ただ、その頃と時を同じくして」
黒柳京子「ずっと忙しいと言ってかまってくれなかった夫が、急に優しくなったんです」
如月春香「それは良かったじゃないですか!」
黒柳京子「それで私思ったんです」
黒柳京子「私は自分の寂しさを、あの猫で紛らわしていたんじゃないかって」
黒柳京子「あなたにこんな事を言ったら、また叱られてしまうだろうけど」
如月春香「いえ、そんなことありません」
如月春香「あの時は偉そうな事言ってすみませんでした」
如月春香「とにかく、今がお幸せそうで良かったです」
〇広い公園
如月春香(幸せそうで良かった)
如月春香(出会った時とは別人みたいに表情が明るくなってたもん)
少年A「お前、道に飛び出すと、前に車で轢かれた黒猫みたいになるぞ」
少年B「うるせぇ!」
如月春香「黒猫!?」
如月春香「ねえ、ちょっと!」
少年A「はい?」
如月春香「今の話、詳しく聞かせてくれないかな?」
〇ダイニング(食事なし)
如月春香「知ってたんですか!?」
皇伽耶斗「来ていきなり何ですか?」
如月春香「猫が死んでたこと!」
皇伽耶斗「ああ、それねー」
如月春香「それねーじゃないです!」
皇伽耶斗「僕がそれを話して、春香さんは幸福になった?」
如月春香「そういう問題じゃなくて、なぜ依頼人に嘘の報告をするんですか!」
皇伽耶斗「言っておくけど、嘘は言ってない」
皇伽耶斗「あの猫はもう戻らないと伝えたはずだよ」
如月春香「あっ!」
如月春香「で、でも発情期だとか何だとか」
皇伽耶斗「あなたはあの猫の飼い主でも何でもないんです」
皇伽耶斗「だから、わざわざ死んだことを教えて落ち込ませる必要はないと僕は考えました」
如月春香「・・・」
如月春香「私に気を遣っていただいたのはわかりました」
如月春香「でも、やっぱり仕事なんだから、事実をありのまま報告するのが正しいんじゃないでしょうか?」
皇伽耶斗「春香さん、イケメンのメンってどういう意味でしょう?」
如月春香「なんですか、突然・・・」
如月春香「それは顔面の面とか男性のMenでしょ?」
皇伽耶斗「実は、事務所名のメンには違う意味があります」
如月春香「だから何の話?」
皇伽耶斗「方面のメンです」
皇伽耶斗「僕は、こんな事務所を訪れてくれた依頼人やその関係者には、なるべく幸せになってもらいたいと思ってるんです」
皇伽耶斗「そんな探偵社は他にないでしょうけど、それが僕のモットーなんです」
今がお幸せそうで良かったです
如月春香「あっ!」
皇伽耶斗「もちろん」
皇伽耶斗「春香さん、君にも幸せになってほしい」
如月春香「・・・」
如月春香「うぅぅ、ウォーっ!」
皇伽耶斗「なんだ、なんだ!?」
如月春香「だったら、私をここで雇いなさいよ!」
如月春香「バイトが決まらくて困ってるの!」
皇伽耶斗「ちょっと待て、何でそうなる!?」
如月春香「うるさい、責任取れ!」
皇伽耶斗「セキニン・・・」
如月春香「あと、あなた京子さんのご主人に何かしたんじゃないの!?」
皇伽耶斗「サア、ミニオボエハアリマセン・・・」
〇デザイナーズマンション
こうして私は、イケメン探偵事務所で助手として働くことになった
〇ダイニング(食事なし)
如月春香「では、家出された娘さんの調査という事でよろしいですね?」
依頼人「はい・・・」
如月春香「少々お待ちください」
如月春香(もう、所長、どこ行ったのよ!)
如月春香(私にこのゴミの中から申込書を探せっていうの!?)
如月春香(いったい、どこにあるのよ・・・)
如月春香(もう、わからないから何かの紙に書いてもらえばいいか)
如月春香(ん?)
如月春香「嘘! 何これ!?」
「どうかしましたか?」
如月春香「あ、いえ、何でもありません」
如月春香「ちょっと申込書が見当たらないので、他の紙に記入してもらいますね」
〇公園の砂場
〇ダイニング(食事なし)
如月春香(何なのよ、これ・・・)
春香の目の前には、一千万円の札束が8つ並べられている
如月春香(少し探してこれだけ出てきたってことは)
如月春香(この中にはもっと隠されてるってこと!?)
僕のこの灰色の脳細胞に入ってますから
如月春香(まずい、元に戻さないと)
如月春香(どういう事? なんのお金なのよ、所長!!)
じわじわと、しみてくるんです。引き続き読みます。かわいい音の子楽しみです。ウォーって火が燃えてたところがツボ。あ、スマホの音量をmaxにしたまま、見始めたのでチャイムが鳴るシーンでかなり驚き、大笑いしてました。(何の報告?)
黒猫は縁起が悪かったり良かったり、そんな話は聞いたことあります。
縁起の良し悪しは置いておいて、普段の行動と違うと違和感を感じて気になったりますよね。
頼りなさそうな探偵事務所の所長さんが、野良猫探しの一見で、とても感受性に優れた人に印象を変えて、この物語の展開がすごく楽しみになってきました。なにか古畑任三郎を彷彿させますね。