噂のタイツマン

山本律磨

審査は踊る!(脚本)

噂のタイツマン

山本律磨

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〇住宅街の道
遠藤「はあ~今日も残業疲れたな~」
遠藤「うわー!なんだこのクラクションはー!」
遠藤「うわー!トラックがぶつかってきたー!」

〇飛空戦艦
エンドー・F・ファルシオン3世「気が付くと俺は、空中戦艦ファフニールのデッキの上で倒れていた」
エンドー・F・ファルシオン3世「どうやら俺は異世界ビフレストに転生したらしい」
エンドー・F・ファルシオン3世「ビフレスト。それはアース神族とロート神族が防虫剤と目薬を武器に、互いに覇権を争うアナザーワールドだ」
エンドー・F・ファルシオン3世「この鼻の穴とか無駄な体毛とかが全くない美しい肉体がアナザーの証だ」
エンドー・F・ファルシオン3世「俺はどうやらロート神族の第三皇子として今まさに大艦隊を率いて戦いを挑もうとしているらしい」
ヴァルキュリア・V・マインゴーシュ「皇子!何をぼんやりなさっているのです!」
エンドー・F・ファルシオン3世「フッ・・・すまない。どうやら俺は青い空に酔ってしまったようだ」
エンドー・F・ファルシオン3世(彼女はヴァルキュリア・V・マインゴーシュ。俺の副官、というか口うるさいお目付け役みたいなものだ)
フレア・S・クレイモア「ヘヘッ!そんなこと言うてほんまはただの船酔いやろ?」
エンドー・F・ファルシオン3世「バレたか・・・」
エンドー・F・ファルシオン3世(こいつはフレア・S・クレイモア。ギュンター平原の戦で助けた妖精族の姫。安易な関西弁でキャラ付けされているのが珠に傷だ)
ヴァルキュリア・V・マインゴーシュ「皇子に対していささか無礼が過ぎますわよ」
フレア・S・クレイモア「ふん!なんやねん偉そうに!エンドーが怒ってへんのやからそれでええやん!」
フレア・S・クレイモア「そやろ?エンドー」
ヴァルキュリア・V・マインゴーシュ「皇子、いえ許嫁としてこの際はっきり言わせてもらいますわ」
エンドー・F・ファルシオン3世「な、なんだ?」
ヴァルキュリア・V・マインゴーシュ「誰にでも優しすぎるというのは、私にとってはつらい事なのですよ。エンドー」
フレア・S・クレイモア「頭の固い女やな。そろそろウチに乗り換えんか?エンドー」
ヴァルキュリア・V・マインゴーシュ「エンドーは誰にも渡しませんわエンドー」
フレア・S・クレイモア「エンドーはウチのもんやエンドー!」
ヴァルキュリア・V・マインゴーシュ「エンドー!」
フレア・S・クレイモア「エンドー!」
不敗郎「あの?もうそろそろ寝言はやめてもらっていいですかね?」
エンドー・F・ファルシオン3世「フッ、どうやら異世界転生モノで読者を掴もうとする作戦は失敗らしい」
遠藤「フッ、そしてどうやら俺は仕事中らしい」
不敗郎「どうやらじゃなくてはっきりと仕事中です」
エンドー・F・ファルシオン3世「フッ、ならば仕事に戻ろうかウラベ・B・マッケンロー」
不敗郎「なんかよく分かんないけどせめてAにして下さい」

〇役所のオフィス
不敗郎「はあ・・・そんなに集まらなかったですね。ゆるキャラデザイン」
遠藤「まあよかったじゃねえか。余計な仕事も増えなくて」
不敗郎「10通って・・・審査より審査会場に行く時間の方が長いんじゃないですか?」
遠藤「まあ応募が沢山来たら来たで面倒臭いけど、来なきゃ来ないでテンション下がるよな」
不敗郎「あー」
不敗郎「つまんねー企画」
遠藤「つまんねー仕事」
不敗郎「つまんねー田舎」
遠藤「つまんねー人生」
遠藤「誰がつまんねー人生やねーん!」
遠藤「違うか。わはははは」
不敗郎「そういう所ですよ・・・好き嫌い分かれるの」

〇教室
榊「この届いてるようで届いてない感じ」
榊「吉良先生、スランプって噂だったけどいよいよ復活ですな~」
折口「ふん。貴様、まだ紙媒体に拘っておるのか?」
榊「貴様って言うな」
榊「紙媒体こそがコミックの真の力を最大限味わえるツールなんです」
折口「そうやって時代に取り残される。全く愚かな事よ」
折口「そう思わぬか?絵師よ」
直「黙れオタクども」
榊「ぐはあっ!」
折口「おのれ!」
折口「ところで何を描いておる?」
直「こ、こら!見るでない!」
折口「さては秘匿されし計画書なのか?」
折口「宜しい。ならば奪取せよ」
榊「御意!」
直「や、やめぬか!これが下界に流出すれば我は!我は!」
イケてる女子1「くすくす・・・」
イケてる女子1「やめぬか~。見るでない見るでな~い」
イケてる女子2「奪取せよ。奪取せよ。くすくす・・・」
折口「・・・」
榊「・・・」
直「見る?」
折口「いや、後でいい」

〇綺麗なコンサートホール
  一ヶ月後。西國市市民館
不敗郎「ええとですね。多分首輪外れちゃってるんでしょうけど、それがミーちゃんです」
不敗郎「ほら、あるでしょ。背中にハートマークの黒ぶち」
不敗郎「え?ハートですよそれ」
不敗郎「は?人の顔に見える?怖いな」
不敗郎「とにかくそれがご隠居の猫です。無事届けてあげて下さいね」
不敗郎「なんなら俺と変わりましょうか?遠藤さんがこっちに出てくれて」
不敗郎「・・・切れた」
不敗郎「Shit!」
  と、一台の軽トラが通りかかる。
  不敗郎の傍に止まった軽トラから顔を覗かせる一人の小男。
大倉「ようマック。珍しいな」
不敗郎「あー、どーも。社長」
大倉「今は町議だ」
不敗郎「だったら軽トラ乗り回しちゃダメですよ」
大倉「わかってねえな。むしろ、こういう一面が俺の武器なんだよ」
大倉「有権者は誰のどこを見てるかわかんねえからな。高級車乗り回すような危機意識のねえヤツに田舎の政治は務まらねえさ」
不敗郎「ははっ、そういうもんですか」
大倉「ところでお前、あの親父さんとは連絡取ってるのか?」
不敗郎「・・・」
大倉「悪い悪い、あのは失言だった」
不敗郎「どうでもいいです」
不敗郎「今日はイベントの企画で町長に呼ばれたんです」
大倉「イベントねえ・・・」
不敗郎「ゆるキャラデザインコンテストの審査会ってやつで」
大倉「マック。お前も一応、市の職員だろ」
不敗郎「え?あ、はあ・・・」
大倉「ボンボン町長の相手してる暇あったら介護施設の草むしりでもやってやれ。それが公僕ってもんだ」
不敗郎「はあ。まあそのための出張所なんで・・・」
大倉「声が小さい!」
大倉「はっきり自分の意見を言うのがお前ん所のお国柄じゃねえのか?」
不敗郎「・・・」
不敗郎「俺はこの町の・・・この国の人間ですよ」
不敗郎「親父とは違います」
大倉「そうか。だったら次の町長選挙は誰に入れるか分かってるよな」
大倉「この町の人間で、この町のことを本当に考えてるんならよ」
不敗郎「ゲホっ!ゲホっ!」
不敗郎「普通の車乗れよ・・・」

〇役場の会議室
審査員1「私はやっぱり12番がいいですね。分かりやすくて」
審査員2「6番も捨てがたいですわ」
審査員1「卜部さんはどれが宜しいですか?」
不敗郎「え?」
不敗郎(1ミリも考えてなかった)
審査員2「一般の方の視点も重要ですわよ」
不敗郎「はあ、じゃあこれなんかどうですかね」
審査員1「はっはっは」
審査員2「おっほっほ」
審査員1「ではそろそろ町長のご意見もお伺いしたいですな」
不敗郎(ガン無視するなら聞くなよ)
若竹町長「私も12番がいいと思うな。かわいらしくて」
審査員1「では12番で決めましょうか?」
若竹町長「うんうん。誰の作品だね?学生さんかな?」
不敗郎「42歳男性。アルバイトの方の作品です」
若竹町長「・・・あ、そうなんだ。42歳、男・・・」
若竹町長「でもまあ、よく見たらありきたりのデザインだよね。パンチが無い」
若竹町長「先生はどうですかな?特別審査員として他にこれという意見はおありですか?」
審査員3「まあこの町の方々の意見を最優先したかったので控えていましたが」
審査員3「僕はもう一択ですね。最初から決めていました。レベルが違う」
不敗郎「・・・え?」
不敗郎「落書き?」
若竹町長「そうそれ!私も気になっていたんですよ!」
審査員3「感性が自由なんですよね。素人ならではの計算のない拙さが逆にいい」
審査員2「言われてみれば確かに。媚びるところが全くありませんわ」
審査員1「うむ。賞レースなど全く意に介していない純真さがよく表れています」
審査員3「是非ここからアートの世界に羽ばたいてほしい未来の逸材と言わざるを得ない」
若竹町長「純真だ!まさに子供の心だ!誰の作品だ?」
不敗郎「58歳女性。イラストスクール講師です」
審査員3「・・・」
若竹町長「・・・」
若竹町長「え~と。子供の作品は来てないのかな?」
不敗郎「はい。主に中高年の方ばかりです」
若竹町長「それだと表彰式の見栄えがねえ・・・」
不敗郎「み、見栄え?」
若竹町長「な、何でもない」
若竹町長「じゃあ今回は該当者なしということで」
不敗郎「あ!ありましたよ。14歳、中学二年生の作品が」
若竹町長「決定!その子で!」
不敗郎「せめて作品見ましょうよ」
若竹町長「・・・」
不敗郎「黒雲の鬼皇子ジーク・デーモン」
不敗郎「・・・」
不敗郎「よ、よろしいですか?」
審査員1「私はその、古い人間ですのでこういうのは。他の方のご意見を・・・」
審査員2「ええまあ、その・・・町興しっぽくないと一概に決めつけるのもよくありませんし。どうですか先生」
審査員3「まあ。町民代表の皆さんが宜しければ私は・・・」
不敗郎「で、では!裏山町町おこしシンボルキャラクターデザインコンテスト優勝者は・・・」
若竹町長「『原案』ね!あくまでも『原案』ということでね!」
若竹町長「いいかな。企画担当の卜部君」
不敗郎「た、担当?」
若竹町長「このキャラクターを生かすも殺すも君次第だよ!しっかりやってくれたまえ!」
若竹町長「で、ではまた表彰式で」
不敗郎「・・・じゃ、じゃあ。鬼・・・」
不敗郎「ええと・・・くろくも?こくうん?、まあいいや。鬼皇子ジークデーモンが優勝で。皆さん本日はありがとうございました」
不敗郎(面倒くさそうなのが選ばれちゃったな・・・)

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