ちゃんと選んで、閻魔ちゃん!

安芸沙織理

第2話 閻魔ちゃんの初陣だ!(脚本)

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安芸沙織理

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〇裁きの門
  突然、閻魔大王に(無理やり)任命されてしまった私は、さっそく死者の魂を地獄行きか天国行きかを判断することになってしまった・・・。
罪人の声「うおお! 放せー!」
園真帆「あの・・・今回裁きを受けるのはどんな魂さんなんですか?」
仏様「ええと、確か今世紀最大の極悪人だっけ?」
園真帆「い、いきなりそんな人を裁くなんて無理ですよ!」
餓鬼「仏様、脅かすのはやめてあげてください。今回の魂はただの結婚詐欺師ですよ」
園真帆「あ・・・そうなんですね。良かった・・・」
仏様「あはは、ごめんごめん。ちょっと景気づけに言ってみただけよ」
園真帆「いやでも、それでもやっぱり私には裁くのなんて無理なような・・・」
仏様「じゃあ、地獄行く?」
園真帆「ええ!?」
仏様「地獄行くのと、閻魔になるの、どっちがいい?」
園真帆「そんな・・・生きてるうちは何の罪も犯してないのに、地獄行きなんて・・・」
園真帆「ていうか、今さら服のサイズが気になるし、Mにしとけば・・・」
餓鬼「ということで、そろそろ裁きの時間といきましょう」
仏様「よーし、じゃあ、いつものアレ、いっちゃうわよ!」
園真帆「え? え? なんですか、それ?」
仏様「さあ、みなさんお集まりください!」
「裁きングタイム、スタート!」

〇裁きの門
  二人が掛け声をあげた直後、どこからかオーディエンスが湧いてきた上に、舞台も出現し、私は大きな椅子に座らされた。
園真帆「な、なんですかこれ!? まるでショーみたいじゃないですか!」
餓鬼「『みたい』っていうか、ショーそのものですよ」
仏様「こういうこともやって見物料でも取らないと、みんなの給料が払えないのよ」
餓鬼「天界の財政は火の車ですからね」
餓鬼「あ、地獄で鬼が乗ってるやつとは違いますよ」
園真帆「こ、こんな環境で裁くなんて絶対無理ですよ・・・」
仏様「今さらそんなこと言っても遅いわ。もう、罪人の魂も着席させちゃったし」
園真帆「ええ!?」
  そう言われて、目を向けると不服そうに座るチャラチャラした服装の男の人がいた。
仏様「まー、今回は裁くのが簡単な罪だし、パパっと終わらせていいわよ」
餓鬼「では、罪人のプロフィールと罪状を読み上げていきますね」
餓鬼「名前『鷺野済斗(さぎのすみと)』、35歳、罪状は結婚詐欺、騙した女性は10人以上です」
餓鬼「鷺野は、同時に複数の女性と交際した上に、結婚資金で必要だと言って何百万円も奪い取りました」
園真帆「それは・・・ひどいですね」
仏様「女の敵ってやつね」
餓鬼「とりあえず過去の判例を見てもこのケースは地獄送りで問題ないかと」
餓鬼「迷う要素は一切なしです。最初の裁きがこれでラッキーですね」
園真帆「え・・・そうなんですか。じゃあ、地獄行きで──」
鷺野「待ってくれ! 俺の話も聞かないで判断するなんて、あまりにも横暴だ!」
園真帆「え? そ、そうですかね?」
園真帆「ど、どうしたらいいですか!?」
仏様「まあ、確かにこんな短時間で決めたらオーディエンスも納得しないでしょうし、話くらいは聞いてあげたら?」
園真帆「じゃあ、鷺野さん、言いたいことがあるならどうぞ」
鷺野「おお、ありがたい。嬢ちゃんは可愛いだけじゃなくて、優しいんだな」
園真帆「え、えへへ・・・可愛いだなんて・・・」
園真帆「こんな風に褒めてくれるなんて、良い人かもしれません。天国行きに──」
仏様「ちょっと、こいつは詐欺師よ、言うことを真に受けるんじゃないわよ」
鷺野「だから、詐欺なんてしてないって!」
園真帆「そ、そうでしたね。 やっぱり、天国行き──」
仏様「ええい! だから、すぐ騙されるなって!」
鷺野「そっちのセクシーなお姉さんも、そんなに眉間に皴ばっか寄せてたら美人が台無しだぜ?」
仏様「閻魔ちゃん、こいつ、別に言いたいことはないみたいだから、地獄送りにしていいわ」
鷺野「すいません、話させてください」
餓鬼「聞くだけ無駄だと思うけどなあ・・・」
鷺野「いいかい? 俺は彼女たちのことを真剣に愛していた」
鷺野「結婚資金がいるのだって本当のことだったしさ」
園真帆「でも・・・同時に複数の女性と付き合ってたんですよね?」
園真帆「全員とは結婚できないと思うんですけど・・・」
鷺野「・・・いざとなったら、多重婚ができる国に住めばいいだけさ!」
園真帆「そんなの、女性たちが納得しないですよ!」
鷺野「お嬢ちゃん、本当の恋を知らないね?」
園真帆「え?」
鷺野「例えば・・・そうだな、美しく破滅的な恋と、幸福だが平凡な恋、君はどっちがいいと思う?」
園真帆「え・・・急にそんなこと言われても、私は恋愛経験も少ないし・・・」
園真帆「強いて言うなら平凡な恋・・・?」
園真帆「でも破滅的な恋っていうのも気になる──」
鷺野「そもそも、彼女たちだって自分が騙されたなんて思ってないと思うよ」
餓鬼「ここに被害者の意見をまとめた書類があります。参考までにどうぞ」
園真帆「・・・みんな一緒にいれて幸せだったって言ってますね・・・」
仏様「そんなの、恋は盲目ってやつでしょ」

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