ごめん、もう無理

黒野みゆう

夏祭り(脚本)

ごめん、もう無理

黒野みゆう

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〇神社の出店
  はぁ、流石に人が多いなぁ
  今日は夏祭り。
  恋人である先輩と、鳥居の前で待ち合わせをしているのだが
  ・・・
  こういうことは、よくあった。
  あぅっ、アオイー!
  遠くから名前を呼ばれ、声のする方へと目をやる。
コウ「はぁっ、はぁ・・・!」
コウ「おっ、お待たせ!」
コウ「遅れちゃってごめんねぇ」
  目の前には、汗だくの先輩が立っていた。
  別に良いですけど・・・コウ先輩、大丈夫ですか?
コウ「うん!」
コウ「へへ、アオイは優しいね」
  コウ先輩は二つ年上、つまり高三なのだが
  この見た目とは裏腹に、抜けている部分がかなり多い。
  しかも押しに弱いのだ。
  また逆ナンされたんですか
コウ「そうそう」
コウ「あっ、ちゃんと断ったから!」
  へにゃりと笑う顔は少し頼りないけれど、それでも好きだなって思える。
コウ「ってアオイ、浴衣なんだね」
  はい
  ドキリと胸が跳ねた。
  先輩の好きな、紫色の帯にしてみました
  じっと先輩を見つめる。
  これは喜んでもらえたのでは?
  しかし
コウ「えっと・・・」
コウ「良いと思うよ。綺麗な色だね」
  なぜか目が合わなかった。
コウ「じゃあ、そろそろ行こっか」
  それだけ?
  その言葉は胸にしまっておいた。

〇射的コーナー
  パンッ!
  射的の音が雑踏に紛れて消えていく。
コウ「アオイ、たこ焼き買ってきたよ~」
  ・・・ありがとうございます
  温かい。
  先輩は凄く優しい。
  でも時々、考えてしまうのだ。
  先輩は本当は、この関係に興味なんかないんじゃないかって。
  後輩だから仕方なくとか?
  最近は特に、距離を置かれている気がすることが多い。
  いただきます
  今だって、こういうのは一緒に行きたかったのに
コウ「アオイって、口小さいね」
  へっ
  そうれふかね?
コウ「・・・」
コウ「美味しい?」
  はい!
コウ「たこ焼き、好き?」
  はい!
  でも今はデート。
  不安がバレないように精一杯の笑顔を作る。
コウ「・・・」
  コウ先輩?
コウ「あ、いや、なんでもない」
コウ「もう全部食べて良いよ」
  え?
  まさか、がめつかった?
コウ「食べ終わったら、さっさと回っちゃおう」
  さっきよりも更に距離がある
  気がする。
  いったいなにを間違えたんだろ・・・

〇お祭り会場
  ・・・
コウ「・・・」
  人混みの中、先輩との会話はほぼ無いと言って良い状態になっていた。
  しかもさっきの謎の質問以来、コウ先輩の感情が更に読めない。

〇お祭り会場
コウ「アオイ、どうしたの?」
  いえ、好きなアニメキャラの飴細工があって
コウ「へぇ」
コウ「アオイって、眼鏡の人が好きなの?」
  えっ?
  まぁ、カッコ良いなとは思いますけど
コウ「そっか」

〇お祭り会場
  先輩、怒ってた?
  いやどの流れで。どう考えても怒られる理由が見当たらない。
  一緒にいて楽しくないなら、無理しなくても良いのに
  いっそもうこのまま帰ってしまおうか
  そんなことを考えていると
コウ「さっきより混んできたな・・・」
コウ「アオイ、手繋ごう」
コウ「向こうに静かなところがあるからさ、それまで俺から離れないようにね」
  握られた手に力が込められる。
  こういうところが、先輩はずるいんだ。

〇山の中
  辿り着いた場所は、屋台の並んでいた神社の側にある山。
  木々に包まれたここは、さっきまでの雑踏や騒音からも完全に隔離されていて
  まるで、二人だけの世界にいるようだった。
  でも、先輩は・・・
  一緒になんて、いたくないんだろうな
  考えて、息が苦しくなる。
コウ「喉渇いたよね、俺なにか買ってくるよ」
  くるりと背を向けるコウ先輩に、なぜだか急に不安が込み上げてきた。
コウ「へっ」
  気付けば、先輩の服を掴んでいて。
  やだ
  行かないで、下さい
コウ「・・・」
  困惑したような先輩の顔にハッと我に返った。
  す、すみません
コウ「・・・」
  耐えきれなくなって目を伏せる。
  先輩の表情が見えない恐怖と、自分の子供のような言動に涙が零れそうになった。
  あぁ、もう絶対、嫌われた
コウ「はぁ」
コウ「ごめん、もう無理」
  え

〇黒
  視界が真っ暗になる。
コウ「アオイ」
  頭の上から降ってきた声に、やっと先輩に抱き締められているのだと分かった。
  熱い。
  心臓の音が聞こえる。
コウ「アオイ、大好きだ」
コウ「俺、アオイのこと好きすぎて、おかしくなりそう」
  遠くで花火の音がした。

〇花火
  そのまま頭を引き寄せられ

〇黒
  ・・・!

〇花火
  少し強引に唇が触れ合った。
  顔が離れると、ギラギラと男の人の眼をしたコウ先輩が視界に入る。
  せん、ぱい?
コウ「っ!」
  慌てたようにコウ先輩が身体を離した。
コウ「ごっ、ごめんね! ビックリしたよね⁈」
コウ「ホント、ごめん」
コウ「ずっと、我慢しなきゃって。分かってたんだけど・・・無理だった」
  な、なんで
  先輩、嫌いになったんじゃ・・・
コウ「えっ、なんで?」
コウ「俺は、アオイのこと大好きだよ」
  優しい先輩の眼差しに、それが本心なのだと伝わってくる。
  でも、だって、先輩に避けられて
コウ「う、うそ。いつ?」
  最近ずっとそんな感じだし、今日会ったときだって
  ・・・浴衣、先輩に喜んでもらえるかもとか、思ってたんです
コウ「はぁぁぁ」
コウ「そういう、ところ」
  へっ?
コウ「いや、こっちの話」
コウ「でも、うん」
コウ「そっか、俺のせいで・・・」
コウ「不安にさせてごめん」
コウ「それと浴衣、凄い似合ってる」
コウ「ありがとう」
  耳まで赤くする先輩に、こっちまで恥ずかしくなってくる。
  じゃあ、嫌われたんじゃなかったんだ
コウ「当たり前」
コウ「むしろ、色々ヤバいっていうか」
  ・・・ど、どういう
コウ「んーん」
コウ「ははっ」
  また優しく抱き締められる。
  安心する
  コウ先輩
コウ「ん?」
  次は、先輩の浴衣姿も見せて下さいね
コウ「来年も、一緒に来てくれるの?」
  当たり前、です!
コウ「あー、もう」
  そっと唇が触れ合った。
コウ「アオイ」
コウ「大好きだよ」

コメント

  • 登場人物の性別を読者の考えや好みに委ねるという設定に唸りました。私としては、アオイが男子の方がハラハラ感が増していいな、コウ先輩のちょっと素っ気ない振る舞いにも説得力が出るな、ラストシーンの衝撃度も高まるなあ、などと一人で勝手に盛り上がって読ませていただきました。

  • キャー!ロマンチック!
    すみません、途中まで「コウ先輩、目が悪いのかな?」って思っていました笑 アオイさんが先輩を好きすぎて不安なのと同じくらい、先輩からの愛もあふれているのがいいです。アオイさん、男の子でも女の子でも可愛いですね!

  • 付き合っているからこその、アオイの不安な心情がとても伝わってきました。
    読んでいるこちらからすれば「ちゃうちゃう、あんたのこと、好きやからやで!」って突っ込みたくなってしまうのですが(笑)お互い距離感に悩んでいたなんてとても可愛らしい!
    きっと二人は今回の夏祭りを通してぐっと距離が縮まったのでしょうね!お幸せに✨

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