第17話 『3頭の犬』(脚本)
〇学校の屋上
班馬宙斗「真城さん・・・、何で・・・」
ナイトウルフの右腕に貫かれた阿吉良を前に、宙斗はただ呆然と立ち尽くしていた。
ナイトウルフ「・・・これが、君が手伝いたいと言った俺の戦いだよ」
ナイトウルフ「正義のヒーローなんて格好いいもんじゃない。主義主張の異なる者同士の、単なる殺し合いだ」
班馬宙斗「でも・・・阿吉良は、自分で望んで戦ってたわけじゃなくて・・・」
班馬宙斗「先生を連れていかないと殺されるから、従ってただけで・・・」
班馬宙斗「なのに、何で!?」
真城は阿吉良の体を抱えたまま、黙って宙斗に背を向けた。
ナイトウルフ「行くぞ、京獄・・・」
為定京二「ああ・・・」
班馬宙斗「待てよ! 阿吉良を置いていけ!」
ナイトウルフ「置いていって、どうする? 君に処理できるのか?」
班馬宙斗「うるさい! 阿吉良を放せ!!」
宙斗は全力で真城にぶつかっていった。
だが、真城の体はまるで地面と一体化したかのようにピクリとも揺らがなかった。
ナイトウルフ「いい、タックルだ。けど・・・」
真城は、空いている左腕をそのまま、自分の腰に組みつく宙斗の首筋に叩きつけた。
班馬宙斗「っ・・・!」
ナイトウルフ「怒りや憎しみで戦うなら、君も奴らと同類だ。俺は容赦しない」
班馬宙斗(意識が・・・薄れていく・・・)
為定京二「・・・すまなかった」
〇教室
翌週の月曜の朝、為定が退職したこと、そして、阿吉良の転校が伝えられた。
阿吉良の転校は以前から決まっていたのだと担任の教師は言っていた。
班馬宙斗(最初から、阿吉良は『ZOD』に使い捨てられる予定だったんだ・・・)
〇二階建てアパート
放課後、宙斗は真城と為定のアパートを訪れていた。
探偵部には顔を出さなかった。
彼らに阿吉良の死をどう伝えればいいか、わからなかった。
班馬宙斗(2人に会わなきゃいけない気がする・・・でも、会って、何を話せばいいんだろう・・・)
インターホンに伸ばした手が止まった。
宙斗は混乱していた。
自分を助けてくれた人懐っこい笑顔の真城と、躊躇もせずに阿吉良の腹を貫いた真城。
合宿で特訓に付き合ってくれたダメ教師の為定と、宙斗を改造した鳥マスクの科学者、京獄。
どちらが本当の顔で、どちらが偽りなのか。
班馬宙斗(どうして、真城さんは阿吉良を殺したんですか?)
班馬宙斗(他にもっといい方法があったんじゃないんですか?)
班馬宙斗(ダメだ・・・)
班馬宙斗(今会っても、ただ感情的になって終わる気がする)
班馬宙斗(それじゃ、意味がない。感情をぶつけるだけじゃ、駄々をこねる子供と同じだ)
班馬宙斗(日を改めよう。まずは、冷静に2人と話せるようにならなきゃ・・・)
そう思って、帰ろうとした瞬間、いきなり背後から男の声が聞こえた。
???「2人なら、いねぇぞ。 どうもバックレたみたいだな」
班馬宙斗(誰だ? いつの間に、後ろに・・・!)
???「おっと、動くなよ」
男は隠していた殺気を開放した。
班馬宙斗(動いたら、殺される・・・!)
頭の中に、腹を貫かれた阿吉良の姿が浮かんだ。
宙斗は、後ろを振り返ることすらできなかった。
???「お前ら、探偵部っていうんだってな。 阿吉良に聞いたぞ」
班馬宙斗「阿吉良に・・・? 『ZOD』・・・か」
???「一緒に来い。お前には、2人をおびき出す餌になってもらう」
班馬宙斗「誰が、そんな・・・!」
???「動くんじゃねぇと言ったろ? お前が来ねぇなら、他の部員でもいいんだぞ」
そう言われて、宙斗は観念するしかなかった。
班馬宙斗「・・・わかった。従うよ」
???「いい子だ。出来損ないの子犬ちゃん」
〇廃ビルのフロア
???「よく来たな、真城騎刃。京獄博士」
班馬宙斗「真城さん! 先生! ごめん・・・!」
為定京二「心配するな、班馬。今、助けてやるからな」
ナイトウルフ「ハウンド・・・」
ナイトウルフ「お前は他の獣神達と違って、俺だけを狙ってたから、これまで適当にあしらってたんだが──」
ナイトウルフ「やはり、殺しておくべきだったな」
犬獣神ハウンド「そんな口、きいていいのかよ?」
ハウンドは巨大な口を開き、宙斗の首筋に噛み付いた。
為定京二「班馬!」
犬獣神ハウンド「安心しろ、甘噛みだ、甘噛み。 殺しちまったら、人質の意味がねぇだろ?」
犬獣神ハウンド「それに、俺はこいつに親近感を抱いてんだ。お前ら2人の被害者として、な」
そう言うとハウンドは、宙斗の頭を強く撫で回した。
犬獣神ハウンド「真城騎刃と間違われて改造されたんだろ? しかも、そこの京獄が出来損ないのまま放り出した」
犬獣神ハウンド「オレも似たようなモンだ。逃げ出した真城の代わりに、犬獣神として改造された」
班馬宙斗「犬・・・?」
犬獣神ハウンド「ああ。ナイトウルフとか名乗ってやがるが、こいつは十二獣神の犬獣神として改造されたんだ」
ナイトウルフ「なんと名乗ろうが俺の勝手だ」
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