破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

第十七話 偶像崇拝(脚本)

破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

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〇劇場の座席
リングアナ「二回戦第2試合。なんとも形容しがたい対戦が実現しました!」

〇闘技場
リングアナ「象形拳の達人ウォン・シャオティエン選手と南米の部族カチャン選手が、闘技場の中央で相対しています」
  カチャンは、シャオティエンにむかって大口を開けて舌をベロンと出し──
  〝おまえを喰ってやる〟といわんばかりの挑発的なジェスチャーを披露している。

〇劇場の座席
「・・・・・・」
リングアナ「せ、凄惨な事態にならないことを祈るばかりです!」

〇闘技場
ミスター小林「両者とも、全力で闘うように」
リングアナ「カチャン選手、持ち前の野生動物のようなバネで、シャオティエン選手の周囲を跳ね回っています」
  例によって、シャオティエンの身に異変が起こり──
  ブルブルと身体を痙攣させ、目の色を不気味に変える。
リングアナ「おおっと、さっそく達人に何かが憑依したようです!」
  異変がおさまると、シャオティエンは拳をネコ科の獣の爪の型にして構える。
リングアナ「獰猛にして、しなやかな動き。これは──」
リングアナ「虎! 虎拳のようです!」
リングアナ「虎だけあって、シャオティエン選手、まっこう力攻めで襲いかかーる!!」
リングアナ「さすがのカチャン選手も、慎重に虎爪から距離を取って──」
リングアナ「いや、ちがうぞ!!」
リングアナ「カチャン選手、猛虎をものともせず、真正面からショルダータックル!!」
リングアナ「虎ティエン、まともにくらって吹っ飛ばされたーっ!!」
リングアナ「やはり対格差の壁は大きかったようです!!」
リングアナ「達人、起き上がれません!!」
カチャン「ラティンパッ!!」
リングアナ「おおーっと、カチャン選手が勝ち鬨をあげたーっ!!」
リングアナ「おっと達人、ここでまたも憑依のようです!」
リングアナ「しかし虎より強い動物が、この世にいるのでしょうか?」
  異変がおさまると、シャオティエンは平然と立ち上がり、また拳をネコ科の獣の爪の型にして構える。

〇劇場の座席
リングアナ「これは? また虎拳のように見えますが・・・」
  実相寺がリングアナにボソボソと耳打ちする。
リングアナ「実相寺総裁によりますと、あれは虎ではなく豹拳なのだそうです」
リングアナ「言われてみれば、虎爪よりも拳の握りが少しだけ小さいように見えます」

〇闘技場
リングアナ「しかし虎でも苦戦したものが、果たして豹で勝てるのでしょうか?」
カチャン「カッパコチョルルビ!!」
リングアナ「おや、どうしたのでしょうか?」
リングアナ「カチャン選手が激しく動揺しているように見えますが・・・」
  カチャンは、シャオティエンの前にひざまずき、額をマットにこすりつけてひれ伏す。
リングアナ「これはどうしたことだ!?」
リングアナ「カチャン選手、戦意を喪失したのでしょうか?」
ミスター小林「どうした、カチャン選手!?」
カチャン「チョルルビトッパトッパ」
セコンド「ゴニョゴニョ・・・」
  そこへセコンドが駆け寄ってきて、代わって審判に説明をする。
  カン!カン!カン!カン!カーン!!

〇劇場の座席
リングアナ「カチャン選手が棄権した模様です!」
リングアナ「ご説明します」
リングアナ「棄権した理由ですが、カチャン選手の部族では、豹を神と崇める伝統があるそうです」
「へぇへぇ!」
リングアナ「さらにカチャン選手本人の弁によりますと・・・」
リングアナ「〝豹様と闘うくらいなら、朝飯に自分の息子を・・・2、3人ぶつ切りの蒸し焼き料理にして食べたほうがまし〟だそうです!!」
木下「うぐっ!!」
リングアナ「それにしてもおそるべしは、達人シャオティエン選手!」
リングアナ「二戦続けて相手方の試合放棄となりましたが、けっしてラッキーによるものではありませんでした」
リングアナ「当意即妙に適任の獣を憑依させるという、唯一無二の名人技による勝利なのです!」
リングアナ「さて、続く二回戦第3試合は、草刈遼選手対大ダコ選手の一戦です」

〇黒
  つづく
  次回予告
  
  第十八話 死の抱擁
  
        乞うご期待!!

次のエピソード:第十八話 死の抱擁

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