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赤井景

第3話 「そして勇者は伝説に」(脚本)

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〇西洋の城
老賢者「嗚呼、勇者よ! 全人類の救世主よ!」
老賢者「その手の『光の剣』は空を裂き、 身にまといし『死せる英雄の霊鎧』は あらゆる害を退けん」
老賢者「神具とともにある勇者にもはや敵なし。 七日七晩の死闘の末、ついには忌まわしき魔王すらも討ち滅ぼした」
老賢者「民よ、永久に讃えよ! 伝説へと昇華した、勇者アイリを!」

〇異世界のオフィスフロア
アイリ「アキローくんのおかげで魔王を倒せたよ! ホントにありがとう!」
アキロー「いやぁ、アイリちゃんが頑張ったからだよ。僕は大したことしてないし」
アイリ「なに言ってるの。 アキローくんの武器がなかったら絶対ダメだったんだから」
アイリ「どれだけ感謝してもしきれないよ。 ねえ、私になにかできることない?」
アイリ「直接会ってお礼が言えればいいのに・・・」
  直接会えるなら、僕だって嬉しい。
  でもそれはできない相談だ。
  今の僕と彼女では、文字通り”住む世界が違う”。
アキロー「じゃあそうだなぁ・・・また電話してくれると嬉しいかな」
アイリ「・・・え?」
アキロー「ほ、ほら。 注文してくれると、僕の営業成績もあがるしさ」
  本当は、ただキミの声が聴きたいだけなんだけどね・・・とは言えない。
  そんなことを言えば気味悪がられるだけだ。彼女にとって前世での僕は、単なるクラスメイトだったはずだから。
アイリ「あ、そういうこと。うん、わかった」
アイリ「アキローくんのとこ使うといいよって、みんなにも言っとくね」
アイリ「じゃあまた。バイバイっ!」
アキロー「うん・・・またね」
銀次「いやぁ、上手くやりましたねぇ」
アキロー「あ、銀次さん。 今回の配達、ありがとうございました」
銀次「いえいえー、仕事なんで」
銀次「それより感心しましたよ」
銀次「まさかあのリアランドに『レーザーガン』やら『パワードスーツ』やらを持ち込むだなんて」
銀次「あの世界の神様、ファンタジーにこだわってたから、SFっぽい商品は絶対NGだと思ってたんスけど」
アキロー「元の商品そのままじゃダメだったと思うよ。だから・・・手を加えたんだ」
アキロー「神様の『お気持ち』に添えるようにね」
  リアランドの『神』のこだわりは、『ファンタジーっぽい』かどうかにあった。
  重要なのは『ぽい』の部分。
  ファンタジー世界に『ありそう』であれば、実際の技術が高度かどうかなどお構いなしだ。
アキロー「だったら、ファンタジーに『ありそう』な体裁を整えればいい」
  武器から光線が出るのは、『レーザーガン』ではなく、『光の剣』だから。
  『パワードスーツ』の装甲が固いのは『霊による加護』だし、自律して動くのも『英雄の魂がやどっている』おかげ。
  我ながら屁理屈みたいな理由付けだけど、そんなものでも、神様に「まあアリかな?」と思わせることはできたらしい。
銀次「それにしたって、よく思いつきましたよ。 うーん、さすが期待のルーキー」
アキロー「そんなことないよ。 結局、オモカネ室長のおかげだしね」
  オモカネ室長の『神様のお気持ち一つ』という言葉。
  それがなかったら、思いつきもしなかっただろう。
アキロー「たぶん室長は、こういう抜け道があるとわかったうえで、ヒントをくれたんだと思うよ」
銀次「いやあ、そうしたヒントを活かせるかどうかも才能ッスよ」
銀次「いよっ、商売上手!  オペレーターになるために生まれた男!」
アキロー「それ、喜んでいいのかなぁ・・・?」
  RRRRRRRRR
アキロー「あれ? またリアランドからだ。 アイリちゃんかな?」
アキロー「もしもし、アキローですが・・・」
爽やかな声「ああ、キミが噂のアキローくんだね? 僕はヒロ」
爽やかな声「前世では『王子比呂(おうじ ひろ)』って名前だったんだけど・・・」
アキロー「あ、知ってます! 3年の!」
  王子比呂。
  その名を聞いて、苦い思いが胸に広がる。
  王子先輩は前世ではサッカー部の3年生エースだった爽やかイケメンだ。僕のような凡人からしたら雲の上の、誰からも好かれる人気者。
  そして・・・アイリちゃんと付き合っているという噂もあった。
ヒロ「アイリから話を聞いてね。 僕も注文を頼みたいと思ってね」
  そういえば王子先輩も、あのバスに乗っていた。
  彼もアイリちゃんと同じリアランドに転生していたということか。
アキロー「それで、どんなものを?」
ヒロ「ウェディングドレスなんだけど、用意できるかな?」
アキロー「あ、はい。商品はあります。 どなたか結婚なさるんですか?」
ヒロ「ああ、そうなんだ。 ボクと・・・アイリがね」

〇休憩スペース
アキロー「はぁ・・・」
テンシエル「うわ、暗ぁ~い」
テンシエル「近くにいるだけで幸せが逃げそうなんだけどぉ~」
アキロー「ほっといてください」
  王子先輩によれば、彼はリアランドの王族に転生したのだそうだ。
  そしてこの度、ヒロ王子と勇者アイリの結婚が決まったらしい。
テンシエル「いいじゃない」

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コメント

  • YouTube動画見てます!!ますます面白くなってきてますね!!(o^^o)

  • 展開早い!(笑)

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