異世界お届けドットコム

赤井景

第2話 「お客様は勇者」(脚本)

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〇異世界のオフィスフロア
アキロー「──じゃあホントに穂ノ咲さんは、勇者に転生したんだ」
アイリ「アイリでいいよ。 こっちの世界じゃそう呼ばれてるし」
アキロー「じゃあ・・・アイリちゃんで」
アイリ「でもよかった、アキローくんも転生してて」
アイリ「あのバス事故に遭った人、他にも何人かこっちの世界に転生してるんだけど、アキローくんはいなかったでしょ?」
アイリ「だから心配してたの」
  アイリちゃんが、僕のことを心配してくれていたって?
  うわ、もうそれだけで天にも昇れそう・・・!
テンシエル「うぇー、新人くん、めっちゃ気持ち悪いニヤケ顔してる・・・っていうか、無駄話してないで仕事して?」
  そうだった。
  今の僕は、通販会社『まるちばドットコム』のオペレーター。
  アイリちゃんだって、この会社に用があるはずなのだ。
アキロー「うちに連絡してきたってことは、なにか欲しいものでもあるの?」
アイリ「あ、うん」
アイリ「私、『リアランド』っていうファンタジー世界で勇者やってるんだけど、今こっちは人類存亡の危機でね」
アキロー「え、大丈夫なの?」
アイリ「正直厳しい。 でも、魔王ユリエンスⅢ世ってやつを倒せばどうにかなるみたい」
アイリ「だから、魔王を倒せるような武器とかないかなーって」
アキロー「なるほど。 たしかに勇者には伝説の武器が付きものだよね」
アキロー「でも・・・」
  そんなもの、通販にあるのかなぁ?
オモカネ「あるよ」
アキロー「あるんすか!?  ってか、当然のように人の心を読んだぁ!?」
オモカネ「わざわざ読まなくても推測できるよ」
オモカネ「それよりアキローくん、ネット通販はやったことあるかい?」
アキロー「ええ、まあ、一応・・・」
オモカネ「じゃあ、大丈夫そうだね」
オモカネ「うちのカタログデータベース、だいたい通販サイトみたいな感じだから」
  オモカネ室長がデスクのパソコンを操作して、カタログソフトを立ち上げる。
  なるほど。確かに通販サイトっぽい。
  これならとくに説明がなくても扱えそうだ。
  とりあえず、カテゴリーを『武器』、フリーワードで『強力』を指定し、カタログを検索してみる。
アキロー「うわ、めちゃくちゃ多いな・・・って、電磁レールガンとかまであるぅ!?」
テンシエル「そりゃそうよ。 宇宙戦争やってるような異世界ともつながってるし」
  すごい。
  ファンタジー世界にSF兵器を持ち込むこともできるだなんて、まるっきりチートじゃないか。
アキロー「アイリちゃん、見つかったよ。 超強力な武器。これなら魔王だって一発さ」
アイリ「ホントに? やった、さすがアキローくん、やっぱり頼りになる~」
アキロー「へへへ・・・そ、そう?」
  ──と。
  このときの僕は調子に乗っていたのだけれど・・・。

〇異世界のオフィスフロア
アキロー「え? いきなりレールガンが消えたってぇ!?」
アイリ「うん。送ってもらったレールガンのおかげで、魔王軍四天王とかいうやつを1人は倒せたんだけど・・・」
アイリ「でも2人目と戦ってる最中に突然、手品みたいにパっと消えちゃったの」
アイリ「私・・・操作間違えちゃったのかな?」
アキロー「いや・・・そんな機能はないはずだけど・・・と、とにかくもう一度送ってみるよ」
アイリ「じゃあお願い。手間かけてごめんね」

〇異世界のオフィスフロア
アキロー「はぁ? リアランドに送れない?」
配達員「そうなんすよ。 受け取り拒否されちゃいまして」
  この人は銀次さん。
  まるちばドットコムと提携している「エルブントラック運輸」の配達員だ。
  彼がアイリちゃんのところに商品を配達してくれることになっていたのだけど・・・。
アキロー「受取拒否も何も、確かにアイリちゃんから注文を受けたんだよ?」
銀次「あー違うッス。 受け取り拒否したのは向こうの『世界』ッス」
アキロー「世界が受け取り拒否? でも、前はちゃんと届いたのに・・・」
オモカネ「アキローくん、ちょっといいかい?」
オモカネ「先程、リアランドの神さまからクレームが届いてね」
オモカネ「なんでも『うちの世界にそぐわないものを送るな』『同じことを繰り返すようなら取引を停止する』だそうだ」
銀次「ははぁ、なるほど。 向こうの神様が禁輸指定したってことッスか」
アキロー「え? 禁輸指定・・・?」
オモカネ「ああ。実のところ、異世界の品々は自由に流通できるわけではないんだ」
  オモカネ室長によれば、その世界を創造した神は、「世界に存在すべきもの」を規定する権限を持っているという。
  「自分の世界に相応しくない」と判断した品は世界から消滅させることができるし、「禁輸指定」することによって持ち込み自体を禁止できるそうだ。
銀次「リアランドの神様は『中世風ファンタジー』であることにこだわってるみたいッスからねー」
銀次「たしか、シャワーヘッドとかも禁輸くらってましたよ」
アキロー「そんな・・・」

〇異世界のオフィスフロア
アキロー「ごめん・・・力になれなくて」
アイリ「ううん、神様が決めたことなんだもの、仕方ないよ」
アキロー「でも・・・このままじゃ・・・」
  リアランドにおける魔王軍の攻勢は苛烈さを増しており、もはや人類滅亡も時間の問題だという。

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コメント

  • わー!18〜22は経験せずに23歳として転生だったのですね・・・おぉーその裏話聞けて良かったです!!!!!アキロー!!がんばれー!!って気持ちが増しました♡(o^^o)

  • 良き展開

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