改造途中人間チュート

栗山勝行

第16話 『阿吉良』(脚本)

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〇教室
班馬宙斗(阿吉良が『ZOD』の改造人間?)
班馬宙斗(きっと、たちの悪いいたずらだ。 そうに決まってる・・・)
  学園祭、探偵部の企画である『なんでも相談所』を訪れた謎の相談者の言葉に、宙斗は動揺していた。
班馬宙斗(ネット動画の一件から『ZOD』や改造人間という言葉は、都市伝説の様に広まってる)
班馬宙斗(そういう噂に便乗して、阿吉良を孤立させようとするヤツがいてもおかしくないはずだ)
班馬宙斗(阿吉良は、転校して早々に探偵部入りを許されたから、電奈先輩信者に恨みを買ってるんだろうな・・・)
班馬宙斗(──でも、それならなんで電奈先輩のブースに直接、いかないんだ?)
班馬宙斗(なんでよりにもよって、『ZOD』に改造された僕のブースに・・・?)
来明電奈「どうしたんだ、宙斗くん?」
  宙斗の様子がおかしいことに気づいた電奈がブースから出てきた。
班馬宙斗「阿吉良が帰ってきてないみたいなんで、ちょっと探してきます」
  そう言って宙斗は教室を離れた。

〇学校の廊下
班馬宙斗(先輩にとって最後の学園祭なんだ。 邪魔しちゃいけない・・・)
班馬宙斗(まずは阿吉良に会って、いたずらかどうか確かめよう)
  「甲斐阿吉良から逃げてください」という謎の相談者の忠告を無視して、宙斗は彼を探すために屋上へ向かった。

〇学校の屋上
為定京二「何の用だ? 私をこんな所に呼び出して。 今は学園祭の最中だぞ」
斐阿吉良「わかってるんでしょ、為定先生?」
斐阿吉良「それとも、本名で呼んだ方がいいですか?」
斐阿吉良「『ZOD』の科学者、京獄運命(きょうごくさだめ)」
為定京二「私を『ZOD』に連れ戻そうというのか・・・」
斐阿吉良「わかってるじゃないですか、先生」
斐阿吉良「ナイトウルフ、真城騎刃と共に出頭してください。今なら、罪には問わないそうです」
為定京二「お前の方こそ、『ZOD』を抜けたらどうだ? 甲斐阿吉良」
為定京二「お前は、随分前に私の正体に気づいていながら、接触してこようとはしなかった」
為定京二「心地よかったんだろう? この場所が。 あいつらと一緒にいる時間が」
斐阿吉良「黙れ。ボクにそんな自由は許されていない」
斐阿吉良「全てあなたのせいだ、先生・・・」
斐阿吉良「脳外科医であるあなたが『ZOD』を裏切ってから、改造人間は不安定になってしまった」
斐阿吉良「脳改造を施せなくなった『ZOD』が、ボク達、改造人間に何をしていると思います?」
為定京二「・・・自爆装置か」
斐阿吉良「ええ。『ZOD』を裏切れば、ボクは死にます」
斐阿吉良「どうせ、クソみたいな人生なんで、いつ終わってもいいと思ってました」
斐阿吉良「でも・・・」
為定京二「あいつらに出会ってしまった、か・・・」
斐阿吉良「・・・先生なら、生徒を守ってくれますよね?」
為定京二「悪いが、私はダメ教師と呼ばれている。 お前の意には沿えんな」
斐阿吉良「しょうがありません。 だったら、力尽くで・・・!」
班馬宙斗「やめてくれ、阿吉良!」
  宙斗が屋上の扉を開け、飛び込んできた。
山羊獣神「宙斗くん・・・。聞いてくれなかったんだね、ボクの忠告・・・」
班馬宙斗「「甲斐阿吉良から逃げろ」 ・・・あの相談者は、君だったのか」
山羊獣神「この姿を見られたくなかったからね」
斐阿吉良「・・・ボクはね、地獄から逃れるために悪魔と契約を交わしたんだ」
班馬宙斗「阿吉良・・・」
斐阿吉良「小学5年の時、母親の再婚相手の男から酷い虐待を受けるようになった」
斐阿吉良「ボクの体、高校生にしては小さいだろ? ずっと栄養失調だったんだよ」
斐阿吉良「体中の至る所に傷や火傷の痕がある。知らなかっただろ? 目立たない所を狙うんだ」
  宙斗は思わず歯を食いしばった。
  阿吉良がそんな苦しみを抱えてたなんて、何一つ気づけなかった。
斐阿吉良「母親、学校の先生、児童相談所、周りの大人に訴えても、誰も助けてくれなかった」
斐阿吉良「もう殺されると思った時、唯一、手を差し伸べてくれたのが『ZOD』だったんだ」
斐阿吉良「彼らはボクに、理不尽な暴力と戦えるこの体をくれた」
斐阿吉良「ボクは義理の父親を殺し、それからボクを見捨てた大人を一人、一人、殺した」
斐阿吉良「死体は全部、『ZOD』が処理してくれた」
斐阿吉良「ボクは、ようやく地獄から逃れることができたんだ」
  宙斗は、やり場のない怒りにただ拳を握りしめた。
  なんて言葉をかければいいのか、わからなかった。
斐阿吉良「その後も、組織の命令で殺し続けた。児童虐待を繰り返す大人達を始末していくんだ」
斐阿吉良「最初のうちはヒーロー気分だったよ。ボクと同じ境遇の子供達を救ってやれるからね」
斐阿吉良「でもね・・・どんどん心が麻痺していくんだ。気づいたら、別の地獄にどっぷり浸かってた」
斐阿吉良「結局、また別の大人達に利用されてたことに気づいたんだ」
斐阿吉良「大人って、ズルいよね・・・」
班馬宙斗「阿吉良・・・もうやめるんだ」
班馬宙斗「先生と真城さんなら、きっと何とかしてくれる!」

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