ゲームキャラでもエゴサしたい!

一ノ宮いすみ

第一話 世界の危機(脚本)

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一ノ宮いすみ

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〇闇の要塞
  ソーシャルゲーム『world of dead end』。
  物語の舞台は永遠の平和を約束されたはずの世界エデンシア。
  だが現在エデンシアは、突如現れた魔王オキアミスによって破滅の危機にさらされていた。
  そして今、魔王オキアミスは──

〇魔王城の部屋
魔王オキアミス「ううむ・・・ぐぬぅっ・・・なるほどやはり・・・致し方なし」
カルシム「オキアミス様ー! そろそろ次の戦の備えを・・・」
カルシム「おや? どうされましたか?」
魔王オキアミス「・・・世界が終わる」
カルシム「え? ・・・ええっ!」
カルシム「あの、どこへ? 何をしに参るのですか?」
魔王オキアミス「無論──世界を守るのだ!!」

〇SNSの画面
ユーザー1「世界死(※world of dead endの略称。公式の略称はWOD)?」
ユーザー1「最初はやってたけど、今はログインだけかな。それも時々忘れるけど・・・」
ユーザー2「音楽とストーリーはまあいいけど、戦闘バランス悪いし一部のキャラにヘイトたまってやめた」
ユーザー3「クソゲー」

〇魔王城の部屋
  SNS上での評価を読み終えたカルシムがスマホから目線を上げると、
  オルヴァン、アイヒールド、エリスの三名が、呆然とした表情で立っていた。
カルシム「えー、以上です。大まかですがユーザーの皆様による感想となります」
カルシム「次にお手持ちの資料の2ページ目を開いてください。問題点を箇条書きに・・・」
オルヴァン「待て! ちょっと待てっ!」
魔王オキアミス「どうした?」
オルヴァン「どうしたじゃねーよオレ達はテメーの敵だろうが! 魔王討伐軍だぞ!」
オルヴァン「なんでいきなり敵地にワープさせられたあげく強制的に会議に参加させられてんだよ! 頭混乱するわ!」
アルヒールド「話をまとめると、俺達のゲーム『WODセールスランキング向上計画』が主題らしいが・・・」
エリス「そういうのって、運営が考えるもんじゃないの?」
魔王オキアミス「ほう、さすがに己や世界がゲームありきの虚ろな存在であることは知っていたか」
魔王オキアミス「だが、ゲーム外については無知にも等しい」
アルヒールド「どういう意味だ?」
魔王オキアミス「紙束の20ページ目を開け。そこにあるグラフに答えがある」
エリス「ええと20・・・ん? 売り上げ?」
オルヴァン「・・・ちょっと待て。WODが売り上げ1億いったの1回だけかよ!」
エリス「なんかまずいの?」
オルヴァン「割に合ってねーんだよ」
オルヴァン「3Dフル活用、有名声優使いまくりのメインはフルボイス、バカスカ宣伝うってコミカライズの予定あり」
オルヴァン「この売り上げで持つかよ・・・」
カルシム「仰るとおりです。先月の売り上げなど、あわや6千万を切るところでして・・・」
オルヴァン「ヤベー・・・」
魔王オキアミス「このままでは我が手をくだすまでもなく世界は終わりを迎える」
アルヒールド「つまり?」
魔王オキアミス「サービス終了だ」
「えぇ~・・・!」
魔王オキアミス「早急にセールスランキング400位・・・いや、200位以内と安定させねばならぬということだ」
オルヴァン「売り上げ1億もねえのに200位以内ってそれこそ無理ゲーだろ・・・」
アルヒールド「・・・ひとつ聞くが」
アルヒールド「貴様の目的はこの世界、エデンシアを滅ぼすことだろう。なのに・・・」
アルヒールド「なぜ『セールスランキング向上計画』など、世界を救おうとするのだ?」
魔王オキアミス「世界を救うつもりは毛頭ない。だが我が滅ぼすまでに世界が消えては都合が悪いだけだ」
エリス「えぇ~意味わかんない・・・一生理解できないかも・・・」
オルヴァン「できたら戦争なんてしねーよ・・・」
魔王オキアミス「フン、いい気なものだな。貴様らこそ世界の破滅を招く災厄であることも知らずにな」
魔王オキアミス「先ほど貴様らに見せた映像を思い返してみよ」

〇SNSの画面
ユーザー2「音楽とストーリーはまあいいけど、戦闘バランス悪いし一部のキャラにヘイトたまってやめた」
  一部のキャラにヘイトたまってやめた

〇魔王城の部屋
「あっ」
魔王オキアミス「フン、気づいたか。カルシム、愚か者どもに罪を教えてやれ」
カルシム「それではゲームを辞めたユーザーの皆様からの意見を申し上げます」
カルシム「まずはアルヒールド様」
カルシム「『ステータスが微妙』『スキルも微妙』『攻撃力低い』」
カルシム「『なのにメインストーリーで何度も強制的にパーティー組ませられてダルい』」
カルシム「『せめてボス戦や相性が悪い敵のときの加入は避けてほしい』」
アルヒールド「む・・・そうだったのか・・・?」
カルシム「お次はエリス様」
カルシム「『過去行われた13回のイベントのうち、6回がさらわれたこいつ(エリス)助けるってナメてんのか』」
カルシム「『自己防衛できないならイベント中は外に出ないでほしい』」
カルシム「『もう預けた覚えのない魔族託児所から迎えにいくのは嫌』」
エリス「私、悪くないもん・・・シナリオライターのせいだもん・・・」
カルシム「最後はオルヴァン様『存在が不快』だそうです。以上になります」
魔王オキアミス「理解できたか。ならば四の五の言わずに我と世界を・・・」
オルヴァン「待てよっっっ!!」
オルヴァン「なあ、マジでそれしか理由がねえのかよ? なあ! なあ!」
アルヒールド「落ちつくんだ。理由がひとつしかないなら改善もたやすいだろう?」
オルヴァン「改善どころじゃねー! もう消滅を願われてるようなもんじゃねーか!」
魔王オキアミス「だが貴様らは物語のメインキャラ、これからもユーザーに関わる存在」
カルシム「つまりは、ここで皆様のイメージアップをはからねば、新規ユーザーはもちろん既存ユーザーの離脱も防げません」
魔王オキアミス「我と手を組め憎き敵よ! 貴様らに力を貸してやる。万人に愛される存在となり、世界を守るのだ」
オルヴァン「上等だ! やってやらぁ!」
エリス「ちょっとオルヴァン!?」
オルヴァン「オレは生きる! どんな手段を使ってもなぁ・・・! 消えてたまるか・・・!」
アルヒールド「オルヴァン殿、なんて悲しい瞳・・・」
アルヒールド「しかし、オルヴァン殿だけではなく、ここは俺もやらねばなるまい・・・あとで【主人公】殿に話を通しておくか」
エリス「あなたまでなに言ってんのよ!」
アルヒールド「むろん納得はしかねるが世界の危機を見逃すわけにもいかない。俺に原因があるのならなおさらだ」
魔王オキアミス「こちらとて一時的な協定だ」
エリス「えっと、私はやめておこうかな~・・・」
カルシム「エリス様、運営からいただきました少々フライングな情報ですが」
カルシム「第14回のイベントでは誰かがさらわれるという話が出ているようです・・・」
エリス「それまた私がさらわれる流れじゃん! SNSで叩かれる流れじゃん!」
カルシム「それで、どうします?」
エリス「・・・今のナシ。私も参加する」
魔王オキアミス「ではこれより計画を始める」
魔王オキアミス「我の手で、必ずや世界の崩壊に絶望を与えてやろう! フハハハ!」
  かくして魔王オキアミスによる『セールスランキング向上計画』は始まった。
  それぞれの思惑を胸に、物語が動き出す。
  だが、このとき、後の悲劇を想像できた者は誰ひとりいなかった──

次のエピソード:第二話 調査、行動、実況

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