@メンションマンション

藍川優

第三話 「災いをもたらす者」(脚本)

@メンションマンション

藍川優

今すぐ読む

@メンションマンション
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇マンションの共用廊下
  私は秋雄さんに連れられて、どんどんマンション内を移動していった。
  そして、辿り着いたのは、最上階の秋雄さんの部屋だった。

〇一人部屋
秋雄「はあ・・・はあ。クソ! なんだってこんなことに・・・」
夏菜子「ちょっと、春子にあんなことするなんて、酷いじゃないですか!」
秋雄「・・・ああするしかなかったんだ。 これも呪いのせいなんだ・・・」
夏菜子「あの・・・その『1309号室の呪い』っていうのは、いったいなんなんですか?」
秋雄「それは・・・」
  秋雄さんはためらう素振りを見せる。
  しかしやがて、重い口を開いていく。
秋雄「・・・例の1309号室っていうのは、今でこそ空き部屋だけど、前まではきちんと住民がいてね」
夏菜子「・・・前までは? ということは、何かあったんですか?」
秋雄「・・・人が亡くなったんだ。 原因は、自殺だった」
夏菜子「え!? いったいどうして・・・?」
秋雄「住民同士のトラブルが原因だったようだけど、詳しいことは・・・よく知らないんだ」
  そう言って秋雄さんは目を伏せた。
  ・・・よく知らないというのは本当だろうか?
  なんだか、何かを隠してる気がする。
  だが、その話を聞いて、正直、驚きを隠せなかった。
  まだ引っ越してきて日が浅いけれど、トラブルを起こしそうな住民はいないと思っていたからだ。
夏菜子「住民トラブルって、いったいどんなものだったんですか?」
秋雄「・・・ごめん、それもよく知らない」
秋雄「ただ、かなり質の悪いものだったとは聞いている」
夏菜子「つまり、その人が・・・霊か何かになって、今のおかしな状況が続いているということですか?」
  自分で言いながら、どうかしていると思った。
  でも、秋雄さんは大真面目にうなずいた。
秋雄「ああ、そうとしか考えられない。 それに──」
秋雄「1309号室の住人は、『リンクルネスト』の開発者だったんだ」
夏菜子「え!?」
秋雄「・・・それなら、変なメッセージが来ることについても納得できるだろ?」
秋雄「これは・・・呪いなんだよ・・・」
  秋雄さんはそう言って、ガタガタと身震いを始めた。
  だが、そんな霊的な現象なんて、本当にあるのだろうか?
夏菜子「・・・とりあえず、信じるかどうかは別にして、秋雄さんの言いたいことはわかりました」
秋雄「わかってくれて嬉しいよ。 外は危険だし、このままここで──」
夏菜子「でも、それならどうして、こんな状況なのに小春を置いてけぼりにしたんですか?」
夏菜子「狙われてるのは、最近引っ越してきた私かもしれませんが、小春にだって何があるかわからないんですよ?」
秋雄「・・・小春は、仕方ないんだ」
秋雄「彼女の側にいると悪いことが起きるかもしれない」
夏菜子「!? 幼なじみに対してそんなこと言うなんて、見損ないました──」
秋雄「小春は・・・自殺した1309号室の住人の娘なんだ!」
夏菜子「!」
秋雄「そんなやつ、信用しろっていう方が無理な話だろ?」
夏菜子「そ、それは・・・本当なんですか?」
秋雄「ああ、むしろ父親を失った小春の悲しみが怨霊を呼びよせているのかもしれない・・・」
夏菜子「・・・そんなこと、ありえませんよ」
秋雄「本当にそう言い切れるかい?」
秋雄「現に、夏菜子ちゃんだって不思議な体験をしてるはずだ」
  ・・・確かに、リンクルネストから不可解なメッセージを受け取った時、小春が必ず傍にいた。
  しかし、だからと言って、あの子のことを疑うわけにはいかない。
  ・・・ああ、でも・・・。
秋雄「俺はこのマンションの自治会長の息子として、ここを守る責任があるんだ」
秋雄「・・・本当は、小春を疑いたくなんてない」
秋雄「だけど、今は非常事態だっていうことをわかってくれないかな?」
  そう言う秋雄さんの表情は、なんだか酷く傷ついているようで、この人も無理をしているのだと思った。
  呪いというのはまだ信じられないけど、ひとまず秋雄さんの意見に従っておくべきかもしれないと思ったその時──
  ピロンッ!
  スマホが着信を知らせる。
  また、リンクルネストからの謎のメッセージかと思ったが、小春からのメッセ―ジだった。
  さっきまでの話もあり、なんだろうと疑いながら確認すると、そこには衝撃的な内容が書かれていた。

〇黒
  『これを見たらすぐ逃げて、秋雄は夏菜子を狙っている』

〇一人部屋
秋雄「・・・また、妙なメッセージでも来たのかい?」
夏菜子「いえ・・・そうじゃなくて・・・普通に友達からのメッセージでした」
秋雄「そうか・・・」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第四話 「1309号室」

成分キーワード

ページTOPへ