@メンションマンション

藍川優

第二話 「ルール」(脚本)

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〇マンションのエントランス
夏菜子「・・・お父さんっ! しっかりして、お父さん!」
  お父さんの頭からは血が流れ続けている。
  声をかけても返事はない。
小春「え、うそ・・・この人って夏菜子の・・・?」
  突然の出来事、非現実的な光景を見て、小春は口を手で押さえて息を呑んだ。
夏菜子「は、早く手当てしないと・・・っ」
  私は救急車を呼ぶため、スマホに手を伸ばした。
  しかし・・・。
  ピロンッ!
  1309号室から、またもやメンション付きのメッセージが送られてきた。

〇黒
  『@ALL ルールを犯したものを助けてはいけない』

〇マンションのエントランス
夏菜子(このメッセージはいったい・・・?)
  ただでさえ頭がぐちゃぐちゃの中での謎のメッセージ。
  私の思考が停止する。
  そんな折、騒ぎを聞きつけた管理人のおじさんが小走りでやってきた。
管理人「いったい、何の騒ぎ・・・うわあ!? こ、これは一体・・・」
秋雄「上から植木鉢が落ちてきたんです! すぐに救急車を呼んでください」
秋雄「あと、念のためAEDもあれば・・・」
管理人「わ、わかった!」
管理人「ええとAEDは・・・管理人室だ・・・。 急いで戻るよ!」
  そう言って、おじさんは管理人室に向かうため駐車場を横切った。
  その時だった。
  走る管理人のおじさんの元に、猛スピードで車が迫っていく。
夏菜子「危ない!」
  私の警告の声も虚しく、おじさんは車に撥ねられてしまった。
小春「え? え?」
夏菜子「か、管理人さんまで・・・! 誰かー! 来てください!!」
  ありったけの声を張り上げると、マンション上階のベランダから顔を出していた主婦が反応した。
主婦「どうしたの!?」
夏菜子「お、お父さんに植木鉢がぶつかって、それから、管理人さんが車に撥ねられて・・・」
主婦「た、大変じゃない! 早く・・・え?」
  主婦のおばさんの声がそこで途切れる。
  まるで何者かに後ろから押されたように、ベランダから身を乗り出して・・・。
主婦「きゃああああああッ!」
  主婦のおばさんはベランダから落下して、そのまま地面に叩きつけられた。
  あたりには真新しいどす黒い血溜まりが・・・。
夏菜子「ひっ・・・!」
夏菜子「なんなの、これ・・・!」
小春「とにかく、救急車を呼ばないと!」
秋雄「ダメだ! 呼ぶな!」
夏菜子「どうしてですか!?」
秋雄「これは1309号室の呪いなんだ! マンション内で解決するしかないんだ!」
夏菜子「な、何をふざけたことを言ってるんですか・・・?」
夏菜子「それより早く救急車を・・・」
  秋雄さんのことは無視して、救急車を呼ぼうとスマホを操作したのだが・・・。
秋雄「ダメだと言ってるだろう! 下手なことをすると、君まで殺されるぞ!」
  そう言う秋雄さんの目は完全に正気を失っており、私はその雰囲気に気おされて、スマホの操作を止めてしまった。
秋雄「そう・・・それでいいんだよ・・・」
夏菜子(秋雄さん・・・なんだか、怖い・・・。 私、どうしたら・・・)
  普段穏やかな秋雄さんの怒りの形相を見て、私は一層恐怖を覚えた。
  その不安からか、頼るべきもうひとりの家族を思い出す。
夏菜子(そ、そうだ・・・お母さんにお父さんのこと伝えないと・・・!)
秋雄「夏菜子ちゃん!?」
小春「ちょっと、待って! どこへ・・・」
  私は小春と秋雄さんの制止も聞かず、マンションの中に入っていった。

〇高級マンションのエントランス
  マンションの中に入ると、あちこちで人が争う声が聞こえてきた。
男性「うおお! 死ねえええ!」
女性「きゃ、きゃああ!?」
夏菜子(いったい何がどうなって・・・)
  マンション内の喧騒に戸惑っていると、向こうの部屋の扉が開いた。
  私は一瞬身構えたが、部屋から出てきたのは顔見知りのおじさんだった。
おじさん「・・・・・・」
夏菜子「あ、おじさん・・・」
おじさん「お前の・・・お前のせいで!」
夏菜子「え・・・? きゃあ!?」
  突然、おじさんが襲い掛かってきた。
  あまりのことに動揺しながらも、私はその場から逃げようとするが、おじさんは正気を失った目で追いかけてくる。
おじさん「待てぇえ! この・・・疫病神がぁ!」
  何がなんだかわからずに混乱したまま走り回っていると、不意に小春の声が聞こえてきた。
小春「──夏菜子、こっち!」
  そのまま小春に着いて行き、私たちは非常階段に身を潜めることにした。

〇マンションの非常階段
夏菜子「・・・いったい、何が起こってるの!?」
夏菜子「秋雄さんは呪いがどうとか言ってたけど・・・」
小春「えっと、呪いはよくわかんないけど、とりあえず『ネスト』での住民同士のやり取りからわかったことはあるよ」
夏菜子「な、なに・・・?」
小春「今、1309号室から住民たちに変な指令メッセージが届いていて・・・みんな、それに従ってるみたいなの」

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