MAD・AGE

山本律磨

武人(脚本)

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山本律磨

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〇砂漠の基地
  門の前にぼんやりと立っている狂介。
  無人の砦。鉄の扉はもう開かれたまま。
  狂介、背を向けて去ろうとする。
「狂介」
狂介「・・・」
  振り返る狂介、中へと入ってゆく。

〇城の回廊
狂介「・・・」
武人「・・・」
狂介「武人」
武人「まあ、座れ」
狂介「こんな寒い中でか?」
武人「仕方ないだろ」
狂介「全く」
武人「・・・」
狂介「・・・なあ」
武人「なんだ?」
狂介「夢まぼろしを追いかけていたのは、俺の方じゃった」
武人「で?これからどうする?」
狂介「長生きしたいの。お前と一緒に。ここで」
狂介「俺達の生まれ育ったこの地で・・・」
狂介「武人?」
  狂介の前、天を仰いで倒れたまま討ち捨てられている武人の亡骸。
狂介「・・・」
  狂介、武人の開かれた瞼を閉ざす。
  と、武人の懐から一枚の懐紙が覗いている。
  懐紙を手に取る狂介。
  血のついた懐紙に描かれた絵と名前。
  暴れ牛の絵の隣に『高杉晋作』
  坊主の絵の隣に『久坂玄端』
  木刀の絵の隣に『入江九一』
  そして、十字槍の絵の隣に『山県有朋』
狂介「ありとも・・・」
  『本当に・・・小さい男やのう』
  『そんなんじゃ、友達できんぞ』
  『俺がひとつ新しい名前を考えちゃるわ』
狂介「山県有朋・・・」
狂介「朋(とも)・・・」

〇モヤモヤ
「待ってくれ・・・」
コスケ「ワシが悪かったけ・・・」
狂介「全部・・・何もかもワシが悪かったけ」
狂介「待ってくれ・・・」
狂介「待ってくれ!」
狂介「待ってくれ!」
山縣公爵「待ってくれ!」
山縣公爵「太陽が沈む・・・」
山縣公爵「ワシらの夜明けが終わる・・・」
山縣公爵「待ってくれ・・・逝かんでくれ・・・」
山縣公爵「武人・・・」

〇黒
  親しきも疎きも友は先立ちて、ながらふる身そ悲しかりける
  『その者は自由民権の敵!』
  『軍閥の首魁!!』
  『維新英傑の尻馬に乗っただけの雑兵!』
  『民に生れながら民を弾圧し才無く徳無く金と権力を恣にする大俗物!!』
  『山縣有朋だ!』
武人「これはまた随分とえらい言われようだな」
山縣公爵「うるさい」
武人「でもまあ、よう生きた。よう狂った」
武人「で、気分はどうだ?」
山縣公爵「何も見えん」
山縣公爵「ここまで生きたのに何も見えん」
山縣公爵「先生、晋作、お前が見ていたものは、一体何だったんだ?」
山縣公爵「ワシには何も見えん」
山縣公爵「闇じゃ」
山縣公爵「この真っ暗闇だけが、ワシの全てじゃ」
武人「当り前やろ」
武人「目を閉じとるやないか?」
山縣公爵「なに?」
武人「目を開けろ」
武人「お前が狂気と怒りから作った未来を・・・新しい時代をよく見ろ」
武人「ちゃんと光を見んか!狂介!」
山縣公爵「光・・・」

〇東京全景
山縣公爵「新しい時代・・・」
山縣公爵「未来・・・」
山縣公爵「眩しいの・・・ギラギラしちょらあ・・・」

〇中世の街並み
運転手「閣下!」
運転手「お怪我はございませんか?大事ございませんか?」
山縣公爵「大仰に騒ぐな」
山縣公爵「ふん、怪我と大事ばかりの生涯じゃ」
山縣公爵「何のことはない。杖をよこせ」
運転手「は、はい!」
  山縣、杖を手に活動家へと近づいてゆく。
若き活動家「山縣!」
山縣公爵「放してやれ」
警官「は、はい!」
若き活動家「貴様!」
山縣公爵「小僧。このワシにもの申すか?」
山縣公爵「この山県狂介に挑むと申すか!」
  山縣、杖をかざして若者の眼前に突きつける。
若き活動家「ひ、ひいっ!」
  若者は腰を抜かす。
若き活動家「クッ・・・」
  だがその目に宿る灯は、かろうじて消えてはいない。
  山縣は、若者と彼の目の前にかざした己が杖を、じっと見つめる。
山縣公爵「ふふ・・・この棒切れめ」
若き活動家「な、何だと!」
山縣公爵「ワシを倒したければ、もっと狂え」
山縣公爵「さあ、狂え!」
若き活動家「・・・」
  山縣は若者に背を向け、煌々ときらめく都会の喧騒を歩きはじめる。
  前へ、前へ。
  ただ一人、まだ一人。
  前へ、前へ。

〇草原の道
タケト「よし!もう泣いちょらんな。コスケ」
  MAD・AGE(END)

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