第12話 『覚悟』(脚本)
〇学校の部室
来明電奈「これから探偵部の定例会議を始める。 では、まず新しい依頼に関して・・・」
山田「待ってくれ。 その前に、俺から一つ提案させてほしい」
三輪燈和「はい、はーい! 私からも提案がありまーす!」
来明電奈「提案?」
山田「やはり、班馬には探偵部を辞めてもらうべきではないかと・・・」
班馬宙斗「えっ・・・?」
三輪燈和「ですよねー」
山田「だって、お前、人間じゃないだろ?」
三輪燈和「ひどいじゃないですか? ずっと私達をだましてたなんて!」
班馬宙斗「いや、そんな・・・僕はだます気なんて・・・!」
来明電奈「だったら、どうして黙ってたんだ? ZODの改造人間であることを」
〇簡素な一人部屋
班馬宙斗「待ってください、僕は!」
真城騎刃「──おっ、気づいたか」
班馬宙斗「真城さん・・・、ここは?」
真城騎刃「あいつ・・・為定の部屋だ」
班馬宙斗「・・・為定先生の・・・」
真城騎刃「痛みはあるか?」
班馬宙斗「痛み?」
真城騎刃「腕、違和感ないか?」
班馬宙斗「あっ・・・腕・・・」
班馬宙斗(腕が、ある・・・)
高速道路で馬獣神に千切られたはずの腕が元通りに繋がっていた。
真城騎刃「徹夜で繋いだんだ。片手のまま帰したんじゃ親御さんがビックリするだろ」
班馬宙斗「徹夜で・・・ありがとうございます」
真城騎刃「礼ならあいつに。 俺はほんの少し助手を務めただけだ」
班馬宙斗「先生は?」
真城騎刃「研究室で寝てる。 けっこうな大手術だったからな」
班馬宙斗「そうですか・・・」
真城騎刃「で、痛みや違和感は?」
宙斗は、恐る恐る腕や肩の関節、指を動かしてみた。
班馬宙斗「・・・違和感はないです。痛みも・・・」
真城騎刃「そっか。痛みは、ないんだよな。俺達・・・」
真城騎刃「ごめんな、本当に」
班馬宙斗「そんな! 真城さんだって、被害者じゃないですか!」
真城騎刃「それでも、誰か大人が謝らなきゃ。 やりきれないだろ」
班馬宙斗「真城さん・・・」
宙斗の眼から涙が溢れ出した。
真城からの謝罪を求めていたわけではない。
これまで誰にも打ち明けられず、一人で抱え込むしかなかった。
そういった心の重荷や苦しみを分かち合える人がいた。
それが嬉しかった。
班馬宙斗「あの、その・・・」
宙斗は泣いたのをごまかすために話題を変えようとした。
そして、反射的に「みんなは?」と、口に出しかけて、思わず言葉を飲み込んだ。
真城騎刃「どうした?」
班馬宙斗「いえ、別に・・・」
班馬宙斗(聞くのが怖い)
目覚める前に見た夢が、頭をよぎった。
班馬宙斗(みんな、どう思ったんだろう。 僕が人間じゃないと知って・・・)
その答を知る勇気はなかった。
班馬宙斗(これから、僕はどうすればいいんだろう・・・どうやって生きていけば・・・)
班馬宙斗「真城さんと先生は、ずっと戦ってきたんですよね。あいつら『ZOD』と・・・」
真城騎刃「ああ」
班馬宙斗「これからも戦い続けるんですか?」
真城騎刃「まあ、今のところ、止められるのは俺くらいだからな」
班馬宙斗「お手伝いは、いらないですか?」
真城騎刃「お手伝い・・・?」
班馬宙斗「中途半端な改造途中人間ですけど、普通の人より丈夫だし──」
班馬宙斗「真城さんに鍛えてもらえば、戦闘でも少しは役に立てると思うんです」
真城騎刃「何を言ってるのか、わかってるのか? 君は──」
班馬宙斗「ええ、『サイドキック』って言うんでしょう? ヒーローの相棒」
班馬宙斗「昔、あこがれてたんですよ。 特撮のヒーローものとか、漫画を読んで──」
真城騎刃「君も『ZOD』と戦うっていうのか?」
班馬宙斗「・・・はい。 最初は足手まといかもしれませんけど・・・」
真城騎刃「何のために?」
班馬宙斗「・・・はい?」
真城騎刃「君は、何のために、あいつらと戦うんだ?」
班馬宙斗「何のためって・・・それはもちろん・・・」
宙斗の頭の中に、電奈や探偵部員、家族の顔が浮かんだ。
班馬宙斗「大事な人達を・・・守るために」
真城騎刃「・・・本当に守りたいのなら、やめた方がいい」
班馬宙斗「えっ・・・?」
真城騎刃「今回、君達が巻き込まれたのは、恐らく、あの男・・・為定と一緒にいたせいだ」
真城騎刃「俺達と共に戦えば、君や周りの人達もやつらに狙われかねないぞ」
班馬宙斗「・・・・・・」
真城騎刃「俺達とは、もう関わらないほうがいい。 守りたいなら、その人達のそばで守ってやれ」
班馬宙斗「それは・・・できません」
班馬宙斗(もう学校には・・・元の生活には、戻れない)
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