十階のノックス

わらやま

本編(脚本)

十階のノックス

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〇古風な和室
  私の名前は、
  西岩 家屋(にしいわ かおく)。
  探偵兼推理小説家として活動している。
  私の推理小説は世界中で愛されており、
  多くのファンレターが届くのだが、
  今日届いた手紙は毛色が違った・・・
和十村「先生! どうかされましたか? 難しい顔をして」
  彼は和十村(わとむら)。
  いつも突然現れ、
  私の探偵業を手伝ってくれる。
  言わば相棒である。
西岩 家屋「やあ、和十村君。 この手紙を読んでみてくれないか」
和十村「ん、イギリスからのファンレターですか。 特に何もおかしくはないですよね?」
西岩 家屋「気になるのはその内容だ」
和十村「どれどれ・・・」
  『私は貴殿の秘密を知っている者。出来れば一度話がしたい。』
  ベイカービルディング10階のノックスより
和十村「これは確かに奇妙ですね・・・。 先生の秘密って、心当たりはあるんですか!?」
西岩 家屋「うむ、それが全く無いのだよ。 もちろんこのノックス氏とも面識が無い」
西岩 家屋「そして、秘密を盾に脅すという訳でもなく、ただ会いたいとだけ記されている」
和十村「ただの悪戯なのでは?」
西岩 家屋「悪戯でわざわざ異国の地である日本まで手紙を出すかな?」
西岩 家屋「そこでだ。 私はこの誘いに乗り、イギリスに赴こうと思う!!」
西岩 家屋「イギリスにはいつか行こうと思っていたから、渡りに船というやつだ」
和十村「そ、そうですか・・・。 相変わらず先生の行動力には驚かされますね・・・。いつ行くんですか?」
西岩 家屋「明日だ。 横浜からロンドン行きの便がちょうどよくあったのだ」
和十村「明日!? それまた急ですね!?」
西岩 家屋「もちろん君も来るんだよ。 和十村君」
和十村「えーーー!?」

〇港の倉庫
  50日後──。
  ロンドン
西岩 家屋「ふぅ・・・。 漸く着いたな。 だが、ロンドン便も安いもんだ。 思っていた金額の半分ほどで済んだぞ」
和十村「そう思うのは先生が売れっ子作家だからですよ・・・。 早速ノックス氏を訪ねますか?」
西岩 家屋「ああ、ベイカービルディングに向かおう」

〇中世の街並み
西岩 家屋「ベイカービルディング・・・ここか・・・」
和十村「ロンドンの建物はどれも高いですね。この建物も11階までありますよ!?」
西岩 家屋「ここの10階のB号室がノックス氏の住まいらしい・・・。早速入ろう」

〇地下室
西岩 家屋「うっ、中は案外古びているな・・・」
和十村「階段もそこら中に穴がありますよ。 先生!!気をつけて進んでください」
西岩 家屋「ああ、しっかり足元に注意して進むよ」

〇部屋の扉
西岩 家屋「はぁはぁ・・・10階まで登るのは、 骨が折れるなぁ・・・」
和十村「そんな重い外套を着ているからですよ」
西岩 家屋「こ、これは・・・、私がシアトルに滞在していた際に買った一張羅なんだぞ・・・。 脱ぐわけにはいかん・・・」
和十村「先生!!ここがB号室のようです」
西岩 家屋「あ、ああ・・・。 そ、そのようだな・・・。 ふぅ・・・。ではノックしてみよう」
  コンコン
西岩 家屋「すみません!!ノックスさん!! 手紙を頂戴していた西岩です」
和十村「反応がありませんね・・・」
西岩 家屋「留守なのかもしれないな・・・ 仕方ない。出直して──」
  ガチャ
ノックス「・・・アンタ誰? 何の用?」
和十村「ず、ずいぶんぶっきらぼうな方ですね」
西岩 家屋「あなたがノックスさんですか?」
ノックス「・・・そうだけど」
西岩 家屋「ああ、良かった。 突然すみません。 私は手紙を頂戴した作家の西岩です」
ノックス「手紙?作家? 何のことだ・・・!?」
西岩 家屋「ん?ノックスさんから2ヶ月ほど前にいただいた手紙の事ですが・・・」
ノックス「俺はそんなのしらねぇぞ!! なんだテメェ!! あの中国人どもの仲間か!?」
西岩 家屋「た、確かにノックスさんから手紙をいただいたのですが・・・ あと我々は日本人で──」
  バタン
西岩 家屋「うーん・・・ 一体どういうことだ?」
和十村「先生、ノックスさんは嘘はついていませんでした」
西岩 家屋「君が言うのなら間違いないな・・・。 一体どういうことだ・・・!? 仕方ない、出直して──」
  おい!なんだ!てめぇは!
  何処から入ってきた!?
和十村「ノックスさんの声です!!」
  おい!おい!?
  やめろ!こっちにくるな!
  ドンッ!!!
西岩 家屋「一体何事だ!?」
西岩 家屋「ノックスさん!!ノックスさん!! どうしましたか!? 何ですか今の声は!?」
西岩 家屋「おかしい!!返事がない!!」
和十村「ど、どうしますか!?」
西岩 家屋「くっ、仕方ない。 扉を蹴破る!!」

〇英国風の部屋
「!!」
西岩 家屋「ノックスさん!?大丈夫か!?」
和十村「だめです・・・。 事切れています・・・」
西岩 家屋「そ、そんな・・・ ムッ、これは!?」
和十村「血の付いた鉄球・・・。 おそらくコレが凶器・・・」
西岩 家屋「かなりの重量がありそうだ。 コレをで頭部を殴打されたのか!?」
王 破浪「ど、どうしました!? 大きな音がしましたが!?」
王 破浪「ヒ、ヒィィ!? ノックスさんが死んでる!?」
西岩 家屋「あなたは!?」
王 破浪「私はとなりの部屋の住人です・・・。 こ、これは一体・・・」
西岩 家屋「私たちはたまたま彼を訪ねて来た者です。 とにかく急いで警察を呼んでください!! これは殺人事件です!!」
王 破浪「は、はい、分かりました!!」
和十村「先生・・・」
西岩 家屋「ああ!和十村君・・・。 私も気づいている・・・」
西岩 家屋「窓には鍵がかかっている・・・」
西岩 家屋「加えて玄関の前には我々がいたが、もちろん誰も見ていない」
西岩 家屋「他に出入り口も見当たらない。 これは・・・密室殺人だ・・・」
西岩 家屋(だが犯人はこの短時間でどこから脱出したんだ・・・? それにこの部屋に充満している匂いは一体・・・?)

〇英国風の部屋
ロストレード警部「ふむ・・・。 では、あなたが突入した際には、窓にもドアにも鍵がかかっており、密室だったと──」
西岩 家屋「ええ、ロストレード警部 今お話しした通りです」
西岩 家屋「私が彼と話を終えて部屋に戻ったわずかの間に犯人は犯行に及んだものと思われます」
ロストレード警部「西岩さん・・・ あなたが聞いたという侵入してきた何者かにノックス氏が襲われていたという証言さえなければ」
ロストレード警部「足を滑らせ、持っていた鉄球に頭をぶつけて運悪く即死した」
ロストレード警部「というところになるんですが・・・」
西岩 家屋「ですが、私達は確かに彼の声を聞きました」
ロストレード警部「ん? まあ、現場の捜査も始まったばかり。またお話を伺いますので、一旦この部屋からは出てください」
西岩 家屋「ええ、分かりました。 ところで私的にもノックス氏からもらった手紙の謎が残ってまして」
西岩 家屋「この階の住人にお話を聞かせてもらってもよろしいですか?」
ロストレード警部「ええ、それはかまいませんよ」

〇部屋の扉
和十村「警察はやはり事故の線を疑っているみたいですね」
西岩 家屋「うむ、あの声は私達しか聞いていないからな。それに警部の言うように、状況的にも時間的にも犯行に及ぶには厳しい」
西岩 家屋「とりあえず、警察が部屋の捜査をしている間に、我々は同じ階の住人に話を聞こうではないか」

〇部屋の扉
和十村「ここはA号室、先ほどの部屋の真隣で、 警部の話だと通報した男性である、 王 破浪(ワン ポーロウ)さんがお住まいと」
西岩 家屋「うむ、話を聞いてみよう」
西岩 家屋「すみませーん」
王 破浪「おお!!あんたは先程の!!」
西岩 家屋「どうも、先程は迅速な通報ありがとうございました」
王 破浪「いやいや、お安い御用ですよ」
王 破浪「ところであなたは日本人だと思いますが、 ノックスさんとはどういった知り合いなんですか?」
西岩 家屋「うーん、知り合いとは少し違うのです。 私は作家なのですが、ノックスさんから手紙をもらいましてね」
西岩 家屋「それで会いに来たのですが、人違いだと言われてしまって」
西岩 家屋「申し訳ないのですが、彼のことをお聞きしたくて・・・」
王 破浪「なるほど・・・ まあ、彼は多少粗暴ながらも普通の青年という印象でしたよ。 少し前までは・・・」
西岩 家屋「・・・というと?」
王 破浪「どうも、一ヶ月前くらいから阿片(アヘン)に手を出したみたいで・・・」
西岩 家屋「阿片・・・ですか!?」
王 破浪「部屋で吸ってるみたいで、こっちにも匂いが来て迷惑していたんですよ」
王 破浪「多分あなたが訪れた時はちょうど阿片を吸おうとしてたんじゃないかな?」
王 破浪「大体いつもこの時間に吸うんだが、吸う前は機嫌が悪いんだよ」
王 破浪「よく私も暴言を吐かれました・・・」
西岩 家屋「ああ・・・それで私と話した時も中国人がどうとか言ってきたのか」
王 破浪「この階のもう1人の住人が中国人だって事もあるんでしょうけどね」
西岩 家屋「ああ、そうなんですね。 後ほど話を伺ってみます。 ところで・・・」
西岩 家屋「王さんかなり逞しい体つきですね。 何かされているんですか?」
王 破浪「ん、ああ・・・いやはや全然だよ。 レスリングをやってはいるが・・・」
王 破浪「毎日ここの昇り降りをしているからね! それでだと思うよ!」
西岩 家屋「いやー、凄いですよねー。 私は一度上っただけでヘトヘトでしたよ。 10階の上り下りを毎日なんて無理です」
王 破浪「ん?ああ、そうだね、10階。 大変だよ!!まあ、その分家賃も安いんだがね」
王 破浪「もういいかな。 この後警察にも色々聞かれるらしくてね」
西岩 家屋「ええ、結構です。 ありがとうございました」
和十村「あまりノックス氏とは折り合いは良くなかったようですね。 嘘はついていないようです」
西岩 家屋「そうだな・・・。 そして彼ならあの鉄球を持ち上げることもおそらく可能だ・・・」
西岩 家屋「次は、もう1人の中国人の住人とやらに話を聞こう」

〇部屋の扉
和十村「ここがC号室ですね。 B号室の隣ではありますが、少し離れていますね」
西岩 家屋「うむ では、訪ねてみよう」
  コンコン
西岩 家屋「すみませーん」
虎 春鈴「はい? また警察の方ですか?」
和十村「ずいぶん小柄な女性だ 四尺五寸ほどですかね」
西岩 家屋「いえいえ、私達は警察ではありません。 実は死んだノックスさんについてお伺いしたくて」
  私は諸々の事情を彼女に説明した。
虎 春鈴「そうですか・・・。 それはこんな事に巻き込まれて災難でしたね」
西岩 家屋「ええ・・・ですから、ノックスさんについてお伺いしたくて・・・。 ええと・・・」
虎 春鈴「ああ、私は虎 春鈴(フー チュンリン)といいます」
虎 春鈴「申し訳ないんですが、ノックスさんとはほとんど交流もないので、特に知っていることはないんです」
西岩 家屋「そうですかぁ・・・」
虎 春鈴「ただ、私の知る限りですがノックスという名前の住人は1人だけなので、人違いではないと思います」
西岩 家屋「うーん、やはり阿片の影響で記憶がおかしくなってしまっていたのか・・・」
西岩 家屋「ちなみに虎さんはノックスさんが阿片を服用していたのはご存知ですか?」
虎 春鈴「阿片!? そうなんですか・・・それは初耳です・・・」
西岩 家屋「そうですか。 A号室の王さんはノックスさんは最近様子がおかしくなって、中国人に暴言を吐くようにもなったと言ってましたが」
虎 春鈴「・・・今思えばそうだったかなというくらいですかね・・・」
虎 春鈴「私、体も気も小さいので、よく男性からは怒鳴られるので、あまり気にしていませんでした・・・」
西岩 家屋「なるほど・・・そうですか。 いやいや、警察とのお話の後なのにすみません。ありがとうございました」
西岩 家屋「ところで、虎さんもこのアパートの上り下りよく耐えられますね。大変じゃないですか?」
虎 春鈴「ああ、私イギリスのサーカス団に所属しているので、小柄ですけど体力はあるんです」
西岩 家屋「サーカスですか!! それは一度拝見したいものだ!!」
虎 春鈴「よろしければ、一度見に来てください。 それでは失礼します」
和十村「先生・・・ 彼女は嘘をついてます・・・」
西岩 家屋「和十村君・・・やはりか・・・。 いくつか確かめたいことがある」
西岩 家屋「警部に頼んで現場を調べさせてもらおう」

〇英国風の部屋
ロストレード警部「西岩さん これは確かにあなたの言うように殺人事件のようだ」
西岩 家屋「ほう というと・・・何か手がかりが?」
ロストレード警部「窓を調べたところ、こぶしほどの穴が空いておりました」
ロストレード警部「雑に修繕されており、簡単に取り外しが可能なフタで覆われているのみでした」
西岩 家屋「なるほど、それなら鍵を閉めた後、フタを閉めれば、密室が完成すると・・・」
ロストレード警部「ええ、かつ真隣のA号室のベランダからであれば、十分飛び移れる距離です」
ロストレード警部「なので、私はこれからA号室の王さんに、より詳しい事情聴取を行います」
西岩 家屋「わかりました。その間、私も現場を調べてもよろしいですか?」
ロストレード警部「ええ、現場を荒らさないようにだけ気をつけて下さい」
和十村「その穴とやらを見てみましょう」
西岩 家屋「ほう、これか。 確かになんとか腕が通る。警部の仮説も実践可能なように思えるな」
西岩 家屋「しかし狭いベランダだな・・・ 手すりもぼろぼろだ・・・」
和十村「ここに人の重みが乗ると、最悪崩れますね」
西岩 家屋「ああ、ましてや飛び移るとなるとな・・・」
西岩 家屋「他に手がかりは・・・」
西岩 家屋「ああ、これが阿片のパイプか・・・ まだ匂いが残っているな・・・ 吸わないように気をつけよう」
和十村「先生! ここの床もボロボロです。 足元に気をつけて!」
西岩 家屋「ふむ、阿片で意識が混濁した時に足を取られては危ないからな──」
西岩 家屋(待てよ・・・ ノックス氏はまさにこの場所で倒れていたな・・・)
西岩 家屋(だが、常習していた彼がそんなことを・・・? ピースが足りない気がする・・・ ん?)
  パラパラ
和十村「天井もボロボロだ・・・ 通気口がかなり露出してますよ・・・」
西岩 家屋「・・・なるほどな。 謎は全て解けた」
和十村「先生!本当ですか!?」
西岩 家屋「ああ!犯人は虎さんだ! だが、まだ分からないこともある。 彼女にはこの部屋に来てもらおう」

〇英国風の部屋
虎 春鈴「あ、おのぉ・・・ まだ何かお話があるんですか・・・?」
西岩 家屋「虎さん あなた私達と先程話していた際にいくつか嘘をつきましたね?」
虎 春鈴「え!?」
西岩 家屋「あなたはノックスさんが阿片を吸っていることを知らないと言ったが、それは嘘ですね?」
虎 春鈴「そんな・・・本当に知らなかったです!!」
和十村「嘘をついても無駄ですよ」
西岩 家屋「あなたは知っていた・・・ いや、むしろあなたがノックスさんに阿片を販売していましたね?」
虎 春鈴「そ、そんな・・・濡れ衣です!!」
和十村「それも嘘です」
西岩 家屋「ノックス氏はかなりの量の阿片を持っていたようですが、部屋には金目のモノはありませんでした」
西岩 家屋「加えて日頃から中国人を悪く言っていた。 金銭面で揉めていたと考えられます」
西岩 家屋「金が払えないことで暴力による解決の手段をとられることを恐れたあなたは先にノックス氏を始末しようとした・・・」
虎 春鈴「そんな・・・!? 私殺そうとなんて思ってませんよ」
和十村「・・・嘘です」
虎 春鈴「それに警部さんが言うにはこの部屋は密室だったんですよね!?」
西岩 家屋「それも綻びがあって、窓に穴があったんです」
虎 春鈴「窓って・・・ 私の部屋のベランダとは5m以上離れてるんですよ!」
虎 春鈴「真隣のA号室の王さんの方が怪しいじゃないですか!!」
西岩 家屋「ええ、ですが王さんでは窓からの侵入は不可能なんです」
西岩 家屋「肝心の穴は、私の腕がギリギリ通るサイズです」
西岩 家屋「体格のいい王さんでは手が通らないんです。それにベラ──」
虎 春鈴「じゃあ、やっぱり密室だったって事じゃないですか!!」
西岩 家屋「秘密の抜け穴はもう一つあったんです」
西岩 家屋「この通気口です」
虎 春鈴「通気口って・・・ こんなの人が通れるわけないじゃないですか!?」
西岩 家屋「ええ、その通りです ここから人が侵入するのは不可能です」
虎 春鈴「そうですよね!!」
西岩 家屋「ですが、天井の直前までは太い配管が通っています」
西岩 家屋「あなたならギリギリ通れる程度のね」
西岩 家屋「そして、その通気口の真下には阿片パイプが置かれている」
西岩 家屋「この部屋に侵入したのは人ではなく・・・毒薬です」
虎 春鈴「!!」
西岩 家屋「あなたはノックスさんがいつもこの時間に阿片を吸う事を知っていた」
西岩 家屋「そして、私という来訪者が現れ、彼がこの場を離れた隙に通気口から毒薬をパイプに垂らした」
西岩 家屋「それに気づかずにノックス氏は阿片を吸った」
西岩 家屋「おそらくその毒薬には強い幻覚促進作用もあるのでしょう。私が聞いた声はノックスさんが幻覚に怯えて出していたものだったのです」
西岩 家屋「たまたま倒れた所に鉄球があったことで、警察も私達も撲殺だと勘違いしてしまったんです」
虎 春鈴「・・・」
和十村「先生!!一気に追い詰めましょう!!」
西岩 家屋「そろそろロストレード警部が戻ってきます。 あなたの部屋を調べたら阿片販売の証拠も見つかるんじゃないですかね」
虎 春鈴「うっ・・・ぐっ・・・ わ、私は・・・」
虎 春鈴「私は殺していない!!」
西岩 家屋「な、窓から逃げようというのか!! お、おい!!ここのベランダは人が乗ったら・・・!!」
和十村「先生、彼女は嘘をついていません」
西岩 家屋「ハッ!? 何を言っているんだ和十村君!?」
  キャアアアアア!!!!
西岩 家屋「ぐっ!?やはりベランダが耐えられなかったか!! だが、幸いにも木がクッションになっている!!生きているぞ!!」
ロストレード警部「これは何事ですか!? 一体今の音は!?」
西岩 家屋「あ、ああ!!警部!! 実は今ほど虎さんが飛び降りて!!」
ロストレード警部「虎さんが!? 本当だ!!」
ロストレード警部「君!!すぐに救助を!!」
警官「ハイッ!!」
ロストレード警部「・・・西岩さん。 ところでどうして虎さんは飛び降りたんですか?」
西岩 家屋「い、いや、それが、私が推理を話しているうちに逃げようとしたんです・・・」
西岩 家屋「だが、和十村君が言うには、彼女は殺人を犯していないと言うのだ・・・。 一体どう言うことなんだ・・・」
ロストレード警部「西岩さん・・・。 あなた言っていることが滅茶苦茶です」
ロストレード警部「単刀直入に言いますが、私はあなたをノックス氏殺しの犯人だと疑っています」
西岩 家屋「な、なんだと!?」
ロストレード警部「ノックス氏が死ぬ前に誰かと話していたというのはあなたの証言でしかありません」
ロストレード警部「あなたのその証言が虚偽であれば、この部屋が密室だとかどうかは関係ない。あなたならノックス氏を殺せたのです」
西岩 家屋「そ、そんな!! 私は誓って嘘などついていない!! そ、それにノックスさんが叫んでいたのは虎さんの毒薬のせいで・・・」
ロストレード警部「・・・虎さんは殺していないとさっき言ってませんでしたか?」
西岩 家屋「い、いや、まぁそうなのだが・・・」
西岩 家屋「ハッ!! 和十村君!! そう!! 彼は人が嘘をついているかどうか分かるのです!!」
西岩 家屋「和十村君!!和十村君!! おい、一体どこへ行ったんだ!! 私の無実を証明してくれ!!」
ロストレード警部「・・・極めつけはそれです。 王さんも私と同様の違和感をあなたに感じていました」
ロストレード警部「その和十村?という人物は一体誰のことですか?」
西岩 家屋「は!?何を言っている!! ずっと私と共に行動していただろう!!」
ロストレード警部「いいえ、あなたはずっと1人でしたよ。 時折虚空を見つめておりましたが」
西岩 家屋「そ、そんな・・・何かの間違いだ!! 私を嵌めようとしているだろ!!」
ロストレード警部「そもそもあなたがここに来た理由と言っていたノックス氏の手紙の件」
ロストレード警部「生前のノックス氏と親しい人物にも確認しましたが」
ロストレード警部「彼は読み書きが出来なかった。 故にあなたの小説を読む事は出来ない。 ましてや手紙を書く事なんてあり得ないんです」
西岩 家屋「な、はぁ!? ど、どう言う事だ!? 私は確かに手紙をもらった!! 和十村君も確認した!!」
警官「警部!!虎氏の病院への搬送完了しました」
ロストレード警部「ご苦労。 では、この男をノックス氏殺人容疑で署へ連行しろ!!」
警官「ハイッ!!」
西岩 家屋「お、おい、ばかな!! 私はやってない!!真犯人は別にいるはずなんだ!! 和十村君!!どこへ行ったんだ!!」
ロストレード警部「続きは署で聞くよ。 もっとも錯乱しているようだから、まともに話は出来ないかもしれないがね」
西岩 家屋「一体どういうことなんだ!?」
  消えた和十村
  ノックス氏殺しの真犯人
  手紙の真実
  全ては『解決編』にて

次のエピソード:解決編

コメント

  • この話の存在を知りませんでしたが、なかなか楽しいです。
    ノックスの十戒についてもミステリー連載などやっておいて恥ずかしながら知りませんでした。それを踏まえて読むとなお面白いですね。
    職場で読むと音も出せないのでBGMなくても丁度良かったりします。

  • 扉越しに起こる事件、最っ高にわくわくしますね!すごく自然な流れで次々と十戒が破られていくので笑ってしまいました😂✨ 面白いです!ラストの和戸村くんの流れも気になります。ミステリー好きにらたまらない作品!解決編読むのが楽しみです😊

  • 面白かったです。解決編も読んで、またこちらに戻ってきました。恥ずかしながら、「ノックスの十戒」を、この作品で初めて知りました!
    十戒以外にも、推理小説のルールってイロイロあるんですね。最近、私が挑戦しているミステリー小説は、このルールは全く守っていませんが、故意ではないです(笑)
    作品の内容自体も引き込まれましたが、あえてルールを全破りするという手法が、スゴイです。

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