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kowaaa

過去の犯人(脚本)

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〇階段の踊り場
  僕は悪くない・・・
  だってあれは・・・
  アイツらのせいだから・・・
  僕がやった訳じゃない──!!

〇美術室
  美術の授業が終わって
タイチ「なぁ!キヨシ!! これ片付け頼むわ!!」
  そう言ってタイチ君が
  僕に絵の具用のバケツを渡してきた
タイチ「オレら部活で忙しいんだわ!! 他の奴の分もやっといてくれよ!! 頼むわー!!」
  そう言って机を指差す
  10人分くらいはある・・・
キヨシ「え・・・」
タイチ「キヨシは部活動無いだろー? 頼むよー!!」
キヨシ「いや・・・でも・・・」
タイチ「ありがとうな!!優しいキヨシ君!!」
  そう言ってタイチ君とその取巻きの連中は
  ろくに片付けもせずに部屋を出て行った
キヨシ「・・・」
  いつもこう・・・
  毎年クラスが変わるのに
  いつからか軽視され・・・
  面倒事を押しつけられる・・・
キヨシ「はぁ・・・」
  よりによって美術室・・・
キヨシ「何でこの学校の水道は 廊下にしか無いんだ・・・」
  悪態をつきながら
  押しつけられたバケツを廊下に運び始める

〇学校の廊下
  バケツはさほど大きくは無いが
  数が多い
キヨシ「ほんと・・・めんど──」
  バケツを4つほど持って
  ドアを出ようとした瞬間
  ドンッ
  突然横から衝撃を受けた
キヨシ「いっ──」
  バシャン!!
  衝撃で勢いよくバケツが床に転がった
  僕は前のめりに転んで
  床に両手をついた
タイチ「ギャハハッ」
タイチ「ちょっと大丈夫かよー!! 勢いよく転びすぎだろー!!」
  さっきドアを出て行ったはずのタイチ君と
  その取巻きが僕を見下ろしながら笑っている
タイチ「悪いな!気づかなくてよ!! ぶつかっちまったわ!!」
タイチ「つーかぁ 床が水浸しじゃんっ!! ヤバ!! さっさと拭いとけよー!?」
  そう言って
  アイツらは笑いながら去って行った
キヨシ「ほんと・・・幼稚・・・」
  美術室の前から
  階段まで水が滴っている
キヨシ「あーぁ・・・」
  雑巾を取りに行こう・・・
  部屋に雑巾を取りに行った
  そのわずかな時間に
  事故は起きた・・・

〇階段の踊り場
  『キャーーー!!』
キヨシ「!?」
  何が起きたのか分からなかった
  隣のクラスのカナコさんが悲鳴をあげていた
  バタバタバタバタッ
  ビックリして立ち尽くしていると
  近くにいた先生や学生達が集まってきた
  『アサギ!!おい──!!』
  先生の叫ぶ声が聞こえる
  学生達の話し声が耳に入ってくる
  アサギ君が階段から落ちたらしい・・・
キヨシ「え・・・」
  それって・・・
  もしかして・・・
  さっきこぼした・・・
  バチッ
  カナコさんと目が合った
  ヤバイッ!!
  直感的に逃げなければならないと思った
  バケツも雑巾も置き去りにして
  僕はその場から逃げた

〇大きな木のある校舎
  あの日の事は誰にも言っていない
  言えるわけがない
  アサギ君がほとんど動けなくなったと
  噂で聞いた・・・
キヨシ「そんな・・・」
  どうしよう・・・
  でも誰も気づいていないらしい・・・
  『水をこぼしたのは誰か』
  誰も起きた事を知らせていないのだ・・・
  あの事故以来タイチ君達からの
  嫌がらせは止まった・・・
  その代わり
  目が合う度に
  『誰にも言うなよ』
  『お前も共犯だぞ』
  そう言われているようだった
  僕はその視線と
  アサギ君への罪悪感に耐えられなくなり
  学校から逃げた

〇汚い一人部屋
  それからの人生は
  前にもまして惨めなものだ・・・
  高校は結局中退
  部屋から出るのが難しくなった
  僕を真っ直ぐに見た
  カナコさんの目
  忘れられない・・・
  『あなたが犯人』
  『アサギ君にした事を
  反省もせずに生きている』
  『許されると思っているの?』
  あの目を思い出す度
  そう責められている気分になる
  頭がおかしくなる
  『大丈夫・・・』
  『お前は悪くない・・・』
  『悪いのはアイツらだろ・・・』
  『誰も気づいていない・・・』
  『カナコさえ処分できれば・・・』
  『リセットして』
  『再スタートだ』
  もう一人の僕が話しかけてくる・・・
  『僕は悪くない・・・』
  ・・・

次のエピソード:エイジの決意

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