ちゃんと選んで、閻魔ちゃん!

安芸沙織理

第1話 天国? 地獄? 選べない!(脚本)

ちゃんと選んで、閻魔ちゃん!

安芸沙織理

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〇裁きの門
  20××年、春──。
  気づけば、私、園真帆(そのまほ)は暗闇の中をさまよっていた。
  何があったのか、まるで思い出せない。
  なにか、重要なことが起こったような気もするんだけど・・・。
園真帆「と、とりあえずみんな列に並んでるし、私もそうした方がいいんだ・・・よね?」
  そのとき、門からものすごく偉そうな人が飛び出してきた。
  なんだか、どこかで見たことあるような・・・。
閻魔大王「ええい! 毎日毎日、天界からの雑用ばかり、閻魔大王なんて名ばかりだ!」
閻魔大王「もう儂は引退する!」
餓鬼「え、閻魔様! お待ちくださいー! 急にそんなこと言われましても!」
閻魔大王「案ずるな、餓鬼(がき)よ! 儂の代わりはきちんと用意しておる!」
園真帆「え、閻魔大王!? ここってそういうアトラクション的なところなのかな・・・」
園真帆「でも、なんだか辞めたがってるし、なにがなんだかわからないよ・・・」
園真帆「とりあえず、ここに私がいていいかもわからないし、別のところに・・・」
園真帆(でも、勝手に動いていいのかな? これで怒られたりしたら嫌だし、じっとしとくべき? ああ、でも…)
餓鬼「あ、ちょっとそこの子! 列からはみ出さないでくださーい!」
園真帆「ご、ごめんなさい・・・」
餓鬼「・・・まあ、閻魔様がまた勝手なこと言ってて、焦れるのも分かりますけど、もう少しお待ちを」
閻魔大王「それでだな・・・代わりの者は・・・」
餓鬼「やっぱりいないんじゃないですか!」
閻魔大王「待て!」
閻魔大王「そこらに並んでる者どもよ、儂の代わりに閻魔大王に『なりたくない者』 は手を挙げよ!」
閻魔大王「仕事内容は、魂を天国送りか地獄送りか判断するだけ! とっても簡単だぞ!」
園真帆「え? え?」
園真帆(ここが何かわからないのに、閻魔大王になるなんてダメだよね・・・。 でも、なると良いことがあるかも・・・)
園真帆(いや、でもさすがに怖いし・・・。 ここはじっくり考えて・・・)
園真帆(でも、考えてる間に決まっちゃったら・・・)
  そんなことを考えている間に、周りの人たちは全員手を挙げていた。
閻魔大王「おっ! そこのJK! そこまで頑なに手を挙げないとは、さてはやる気満々だな」
園真帆「え!?」
閻魔大王「さすがに全員が手を挙げたなら、儂が続投しようと思っていたが、そんなにやりたがっているなら仕方ない」
園真帆「いや、あの・・・まだ考えている途中だっただけで・・・」
閻魔大王「いやいや、いくら考えてもお前の心はもう決まっていたはずだ!」
園真帆「え・・・そうなんですかね・・・」
閻魔大王「さあ! これからはお前が新しい閻魔大王だ!」
閻魔大王「手続き等は部下に任せるから、あとはよろしく頼むぞ!」
  そう言うやいなや、閻魔大王はすごいスピードで走り去っていってしまった。
餓鬼「あっ・・・閻魔大王!」
園真帆「・・・どうしよう」
仏様「ちょっと、なんの騒ぎよ」
餓鬼「あ、仏様。それが、閻魔大王がそこのJKに仕事を任せるって言って逃げてしまいまして・・・」
仏様「はあ!? そんなこと可能なの?」
餓鬼「うーん、まあ、これから教育していけばなんとかなるかもって感じですね」
仏様「・・・閻魔のじじい、めんどくさいことを! いっつも尻拭いはあたしじゃない!」
餓鬼「いや、僕も大概フォローしてますよ・・・」
仏様「最終的にはあたしが尻拭いしてるの!」
餓鬼「まあ、そうですね・・・」
餓鬼「必要書類とかはこっちで、でっちあげとくので、申請自体は問題ないです」
仏様「・・・どうせ、教育はあたしにやれって言うんでしょ?」
餓鬼「いやー、僕からはっきりとは言いませんけど、そうしてくれるといいなーって」
仏様「はいはい、わかったわよ。その代わり、上に次の賞与弾むように言っておきなさいよ」
園真帆「え、えーと、私の意見は聞いてもらえないんでしょうか?」
園真帆「そもそも、なんのことだかもわからないんですけど・・・」
仏様「詳しいことは後から説明するから、今は黙ってなさい」
仏様「とにかく、女は度胸! なんでもやってみるものよ!」
仏様「それで、あんた、名前は? ほら、この紙に記入して」
園真帆「は、はい」
仏様「へえ・・・園真帆(そのまほ)か」
仏様「『エンマ』とも読めるわね。これはもう運命じゃないかしら」
餓鬼「お、それなら親しみを込めて見習いのうちは『エンマちゃん』と呼びましょう」
園真帆「そんな呼び方されたことないです・・・」
仏様「それから、閻魔の証のブレスレットも着けてね」
園真帆「はい・・・」
仏様「ちなみにそれ、逃げようとしたら爆発する仕組みだから気を付けるのよ」
園真帆「そ、そういうことは先に言ってください!」
園真帆「なんだかどんどん話が進んでいって、何がなんやら・・・」
仏様「とりあえず新閻魔の申請書にも記入していってちょうだい」
園真帆「はい・・・えーと、名前と性別と・・・趣味?」
仏様「まあ、その辺は適当でいいわよ」
園真帆「・・・あれ? 何も思い出せない」
餓鬼「あー、死のショックで記憶が混乱してるみたいですね」
園真帆「え・・・? 死?」
園真帆「私、死んだってことですか!?」
仏様「今さら何言ってんのよ。えーと、記録によると、轢き逃げに遭って死亡ね。ご愁傷様」
園真帆「そ、そんな・・・!」
園真帆(でも、そう言われたらなんだか思い出してきたかも・・・)
  そう、私はあの日、街に出かけようとして──
仏様「ちょっと、時間がないんだから回想シーンなんてしてる暇ないってば」
仏様「さっさと書類に記入する。まず服のサイズは?」
園真帆「いつもはSですけど、でもMでも全然着れるっていうか・・・」
園真帆「あ、サイズ測定したのだいぶ前だから、一応M?」
園真帆「でも、Sでも着れるかも・・・」
仏様「ええい! ごちゃごちゃうるさい!」
仏様「どっちでもいいから早く書きなさい!」
餓鬼「これは優柔不断にも程がありますね」
園真帆「そうなんです・・・」
仏様「こんなんだと天国送りか地獄送りかでひたすら悩みそうね」
園真帆「で、ですよね! やっぱり他の人に・・・」
仏様「いや、また別の候補を探すのもめんどくさいし、あんたでいいわよ」
園真帆「そんなアバウトな・・・」
餓鬼「あのー、そろそろ裁きを再開しないと、上から文句を言われるのですが」
仏様「そうね、じゃ、エンマちゃん、覚悟はいい?」
園真帆「も、もうですか!? 普通、もっといろいろと勉強してからだと・・・」
園真帆「さっき、これから教育していけばなんとかって言ってましたし!」
仏様「習うより慣れろって言うでしょ!」
園真帆「うう・・・ちなみに、地獄ってどんなところなんですか?」
仏様「まあ、本当に悲惨なところよ。一度行くと決して戻ってこれないの」
園真帆「え、そんなところに送るのか決めるのなんて責任重大すぎません?」
仏様「大丈夫! きっとできる!」
仏様「ほら、さっそく来たみたい」
罪人の声「ふざけんな! 放せ! てめえら、後で覚えてろよ!」
餓鬼「一人目からややこしそうですね」
仏様「さあ、ドーンといってみよー!」
園真帆「え、えええええ!?」
  こうして、優柔不断な私が閻魔大王として仕事をすることになってしまった…。

次のエピソード:第2話 閻魔ちゃんの初陣だ!

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