第11話 『真城騎刃』(脚本)
〇開けた高速道路
馬獣神に蹴られた宙斗の体は、遮音壁に叩きつけられる寸前で何者かに受け止められた。
???「ギリギリ間に合ったみたいだな」
宙斗は、その声に聞き覚えがあった。
班馬宙斗(猿と戦った時に、助けに来てくれた人だ・・・)
彼は宙斗の体を道路の壁際にそっと下ろしてくれた。
班馬宙斗(体に力が入らない・・・)
オーバーヒート寸前だった。
意識が薄れていく。
班馬宙斗「あの時は・・・いや、今回も・・・ありがとう・・・ございました・・・」
ナイトウルフ「・・・無理するな、少年。後は俺に任せろ」
ライダースーツに身を包んだ狼頭の獣人が、猛り狂う馬獣神の元へ歩いていく。
そこで宙斗の意識は途切れた──。
〇開けた高速道路
???「──斗くん! 宙斗くん!」
気がつくと、目の前に涙を流す電奈がいた。彼女は、宙斗の腕を握りしめていた。
馬獣神に蹴られた時に千切れた宙斗の機械仕掛けの左腕を。
班馬宙斗(そうか。知られてしまったんだな・・・)
ナイトウルフ「悪いが体を動かすぞ」
そう言うと彼は宙斗の体を抱き上げた。
ナイトウルフ「遠巻きに見ていた後続車の連中が、警察に通報したらしい」
ナイトウルフ「大きな騒ぎになる前に、俺達はここを離れるぞ」
班馬宙斗「女の子は・・・」
為定京二「無事だが、事故にあってるからな」
為定京二「一応、病院に連れて行って検査してもらうつもりだ」
来明電奈「君は自分の心配をしろ! 右腕が千切れているんだぞ!!」
班馬宙斗「大丈夫です・・・」
宙斗は声を絞り出した。
声が出なかった訳じゃない。
彼女に真実を告げるのが怖かった。
班馬宙斗「僕は『ZOD』の改造人間ですから、痛みを感じないんです・・・」
来明電奈「・・・・・・」
為定京二「これ以上、誰かに見られるのはまずい。 来明、班馬に腕を渡せ」
宙斗は無言の電奈から、右腕を受け取った。チクッと心が痛んだ気がした。
為定京二「真城、彼を私の研究室に運んでくれ」
班馬宙斗「先生・・・」
為定京二「班馬、いろいろ聞きたい事はあるだろうが質問は後回しにさせてもらう」
為定京二「心配するな。お前の体は、私が治す」
いろいろありすぎて頭の中が混乱していた。
班馬宙斗(先生はいったい何者なんだろう?)
ナイトウルフ「少年、ちょっと本気を出すぞ。 右腕を落とすなよ」
昔、絶叫マシーンに乗った時のように体がグンッと引き上げられた感覚がした。
〇黒
一瞬で高速道路と燃える車が小さくなっていた。
班馬宙斗(一度のジャンプで、何十m跳んだんだろう・・・)
班馬宙斗(これが本物の改造人間の力か。 改造途中人間とはえらい違いだ・・・)
電奈達の姿はもう見えない。
それが今の宙斗にはありがたかった。
班馬宙斗(ショックだったよな・・・探偵部の部員に両親の仇である『ZOD』の改造人間がいるなんて)
班馬宙斗(次に会う時、どんな顔して会えばいいんだ・・・どんな風に謝罪すれば・・・)
望んで改造された訳じゃない。
いわば宙斗も『ZOD』の被害者だ。
だが、宙斗はそれを黙っていた。
そこに、彼女への後ろめたさがあったのも確かだ。
〇けもの道
ナイトウルフ「ここにバイクを隠してあるんだ」
高速から少し離れた林の中で、ナイトウルフは変身を解いた。
???「この格好で会うのは初めてだよな?」
???「改めて自己紹介を。ナイトウルフこと、真城騎刃(しんじょう きば)だ」
真城騎刃「よろしくな、少年」
班馬宙斗「班馬宙斗です。 真城騎刃さん・・・真城・・・騎刃・・・?」
真城騎刃「俺の学生手帳を拾ってくれたせいで、酷い目にあわせてしまったみたいだな」
班馬宙斗「あ・・・」
班馬宙斗(真城騎刃・・・そうだ、僕はこの人に間違えられて改造されてしまったんだ)
班馬宙斗(・・・ということは)
真城騎刃「俺も君の後に、やつらに囚われて改造されてしまってね・・・」
真城騎刃「幸いにも脳改造前に逃れることができた。だから、洗脳もされてないし、今ではやつらと戦ってる」
班馬宙斗「そうだったんですね・・・」
真城騎刃「俺の顔なんか見たくもないだろうが、研究所までは運ばせてくれ」
真城騎刃「あいつと約束したからな」
班馬宙斗「あいつって、為定先生のことですよね・・・? 先生とは、どういう関係なんですか?」
真城騎刃「あいつは・・・、俺の協力者みたいなモンだ。この体のメンテナンス全般を任せてる」
班馬宙斗「先生が・・・?」
真城騎刃「・・・教師になる前は、そういう仕事をしてたんだ。君の腕も、元通りに繋げてくれるはずだ」
班馬宙斗「はい・・・」
真城騎刃「しかし、参ったな・・・」
班馬宙斗「・・・?」
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