改造途中人間チュート

栗山勝行

第9話 『夏合宿』(脚本)

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〇海辺
山田「も、もう・・・限界だぁ! ヒィ・・・ヒィ・・・」
三輪燈和「山田先輩、まだ3㎞ですよ~?」
山田「高・・・校生の・・・夏・・・合宿といったら、もっと・・・キャッキャウフフするもんだろ?」
山田「何故・・・大会もない・・・探偵部員が、10㎞もの遠泳を・・・課せられねば・・・」
三輪燈和「えーっ! みんなで電奈先輩を守るって、熱く誓ったじゃないですかー!」
三輪燈和「山田先輩が「改造人間に対抗するには、肉体改造しかない」って言ったんですよ?」
山田「うっ・・・それは・・・、班馬に向けて、だな・・・」
山田「そ、そうだ! オカルトマニア! お前は何故、泳がん! 不公平じゃないか!!」
三輪燈和「私は情報収集担当の裏方ですから。今もオカルトネットワークで『ZOD』の情報収集中です」
山田「お・・・俺だって、尾行や張り込み、ストーキングによる情報収集担当だ! 納得いかん!」
来明電奈「尾行や張り込みには持久力が必要だろう? 相手に気づかれた時のために逃げ足も鍛えなくてはな」
山田「ぐぅ・・・」
三輪燈和「山田先輩が一番納得いかないのは、電奈先輩の水着じゃないんですか~?」
来明電奈「これは学校指定の水着だぞ? 何の問題があるというのだ?」
山田「これはこれで、趣があって捨てがたいのですが、欲を言えば、もう少し表面積が小さなタイプも・・・」
三輪燈和「電奈先輩に対する不純な気持ち、全然、捨てきれてないみたいですねー」
山田「不純な気持ちではない! 純粋な男子高校生の欲望だ!!」
来明電奈「・・・遠泳が嫌なら、宙斗くんのようにランニングを選んでもいいんだぞ」
山田「断る! 男ばかりでランニングなど、ただの地獄だ・・・」
山田「残り7km・・・、山田、行きます!」

〇けもの道
為定京二「・・・泳ぎは苦手なのか?」
班馬宙斗「まあ・・・」
班馬宙斗(塩水に浸かると、体内の部品が錆びる恐れが・・・なんて言えないよな・・・)
為定京二「ランニングのタイムは安定してるみたいだな」
班馬宙斗「はい。少しずつですけど、自分のペースがつかめてきたみたいです」
  中途半端に改造されたことに嘆き悲しむのは、もうやめた
  大事なのは、何ができないかじゃない。
  今の自分に、何ができるか、だ
  必要以上の力を出そうとすれば、動けなくなってしまうことは、嫌というほどわかった
  だけど、体が熱くならないよう気をつければ、かなり長い距離も、走り続けられるみたいだ
為定京二「・・・頑張るのはいいことだが、水分はこまめに摂取した方がいいぞ」
班馬宙斗「はい・・・」
班馬宙斗(夏の暑い日は、特に注意が必要だ。 体温を下げるためにも水は手放せない)
  ここ何日か走り込んだことで、もう1つ、気づいたことがある
  たぶん、僕の体はいくら鍛えても意味がない
  筋肉も心肺機能も作り物だから、負荷を与えても成長しないのだ
  それでも、繰り返しトレーニングすることには意味があった
  これまで目を逸らしていた、改造された体と向き合うことで、使い方を学ぶことができた
  嗅覚や聴覚も、ある程度ではあるけど、コントロールできるようになってきた
  音楽のボリュームを上げたり下げたりするようにイメージするといいみたいだ
  ちゃんと調整できてないせいか、油断するとすぐ大音量になったり、強烈に臭ったりもするけど
為定京二「今日はこれくらいでいいんじゃないか? 急に鍛えすぎるのも良くないと聞くからな」
班馬宙斗「・・・そうですね」
  宙斗は足を止めて息を整えた。
  体内の熱を排出するのに、呼吸が非常に有効であることもこの合宿で学んだ。
為定京二「じゃあ、別荘に戻るとするか」
班馬宙斗「わざわざ付き合ってもらってすみません。先生も海でゆっくりしたかったんじゃ・・・」
為定京二「長年、研究室にこもりきりだったから、直射日光ってやつが苦手でね・・・」
班馬宙斗「はあ・・・」
班馬宙斗(こういう時、どういう話をするべきなんだろう)
班馬宙斗(っていうか、気を遣うんだよな。 先生と2人きりだと・・・)
班馬宙斗「でも、先生が合宿ついてきてくれるなんて、けっこう意外でした」
為定京二「ダメ教師だからか?」
班馬宙斗「あ、いや・・・」
為定京二「気を遣わなくていいぞ。自分が生徒たちに何と呼ばれてるかくらいは知ってる」
為定京二「為定京二・・・『ダメサダ』『ダメ教師』うまいこと考えるよな」
班馬宙斗「いや、えっと・・・」
班馬宙斗(なんてフォローすりゃいいんだ・・・)
為定京二「まあ、間違っちゃいないさ。 教師になりたくてなったわけじゃないしな」
班馬宙斗「・・・そうなんですか?」
為定京二「ああ・・・前の職場に居づらくなってな。知り合いのつてを頼っての再就職ってやつだ」
班馬宙斗「へえ」
班馬宙斗(大人もいろいろ大変なんだな・・・)
班馬宙斗「とにかく・・・ありがとうございました。 車まで出してもらって」
為定京二「いや・・・」
  為定がふと足を止めた。
班馬宙斗(何だろう、この間・・・)
為定京二「班馬・・・私の方もお前に言っておかなければならないことが──」
三輪燈和「おーーーーい!」
班馬宙斗「三輪さん、どうしたの?」
三輪燈和「お二方をお迎えに上がったんです」
三輪燈和「台風の速度が思った以上に速いみたいだから、今日中に出た方がいいんじゃないかって」
為定京二「そうなのか?」
三輪燈和「今夜の肝試しの中止は、私としても不本意ですけど背に腹は代えられません!」
三輪燈和「ここに閉じ込められてしまったら、明後日のライブに行けなくなりますから!」

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