夏を見送る帰り道

千才森は準備中

肥満怪獣ペチャクチャチャー現れる!(脚本)

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〇オフィスの廊下
  勢いよく窓口に頭を突っ込み、
  音を立ててカウンターに書類を乗せた男は、
  息を切らして言葉を吐いた。
学生「・・・はぁはぁ。 沖縄旅行でのんびりしたのはいいんスけど、 帰りのバスが渋滞で」
学生「アパートには無事に着いたんスけど、 今から願書をポストに入れたんじゃ 間に合いそうもないってんで・・・」
学生「はぁ・・・はぁ・・・」
学生「安いからって町の中心部から遠いアパート選ぶのは間違いだったっスね!  はぁはぁ・・・」
大学の事務員(・・・・・・)
学生「あ、提出書類はこれで全部っス!」
大学の事務員(入学願書は郵送で)
大学の事務員(封筒は汚れなく。 汗で濡らすなんてもってのほか)
大学の事務員(そもそも、 受付期間は長く取ってあるわけで、)
大学の事務員(ちゃんと事前に提出していれば 沖縄旅行から帰ったその足で 自転車のペダルを漕ぐ必要も無かったはず)
  受付の女性は色々言いたくなったが、
  それでもテキパキと書類を確認していった。
  例外中の例外ではあるが、
  願書の受け付けだけはしてあげよう。
  そう言ったのは上司なので、彼女に責任はない。
  そうなると、仕事は仕事である。
  必要な処理をしなければいけない。
  彼女としても、
  上司の気持ちもわからなくはなかった。
  この偏差値底辺の大学に
学生「どうしてもこの大学に入りたいんだ!」
  とスマホのバッテリーが切れるまで、
  沸騰しそうな熱量で訴え続けられたら、
  さすがに情も動くだろう。
  しまいには
  バスの運転手も、
バスの運転手「渋滞に捕まったのは彼のせいじゃないんだ!」
  と泣きながら通話口に出る始末。
  この学校に配属された当初は、
  ”偏差値で人間を決めるものじゃない!”
  と考えていた彼女も、
  最近では、
  ”偏差値で決められない人間だって、一握りはいるかもしれない”
  に宗旨替えしていた。
学生「書道やってたんで、走り書きでもなんとか読める字にはなってるハズっス!」
学生「あ、走り書きって言ってもチャリに乗って書いたわけじゃないんスよ?」
学生「帰りはチャリで3時間ぐらい掛かるかなー。 こればっかりは仕方がない」
大学の事務員「あ!!」
学生「あ、いや、大丈夫っす。 俺体力には自信あるんで。 いざとなったらネカフェにでも泊まってくっスから」
大学の事務員「あの・・・」
大学の事務員「ここに捺印がされていないのですが、 印鑑、お持ちですか?」
  提出書類が大丈夫では無かった。

〇おしゃれなリビングダイニング
  当時も今と同じように
  向かい合っていたのかもしれない。
  机の上に乗っかってるのが
  書類か根菜類かの違いで。
父「あの時は血の気が引いて ひっくり返るかと思ったなー」
父「それで荷物をひっくり返して探してたら、 それを在学生がネットにアップしちまって」
父「題名は『大学のフリマ』。 それ以来、父さんのあだ名はフリマになった訳だ」
父「母さんなんて俺が事務に行くたびに、 『あ、フリマくん』 なんて言うもんだから、 教授達にまで広まっちまって」
父「あっはっは」
  お父さんはアルコールが入ると、
  まるで怪獣が吹き上げる火炎光線のように
  話を飛ばしまくってくる。
  肥満怪獣ペチャクチャチャー。
父「それが母さんとの初めて出会った日ってんだから、世の中何が起こるかわかんないよな」
  話を振られたお母さんは、
  怪獣を倒すのが面倒になった
  スーパーヒーローの顔。
  それはそうだ、
  この話は私ですらもう何十回も聞いた。
  きっと私が産まれる前から話してるんだろう。
  でも、自分で選んだ人なんだから
  責任取って何とかして下さい。
父「お!」
  周りの雰囲気を破壊しまくって
  ご満悦のお父さんは、
  変なところで言葉を切った。
父「そう言えば結婚記念日って一昨日だったな」
母「・・・まさかと思うけど、忘れてたの?」
父「ま、まさか。 そんなはずないだろ?」
父「思い出したって言ってんだから」
  怪獣が一体増えた。
  結婚記念日は思い出しても、
  私の質問は思い出してはくれないらしい。
  私も今更思いだしてもらおうとは思わないけどさ
  『隣町の
  モモンジュ~っていう手芸用品店
  知ってる?』
  この話からどうして怪獣大戦争が始まったのだろうか。
  本当に世の中何が起こるかわかんない。
みぃ「ごちそうさまー」
  一般人は避難しなきゃ

〇女の子の一人部屋
  部屋に避難して、相棒のPCに電源を入れてあげる。
  人間なんて信用出来ない。
  
  今の時代、亀の甲も年の功も
  なんの何の役にも立たないのだ。
  いくら偉くても、
  一人で世の中は渡っていけない。
  大勢の方が強いんだ。
  代わり映えしない、いつもの部屋。
  放り投げられてベッドから落っこちそうなバッグのSOSを無視して、椅子に座って背筋を伸ばす。
  この部屋で唯一行われる運動。
  やがて相棒が
  『準備出来たぜ!』
  と電子音を鳴らす。
みぃ「おらにみんなの力を分けてくれ~」
  きつい勉強なんてしなくても、
  みんなで力を共有できる時代。
  そりゃ、怠惰な人間にもなるじゃん。
  誰が悪いわけでもない。
  そうゆう時代だったと言うだけの話。
  検索
  
  隣町の名前
  
  ”手芸店 モモンジュ~”
みぃ「Enter.」
  相棒が広大すぎる電子の海から
  答えをサルベージしてきた。
  error
  
  Not found.
  モモンジュ~は時代に乗っていなかったみたい。
  相棒の空冷ファンも心なしか落ち込んでいた。

次のエピソード:人生で一番幸せ?

コメント

  • 二人のなれそめって話したがる人いますよね。笑
    それが家族だとこうなるんだなぁって思いました。
    でも、こういう男の人って私は結構好きですよ!

  • お父さんとお母さん喧嘩するほど仲がいいなのかな。だけども、デリカシーない相手に対して怪獣になりたくなっちゃう気持ちもよくわかるなぁ。

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