第10話 恋は毒薬①(脚本)
〇山間の集落
とある山奥の隠れ里──
〇古民家の居間
長老「うむ・・・まだ光は帰らぬのか」
上忍「はい。少々心配ですので、偵察を立てようかと・・・。亨(とおる)、前に」
真坂亨「はっ。真坂亨(まさかとおる)にその任務、お任せくだ──」
???「その任務、あたしがする!」
長老「!?」
長老「い、いや、鈴音(すずね)は下がっておれ。お前は光のこととなると暴走を──」
伴丹鈴音「するったらする! 長老は黙ってて!」
長老「黙るのはおぬしじゃ! 任務は亨、任せたぞ!」
真坂亨「はっ。お任せください」
伴丹鈴音「うぬぬ~~っ!」
〇白
第10話 『恋は毒薬①』
〇空
〇通学路
嘉成光「みこちゃん、おはよう!」
高原みこ「あっ、光くんだ。おはよー!」
光がみこに笑顔を向けながら走ってきた。
嘉成光「アテナ、今日はこの前のようにはいかないからな!」
アテナ「! 危険人物検知。排除します」
高原みこ「光くんは危険人物じゃないってば!」
みこを庇うようにアテナが一歩前に出る。
右足を強く踏ん張ると、右足からパキッと何かが折れるような音が鳴った。
アテナ「!」
嘉成光「やれるものなら、やってみろ! ふっ」
アテナの手を軽やかに避けて、大きくジャンプする光。
アテナは光を追って振り返ろうとするが、ガクッと揺れて体の動きを止めた。
アテナ「ッ!」
アテナから逃れた光は、見事に宙返りを決めてみこの隣に着地した。
嘉成光「うんっ、かなり決まった」
高原みこ「すごーい、光くん! さすが忍者だね!」
嘉成光「いやいや、こんなの朝飯前だよ」
アテナ「右足が・・・」
高原みこ「アテナ、どうしたの?」
アテナ「・・・いえ、なんでもありません」
高原みこ「そう? じゃあ、皆で学校行こっか!」
嘉成光「皆で・・・」
〇教室
吉永良晴「2年A組の嘉成光くん、だね?」
嘉成光「あ、今日からE組です!」
吉永良晴「E組です! じゃないんだよ! そんなこと、いったい誰が許可して──」
嘉成光「安心してください、吉永先生。 校長先生に許可もらってます」
吉永良晴「はあ!? 校長!?」
光が教壇の名簿を開く。そこには手書きで光の名前が書かれ、メモが添えられていた。
嘉成君をヨロシク! 校長せんせいより
吉永良晴「これは、まさしく校長先生の字。 い、いつの間に・・・!」
嘉成光「と、いうわけで今日からE組になりました、嘉成光です! よろしくね!」
〇家庭科室
調理実習の時間。みこのクラスはグループに分かれて、ハヤシライスとスープを作ることになった。
アテナは鮮やかな包丁さばきで玉ねぎを刻む。
柴崎麻衣「おお! アテナちゃんすごい!」
高原みこ「光くん、スープ作りは順調―?」
嘉成光「任せてよ、みこちゃん。 里でも、こういうのよく作ってたんだ」
嘉成光「あいつには負けられないからね」
スープに緑色の植物を入れる光。すると、みるみるうちにどす黒い緑に変化した。
高原みこ「今、何入れたの!?」
嘉成光「里に伝わる秘伝の薬草だよ。 みこちゃんに元気になってもらおうと思ってさ」
高原みこ「おーすごい」
柴崎麻衣「うわ、すっごい色・・・本当に元気になるの?」
嘉成光「大丈夫。二人とも、味見してみる?」
その瞬間、光の手元をめがけてフォークが投げ放たれた。
嘉成光「はっ!」
素早く回避する光。振り向くと、フォークを構えたアテナが睨んでいる。
アテナ「御主人(マスター)、その得体のしれないものを食べることは許可しません」
嘉成光「なんでおまえの許可が必要なんだよ!」
アテナ「貴方は危険レベル3。 まだ警戒を解くレベルではないからです」
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