雄馬町の怪

平家星

#1 人面牛くだん①(脚本)

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〇田舎町の通り(看板あり)
  雄馬町。
  これと言った産業も観光地もなく、日本で一番冴えない・・・かもしれない田舎町。

〇教室
  金丸ミチオが3ヶ月前に転校してきたのは、この町にある唯一の中学校、光星中学校だった。
  物語は、ここから始まる。
金丸ミチオ「いやぁ、昨日から携帯の通知、止まんないわ~」
生徒「昨日の投稿、最高だったもんな!」
生徒「めっちゃ笑ったわ。センスありすぎ!」
金丸ミチオ(よし、今回の投稿も大成功!)
金丸ミチオ(みんな、俺に注目してる。 SNSのおかげで友達ができた)
金丸ミチオ「次の投稿も期待しててよ!」
三上ショウマ「・・・いいねぇ。人気者気取りですか」

〇田園風景
北条カナ「ししょぉ~!」
金丸ミチオ「おう! カナちゃん。今日は遅かったんだね」
北条カナ「今日はクラブだったの。 カナ、手芸クラブに入ってるんだよ」
金丸ミチオ「へぇ~、手芸か。いいじゃん」
北条カナ「ししょ~の言った通り、がんばれることを見つけようと思って」
金丸ミチオ「うんうん。楽しい?」
北条カナ「う~ん。まだ、あんまり。 ししょ~と一緒の方が楽しい」
金丸ミチオ「おいおい、俺なんてただの近所に住んでるだけの中学生だぞ」
金丸ミチオ「もっと同級生とかと──」
北条カナ「カナ、友達いないもん」
金丸ミチオ「あ~・・・その、ごめん」
北条カナ「手芸がんばったら、友達出来るかな?」
金丸ミチオ「ああ。きっとできる」
北条カナ「カナも、ししょ~みたいになりたい」
金丸ミチオ「俺みたいに?」
北条カナ「だって、みんなから人気があるもん」
金丸ミチオ「・・・とにかく、得意なもので注目されれば、自然と友達はできるはず!」
金丸ミチオ「カナちゃん、ファイトだ」
北条カナ「うん! カナ頑張る!」

〇綺麗な一戸建て

〇男の子の一人部屋
  帰宅したミチオは、携帯とパソコンを開いてインターネットにアクセスした。
  ネット上には、見知らぬ人たちが投稿した沢山のネタが転がっている。
金丸ミチオ「もっといいネタを拾わなきゃ。 これは・・・この前使ったか」
金丸ミチオ(投稿ネタをパクるなんて、許されないことだって分かってるけど・・・)
金丸ミチオ(友達がいなかったあの頃に戻りたくない・・・前の学校とは、違うんだ)
  ミチオは気に入った投稿を見つけると、文章を改変して早速自分のSNSに投稿した。

〇教室
金丸ミチオ「おっはよう!」
「・・・・・・」
金丸ミチオ「・・・? どうかした?」
三上ショウマ「よう、嘘つき」
金丸ミチオ「は? なんだよ、ショウマ・・・」
三上ショウマ「自分でもわかってるだろ?」
  ショウマはそう言って机の上にプリントを広げる。
  そこには、ミチオのSNSの投稿と、それに酷似した別の投稿が並べられていた。
金丸ミチオ「・・・!」
三上ショウマ「これ見ろよ」
三上ショウマ「お前の投稿、パクリばっかじゃん。 全部、人のマネだろ」
金丸ミチオ「なっ、何だよこれ・・・」
三上ショウマ「みんなわかった? こいつ、みんなのこと騙してやがった」
金丸ミチオ「騙してなんて・・・」
三上ショウマ「ここまで証拠が揃ってるのに、見苦しいって」
金丸ミチオ「俺は・・・俺はただ・・・」
  言葉に詰まるミチオ。
  周りのクラスメイト達は、ミチオに軽蔑の視線を送った。

〇教室
  チャイムが鳴り、昼休みになった。
  賑やかな教室の中で、ミチオに声をかける者は一人もいない。
金丸ミチオ「・・・・・・」
  ミチオは弁当を持って教室を出た。

〇教室の外
金丸ミチオ「・・・・・・」
  校舎からは生徒たちの楽し気な声が聞こえてくる。
  ミチオは誰もいない校庭の隅で、ひとり昼食をとった。
金丸ミチオ(・・・大丈夫・・・希望を持て)
金丸ミチオ(明日になったらきっとみんな元通りに・・・)

〇教室
金丸ミチオ「あ・・・おっ、おはよう・・・みんな」
「・・・・・・」
  翌日。教室に入ってきたミチオを待ち受けていたのは、昨日と同じクラスメイトたちの軽蔑の視線だった。
三上ショウマ「察しろよ。誰もお前と話したくないんだって」
金丸ミチオ「・・・・・・」
  次の日も、その次の日も変わらなかった。
  やっとの思いでできた友達なのに、離れていくのは一瞬・・・。

〇田園風景
金丸ミチオ(・・・どうせ俺なんかに、友達なんてできっこなかったんだ)
北条カナ「ししょ~!」
金丸ミチオ「・・・あぁ、カナちゃんか」
北条カナ「ししょ~のおかげで、カナ、友達ができたの!」
北条カナ「アサちゃんっていうんだけどね、同じ手芸クラブで」
金丸ミチオ「・・・良かったね。でもカナちゃん、それは俺のおかげじゃないよ」
北条カナ「え?」
金丸ミチオ「友達ができる奴とできない奴は、はじめから決まってるのかもね」
北条カナ「どうしたの? 元気ないの?」
北条カナ「・・・あのね、もうすぐ完成しそうなんだけど、ししょ~に渡したいものがあってね・・・」
金丸ミチオ「カナちゃん、俺のこと師匠って呼ぶの、やめてくれる?」
北条カナ「えっ? どうして?」
金丸ミチオ「どうしてって・・・俺が教えられることなんて、一つもないから」
北条カナ「そんなことないよ! ししょ~が・・・」
金丸ミチオ「だから、やめろって言ってるじゃん!」
  ミチオはカナを置き去りにして、足早にその場を立ち去った。

〇土手
金丸ミチオ「はぁ・・・新しい場所なら、新しい自分になれると思ったのが間違いだった」
???「おい」
  ため息をついて歩いていると、近くの防空壕の中から、かすかに声が聞こえた。
金丸ミチオ「ん? ・・・誰?」
???「・・・こっちへ来てくれ」
金丸ミチオ「な、何ですか・・・?」

〇洞窟の深部
  スマホのライトを点けて、防空壕の中に入っていく。
金丸ミチオ「だ・・・だれかいるんですか・・・? 何とか言って・・・」
???「・・・腹が減ってたまらん。まいった」
金丸ミチオ「ど、どこ?」
???「・・・こっちだ」
  ゆっくりと声がする方へ近づく。
  暗がりに向けて、ライトを照らした。
金丸ミチオ「・・・!?」
???「よう、人間」
金丸ミチオ「う、うわぁ!」
???「いつどの時代も、お前ら人間の反応は単純だな」
金丸ミチオ「お、お前が喋ってる・・・のか?」
???「何がおかしい。失礼だぞ」
金丸ミチオ「お前は・・・」
くだん「俺はくだん。もっとも、大昔、人間が勝手にそう呼び始めたんだがな」
くだん「おい人間、お前ついてないな」
金丸ミチオ「ついてない・・・!? 何の話だよ・・・」
くだん「俺は予言するために生まれてきた。 この町で起こる凶事を」
金丸ミチオ「きょうじ? なにそれ?」
くだん「この町で何か不吉な事件が起こるってことだ・・・ん? 早速・・・来た」
くだん「今から数時間後・・・この町から」
金丸ミチオ「この町から、なんだよ・・・?」
くだん「・・・誰かが消える」
金丸ミチオ「!?」

〇黒
  この小さな化け物『くだん』との出会いが、金丸ミチオのすべてを変える。
  そして、この雄馬町のすべてを・・・。

次のエピソード:#2 人面牛くだん②

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