第4話 『探偵部』(脚本)
〇学校の部室
???「反対だ! どこの馬の骨とも知れぬ男を探偵部に入れるなど!」
どこの馬の骨とも知れぬロン毛メガネに宙斗はなじられていた。
班馬宙斗「僕は、強引に電奈先輩に連れてこられただけで、まだ入部するとは・・・」
???「黙れ。お前の意見など求めていない。 俺と電奈様との会話に、勝手に踏み込むな!」
???「あはは、気にしないでくださいね。 山田先輩はこういう人なので」
三輪燈和「私、探偵部1年の三輪燈和(みわ ひより)です。以後、よろしくお願いしますね、班馬先輩」
黒髪三編みの女子が、馴れた手つきで紅茶を淹れる。
こういう状況は日常茶飯事なのだろう。
山田「よろしくお願いするな。 この男に「以後」などない!」
三輪燈和「電奈先輩が入れるって決めたんですよ。抵抗したって無駄なことくらいわかってるでしょう?」
紅茶を一口飲んでよく味わった後、電奈がようやく口を開いた。
来明電奈「・・・では、山田。 君が反対する理由を述べよ」
山田「男だからですよ! 電奈先輩目当ての入部に決まっている!」
三輪燈和「だから、電奈先輩が連れてきたんですってば」
三輪燈和「それに、そんなこといったら、山田先輩だって電奈先輩の元ストーカーじゃないですか」
班馬宙斗「えっ!?」
来明電奈「ああ。一流の諜報員にも負けぬほど、見事なストーキングだったな」
来明電奈「だから、私が探偵部にスカウトしたんだ」
班馬宙斗「ええっ!?」
班馬宙斗(自分のストーカーをスカウト・・・。 やっぱりこの人は、スケールが違う)
山田「ふっ、過去の過ちだ。 誇れるようなことじゃないさ・・・」
三輪燈和「当たり前でしょう。立派な犯罪ですよ?」
山田「今は、もうやっていないぞ。電奈様に真実の『愛』とは何か、教えてもらったからな」
〇線路沿いの道
来明電奈「『愛』とはその人の幸せを第一に考えることだ」
来明電奈「自らの欲望を満たすための身勝手な行為を『愛』とは言わぬ」
来明電奈「お前のは『愛』ではなく『執着』。 お前が『愛』しているのは、自分だけだ!」
〇学校の部室
山田「・・・電奈様にそう諭された時、俺は頭をガツンと殴られた気がしたんだ」
来明電奈「実際に殴ったがな」
山田「それ以来、俺は見返りを求めず、電奈先輩にすべてを捧げようと決めた」
山田「故に、俺に不純な気持ちは一切ない! どうだ、まいったか!」
三輪燈和「清々しいほどの、開き直りですね」
来明電奈「山田の話など、どうでもいい」
山田「はうっ!」
来明電奈「反対する理由はそれだけか?」
山田「・・・彼は中学時代、幾つもの部活動の入退部を繰り返している。どれも長くは続かなかった」
山田「高校入学後、また部活を幾つか体験したものの、結局、現在は帰宅部に落ち着いている」
山田「何をやっても中途半端。 探偵部に入っても長くは続くまい」
宙斗の胸がズキンと痛む。
山田の言う通りだった。
正義の味方になれないとわかった日から、宙斗は別の「何か」を探していた。
将来の夢を・・・。
本気で打ち込める別の「何か」を・・・。
だが、何も見つからないまま、高校2年の春を迎えた。
「何をやっても中途半端」
その後ろめたさから、やがて夢を探すこと自体をあきらめた。
三輪燈和「どこの馬の骨とも知れぬと言ったくせに、しっかり調査済みじゃないですか」
山田「当然だ」
山田「どこの馬の骨とも知れぬやつを探偵部員にするわけにはいかんからな」
山田「・・・だいたい、電奈先輩は、なぜこの男を探偵部に入れようと思ったんですか?」
山田「納得いく説明をしていただきたい!」
三輪燈和「あ、それ、私も興味あります~」
班馬宙斗(・・・それは、僕自身も気になっていた)
班馬宙斗(これまで、僕は先輩にみっともない姿しか見せていないはずだ)
班馬宙斗(なのに、どうして探偵部に勧誘されたのか・・・)
来明電奈「今日の昼休み、君は中庭にいたな?」
班馬宙斗「・・・はい」
班馬宙斗(確かに、僕は中庭から先輩を見上げてた。 まさか、気づかれていたとは・・・)
来明電奈「あの時、君は何かに気づいた」
班馬宙斗(いじめられていた生徒の悲鳴が聞こえた・・・)
来明電奈「・・・その後、しばらく葛藤してから、君はどこかへ向かったんだ」
班馬宙斗(悲鳴に耐えられなくなって、声がする校舎裏に向かった・・・)
来明電奈「私は、その時の君の様子が気になってね。 すぐに後を追ったんだ」
班馬宙斗(全部、見られていたのか・・・)
来明電奈「・・・そして、校舎裏で一方的に殴られる君を見つけた」
三輪燈和「ずいぶん展開が急ですね? 宙斗先輩は、どうして殴られてたんですか?」
来明電奈「彼は、いじめられていた生徒の身代わりを申し出たんだ」
班馬宙斗(・・・さすが探偵部部長。 それも調査済みってことか・・・)
三輪燈和「へー。やりますねぇ、宙斗先輩」
班馬宙斗「いや・・・そんな・・・」
班馬宙斗(そんなカッコいいものじゃない。 最初は見捨てるつもりだったんだ・・・)
山田「・・・それが彼を入部させる理由ですか?」
三輪燈和「何が不満なんですか? いじめられっ子を助けた、その男気を買ったってことでしょう?」
山田「俺は部長をよく知っている。 彼女は、その程度のことで勧誘などしない」
来明電奈「ああ、その通りだ」
来明電奈「私が勧誘した理由は、男子生徒をいじめから救ったことじゃない」
来明電奈「中庭から、校舎裏で行われているいじめに気づいたことだ」
班馬宙斗「・・・!」
三輪燈和「そういえば、中庭から校舎裏って、ずいぶん距離があるような・・・」
三輪燈和「もしかして、先輩って、超能力者ってやつですかー!?」
班馬宙斗「いや、そんなわけないでしょ・・・」
班馬宙斗(嘘は言ってない。僕は『改造途中人間』だ)
山田「そうだ。そんなわけあるか、オカルトマニア。ただの偶然に決まっているだろう」
来明電奈「偶然かどうかは、私にもわからない。 だが・・・」
来明電奈「君には秘めた力がある・・・と、私は思っている」
班馬宙斗(先輩の鋭い視線を感じる)
来明電奈「・・・知っての通り、 私は、理不尽な悪を見過ごせないたちだ」
宙斗は、電奈の足元でのたうち回る不良たちの姿を思い出していた。
声を荒げてはいなかったが、彼女は確かに怒っていた。
来明電奈「だが、私1人では手の届く距離、目や耳の届く範囲が狭すぎる」
来明電奈「だから、共に闘える同志を募り、育てるために、この探偵部を作ったんだ」
来明電奈「・・・班馬宙斗くん。 君のその力を、私に貸してくれないか?」
班馬宙斗「・・・・・・」
班馬宙斗(誰かに必要とされるのは、うれしいことだ)
班馬宙斗(しかも、必要としてくれるのは、あこがれの先輩。誰もがうらやむような状況といってもいい)
班馬宙斗(だけど、僕は・・・)
宙斗は後ろめたさのようなものを感じていた。
班馬宙斗「・・・すみません。 先輩の役に立てる・・・自信がなくて・・・」
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ヒーロー物をよく作られているのかな?とちょっと仮面ライダーのリスペクト作品と行ったところかも。笑(特撮好き)