第9話 暗殺者夫婦・シゲ&ウメ!③(脚本)
〇川に架かる橋の下
茂蔵と梅子は、大縄の両端を持つとニヤリと笑ってみこを見た。
若井梅子「さあさあ、アンタもおいで」
高原みこ「えっ、私も混ぜてくれるの!」
若井茂蔵「みーこーちゃん、おはいんなさい」
茂蔵たちが回す大縄跳びの中に、みこは躊躇いもなくダッシュで入った。
高原みこ「やったー! 楽しい~!」
若井梅子「そうかい? もっと楽しくしてあげようねえ」
若井茂蔵「いくぞ、ばーさん」
若井梅子「ああ! この大縄から、無事に出られると思ったら大間違いだよ!」
「悲しみのマリオネット殺法!」
茂蔵と梅子が大縄の持ち手にあるスイッチをオンにする。
高原みこ「おおお!? バリバリしてる!」
若井茂蔵「縄に引っかかったら感電するぞい! へとへとになっても跳ぶしかない姿は、さながら操り人形(マリオネット)じゃ!」
若井梅子「さあ、スピードを上げるよ!」
高原みこ「どんとこーい! ほい、ほい、ほいっと!」
若井茂蔵「みこちゃん、なかなかやるのう。じゃが!」
茂蔵はもう1本の大縄を取り出すと、持ち手の片方を梅子へ投げる。
若井梅子「2本ならどうだい!?」
高原みこ「ひゃああぁあ!?」
若井梅子「縄に触れたら、おしまいだよ!」
高原みこ「おわっ!」
バランスを崩し、倒れて地面に手をついてしまうみこ。
若井茂蔵「チャンスじゃ! 最終回転!」
しかし、みこは地面に着いた手でジャンプして縄を飛び越えた。
若井茂蔵「!?」
高原みこ「うん、わかってきた! もっとスピード上げてもいいよ!」
若井梅子「ふん、そうさせてもらうよ!」
高速回転する縄を、みこは飛び続ける。
高原みこ「そうそう! その調子!」
若井茂蔵「うおぉお! ダメじゃばーさん、これ以上回したらワシの肩はっ!」
若井梅子「泣き言を言ってんじゃないよ!」
若井茂蔵「うぬう・・・っ! ワシらのプライドをかけてッ!」
若井梅子「どうしても金が要るんだよ!」
高原みこ「あはは! もっともっと!」
若井梅子「お望み通り!」
若井茂蔵「ふぬうぅう!」
高原みこ「あはははは! おじいちゃん、おばあちゃん、頑張れ~!」
「おりゃあぁあ!」
〇川に架かる橋の下
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
高原みこ「もう終わり?」
若井茂蔵「ダ、ダメじゃ・・・もう、回せん・・・」
若井梅子「か、体が、バキバキじゃ・・・」
高原みこ「そっか・・・じゃあ、今から私がおじいちゃんとおばあちゃんを楽にしてあげるね」
みこが両手の関節をバキバキと鳴らす。
若井茂蔵「ま、まさか、ワシらを弱らせるためにわざと・・・!?」
若井梅子「はぁ、はぁ、アタシらもここで終わりか・・・!」
〇川に架かる橋の下
高原みこ「これでよしっと」
アテナ「御主人(マスター)! こんなところで何を!?」
高原みこ「え? マッサージだよ」
若井茂蔵「ほあ~お嬢ちゃん、テクニシャンじゃのう~・・・」
若井梅子「誰かを暗殺しようって気も失せちまうよ・・・」
アテナ「暗殺!?」
高原みこ「おばあちゃん、そんなことしちゃだめだよ!」
若井梅子「だけどアタシら、それ以外に金を稼ぐ方法を知らないんだよ」
若井茂蔵「金が用意できないとなると、ケンちゃんは警察に捕まってしまうかもしれんのう・・・」
高原みこ「ケンちゃんって?」
若井茂蔵「孫じゃよ。5年ぶりに、オレオレ~って電話がかかってきたんじゃ」
アテナ「・・・・・・」
高原みこ「そっかー、それは助けたいよね」
アテナ「・・・久しぶりの孫からの電話。 車の事故を起こして示談金を要求され、払わなければ逮捕されると泣いている」
若井茂蔵「!? あんた、ワシとケンちゃんとの電話、盗み聞きしとったのか!?」
アテナ「いえ、詐欺でよくある手口です。 一度、先方に確認してみては?」
若井梅子「な、なんだって!?」
〇広い公園
若井茂蔵「なにはともあれ、ケンちゃんが無事でよかったわい」
若井梅子「まさかアタシが、詐欺に引っかかりそうになるとはねえ」
若井茂蔵「いや~、アテナさんのおかげじゃわい」
若井梅子「・・・じいさん、アタシらも潮時だね」
若井茂蔵「ああ、ただの老人に戻る日が来たようじゃな」
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