超越戦記エフェクター

オカリ

第5.5話「大禅師ジャックの華麗なる朝」(脚本)

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〇立派な洋館
  時刻 06:00
  天気は快晴
  大禅師ジャック、起床

〇豪華なベッドルーム
じいや「起床時刻となりました どうぞ、お目覚めください」
大禅師ジャック「・・・」
じいや「おやおや」
じいや「空寝(そらね)の修練中でしたか 失礼いたしました」
じいや「しかし・・・ わずかに寝息が乱れましたね?」
じいや「『神は細部に宿る』と言います 目を閉じるのみでは人を騙せません」
じいや「“寝たふり”を極めるならば 寝息こそ重視すべき点で・・」
じいや「おや、もう空寝はよろしいのですか?」
じいや「──坊っちゃま」
大禅師ジャック「・・・坊っちゃまはよしてくれ」
大禅師ジャック「少し驚かせたかっただけだよ ・・すぐにバレてしまったが」
じいや「お心遣い、感謝いたします」
大禅師ジャック「いいよ、起きようか 今朝の一杯は・・・」
じいや「その前にお召し替えを致しましょう」
大禅師ジャック「『斬撃2』の8回斬りエフェクトか! 執事が使うと解釈も変わるね」
大禅師ジャック「ありがとう では・・淹れてくれるかい?」
じいや「ご用意はできております どうぞこちらに──」

〇豪華な部屋
大禅師ジャック「少し甘い・・よい香りだね 今日の豆はなんだい?」
じいや「先日、ジャック様が望まれた逸品です」
じいや「品種の名前はお飲み頂いた後に──」
大禅師ジャック「なるほど、ネタバレはなしか 面白くて良いじゃないか」
大禅師ジャック「では、頂こうか・・・」
  ツ──コクッ コクリ
大禅師ジャック「・・・・・ふむ」
大禅師ジャック「苦味控えめ、酸味はやや強めかな かなり飲みやすいね」
大禅師ジャック「文字通り『子供舌』なボクに 合っているかもしれない」
大禅師ジャック「欲を言うなら・・・ 後味が爽やかすぎる、かな」
じいや「──承知いたしました 明日はまた、違うものを」
大禅師ジャック「なに、悪くはなかったよ」
大禅師ジャック「それで、答えを教えてくれるかな?」
大禅師ジャック「ボクの予想は・・・そうだな」
大禅師ジャック「味の特徴は中南米産に近いかな? 「コロンビア」よりはクセがあった」
大禅師ジャック「じいやが逸品と言うほどだ 手に入りにくい品種だろうね」
大禅師ジャック「となると・・・うん」
大禅師ジャック「ブラジルの「マラゴジッペ」かな 浅煎りだと思うけど、どうだろう?」
じいや「慧眼、感服いたしました 焙煎方法はご明察の通りです」
大禅師ジャック「ん?つまり・・・ボクの予想 豆の種類と産地はハズレかい?」
じいや「ええ、今朝は『シベットコーヒー』を ご用意いたしました」
大禅師ジャック「シベットコーヒー・・・?」
じいや「タガログ語で「カペ アラミド」 その特徴は製法にありまして」
じいや「野生の麝香猫の腸内で発酵させた後 臭腺で独特な香りをまとわせ」
じいや「体外に排泄された豆を収集・洗浄し 十分に乾かしたもの、にございます」
じいや「麝香猫はネコよりイタチに近い 外見をしておりますが」
じいや「あえて分かりやすく申しますと・・」
じいや「──要はネコのウンコですね」
大禅師ジャック「・・・・・・ネコのウンコか」
大禅師ジャック「ジャコウネコの名前が出た時点で そんな気はしていたよ」
大禅師ジャック「てっきり「コピ ルアク」かと思ったが なるほど「カペ アラミド」・・・」
じいや「「コピ ルアク」はインドネシアです そちらもご用意できましたが・・・」
じいや「今回は希少な野生の麝香猫の ウンコを用いております」
じいや「より野趣あふれる味を お楽しみ頂けるかと」
大禅師ジャック「面白いね、ネコのウンコを 使ったコーヒー・・・」
大禅師ジャック「略して「ウンコーヒー」か うん、コレは面白い」
大禅師ジャック「しかし、飲みたいなんて言ったかな? 要望した記憶はないのだけど」
じいや「三日前になりますが──」

〇洋館の階段
  ──三日前
じいや「おかえりなさいませ、坊っちゃま」
大禅師ジャック「ん、ただいま あとでコーヒーを頼む」
じいや「かしこまりました」
じいや「──ところで、何かお悩み事ですか?」
大禅師ジャック「そんなに顔に出てたかい? いつまでも坊っちゃん呼びな訳だ」
じいや「出過ぎた真似をお許しください」
大禅師ジャック「いや、いいよ じいやに相談したかった話だしね」
じいや「喜んでお力添え致します、ジャック様」
大禅師ジャック「うん、実はね・・・ 今日学校で興味深い議題が出た」

〇おしゃれな食堂
大禅師ジャック「・・・目立ったニュースはなしか」
「ぜってーこっちだって! オマエおかしいよ!」
「いや違うだろ! だって食べ物じゃねーし!」
大禅師ジャック「──随分と騒々しいな」
大禅師ジャック「あの2人か?」
右近くん(味重視)「ぜったい味だって!」
左近くん(栄養重視)「いや食いもんかどーかだろ!」
「むぐぐぐぐぐっ・・・!」
「こーなったら エフェクトバトルで決着を・・!」
大禅師ジャック「2人とも、そこまでだ 少し落ち着きたまえ」
「大禅師くん!」
大禅師ジャック「議論は結構だが、声が大きい 感情に身を任せた激昂は見苦しいよ」
大禅師ジャック「それに校内でのエフェクトバトルは 禁止のはずだ」
大禅師ジャック「仮にもエフェクターを名乗るのなら 節度ある振る舞いを心がけるんだね」
右近くん(味重視)「け、けどよ〜大禅師くん」
左近くん(栄養重視)「だって大禅師くん、アイツが〜」
大禅師ジャック「まずは何を話し合ってたか それを聞こうか」
右近くん(味重視)「何を話してたって・・・」
右近くん(味重視)「そうだ!大禅師くんにも聞いて どっち派かで決着つけようぜ!」
左近くん(栄養重視)「それはいいや!そうしよう! 大禅師くんなら間違いないや!」
大禅師ジャック「よくわからないが・・・」
大禅師ジャック「大抵の質問には答えられるつもりだ いいだろう、ボクに任せたまえ」
大禅師ジャック「それで?何の議論をしていたんだい?」
右近くん(味重視)「えーっとね・・・ 右近が「カレー味のウンコ派」で」
左近くん(栄養重視)「左近が「ウンコ味のカレー派」だよ!」
大禅師ジャック「・・・」
大禅師ジャック「・・・聞き違いかな もう一度、言ってくれ」
「「カレー味のウンコ」か 「ウンコ味のカレー」・・・」
「食べるならどっちがいい!?」

〇洋館の階段
大禅師ジャック「──という訳だ」
大禅師ジャック「犬やウサギ・・・動物の 食糞自体はよくある光景だろう」
大禅師ジャック「必ずしもウンコを否定するつもりはない」
大禅師ジャック「しかし、しかしだよ」
大禅師ジャック「あいにく、ボクは ウンコの味に詳しくない」
大禅師ジャック「世界は広い、探せばウンコを用いた 食べ物や飲み物もありそうだが・・・」
大禅師ジャック「経験がない以上・・・ 迂闊に答えられなくてね」
大禅師ジャック「議題ごと持ち帰らせて貰った 彼らの期待には応えたいが・・・」
じいや「なるほど、委細承知いたしました」
じいや「少しばかり心当たりがございます じいやめにお任せを──」
大禅師ジャック「心当たり・・・?」
大禅師ジャック「まさか!? ウンコの味を知って──」

〇豪華な部屋
  ──現在
大禅師ジャック「なるほど、思い出したよ それで今朝のこの一杯か」
じいや「ウンコの先入観を持たれぬよう あえて品種を隠させて頂きました」
じいや「事後承諾で恐れ入りますが どうかお許しください」
大禅師ジャック「いや、知らないまま飲めて良かった ありがとう、流石はじいやだ」
じいや「もったいなきお言葉」
大禅師ジャック「しかし、そうだな ふむ・・・」
大禅師ジャック「ジャコウネコのウンコから 作るコーヒーか・・・」
大禅師ジャック「いわばこれは・・・ 「ウンコ味のコーヒー」になるのか」
大禅師ジャック「・・・いや待てよ? ウンコ内の未消化の豆を乾燥させる・・」
大禅師ジャック「つまり「コーヒー味のウンコ」とも 言えるんじゃないか?」
大禅師ジャック「あれ?混乱してきたぞ? どちらも一緒なんじゃないか?」
じいや「そのお言葉こそジャック様の 『答え』なのでしょう──」
大禅師ジャック「じいや・・・?」
じいや「人が求める美食の探求に 正解はございません」
じいや「シベットコーヒーもかつては ありえない飲み物でした」
じいや「勇気ある先駆者が見つけたのです 新たな味の可能性をウンコに求めた」
じいや「「カレー味のウンコ」 「ウンコ味のカレー」」
じいや「今はなくとも、誰かが新たな 味の可能性を見つけるかもしれない」
じいや「それはきっと、この 『コーヒーでありウンコでもある』 シベットコーヒーのような──」
大禅師ジャック「『カレーでありウンコでもある』」
大禅師ジャック「なるほど、二律背反ではないんだね」
大禅師ジャック「コーヒーとウンコが共存したように」
大禅師ジャック「「カレー味のウンコ」 「ウンコ味のカレー」」
大禅師ジャック「仮にその議題が成り立つのなら それは両者とも同一存在」
大禅師ジャック「そこに大差はない なぜならどちらを選んでも」
大禅師ジャック「──その本質は同じだからだ」
じいや「──エクセレント」
大禅師ジャック「うん、大丈夫な気がしてきたよ」
大禅師ジャック「ありがとう、じいや とても有意義な時間だった」
大禅師ジャック「・・・おかわりを頂こうか」
じいや「かしこまりました」
大禅師ジャック「ああ──良い、香りだ」

〇立派な洋館
  時刻 10:00
  大禅師ジャック、外出
大禅師ジャック「では、公園に行ってくるよ 帰りは遅くなるだろうね」
大禅師ジャック「なにせ光星くんが エフェクターに復帰する日だ」
大禅師ジャック「仁太くんに聞いた話じゃ 転校生?も誘ったらしくてね」
大禅師ジャック「ボクも楽しみで仕方がない」
じいや「かしこまりました その際はお迎えに上がります」
大禅師ジャック「ああ、よろしく」
大禅師ジャック「・・・」
じいや「おや、何かご質問ですか?」
大禅師ジャック「ああいや、コレは純粋な 興味本位だけど・・・」
大禅師ジャック「「カレー味のウンコ」と 「ウンコ味のカレー」・・・」
大禅師ジャック「じいやならどう答えるのかな、と」
じいや「ウンコ味のカレーですね」
大禅師ジャック「ええっ!?」
大禅師ジャック「即答だって!? しかも──」
大禅師ジャック「じいやは「ウンコ味のカレー」派 なのかい?さっきの言葉では──」
じいや「──坊っちゃま」
じいや「今のはあくまで一例です 大事なのは自ら考え、答えを持つこと」
じいや「右近様、左近様は坊っちゃまに ご判断を委ねられましたが──」
じいや「無理に背負い込む必要はございません 議題が議題なのですから・・・」
じいや「直感で答えてもよろしいのですよ?」
大禅師ジャック「・・・うーん」
大禅師ジャック「いや、ボクの結論は── 「どちらを選んでも本質は同じ」」
大禅師ジャック「「従ってそこに差はない」かな シベットコーヒーのようにね」
じいや「それもまた、素晴らしいお答えです」
じいや「ではジャック様 どうか道中お気をつけて」
大禅師ジャック「ああ、行ってくる」
じいや「・・・」
じいや「──どうか良き一日を」

次のエピソード:第6話(前編)「公園の激戦!現れた最凶!」

コメント

  • フルコースをまばらに食べて作品から頂こうとしてようやくメタ的な動きをするじいやに会えました。感無量です。立ち絵が同じなのでもしかして…?と思ってフルコースのキャラ紹介を見直して驚きました。
    そしてじいや、僕の答えも同じです。カレー味だろうとウンコは食べない!

  • 思わず
    うん、この香りは素晴らしい!
    と叫びたくなるようなコーヒーなのでしょうね

  • ウーン、コレは面白い🤣
    人類の抱える難問のひとつですね(笑)

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