高見何でも屋さんにようこそ!

おさかな

美桜のはなし①(脚本)

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〇シックなリビング
  ある日の高見何でも屋さん。
  まったりとお茶を飲んでいると、水蛇が不意に声を上げた。
水蛇「つかぬことを聞いても?」
美桜「ヘビさんどうしたの?」
水蛇「高見、お前に妻はいるのか?」
高見「は?」
水蛇「うむ。 美桜の父親はお前だろう? 母親はどうなっているのか気になってな」
  水蛇が言い終えないうちに、高見の顔が険しくなった。
  美桜は困った風で高見と水蛇を何度も交互に見ている。
高見「・・・」
美桜「・・・ししょー」
高見「・・・美桜の両親は、依頼の途中で幽霊に殺された。それで俺が引き取った。 それだけだ」
美桜「・・・」
水蛇「・・・そうだったか。悪いことを聞いたな。 すまないな、美桜」
美桜「んーん」
  無言のまま高見はソファから立ち上がった。
  美桜の頭をわしわし撫でて、
  そのまま自室へと歩いて行ってしまう。
  パタンと扉が閉まる音をしっかり聞いてから、美桜はぼそぼそと声を顰めた。
美桜「ねーねー、ヘビさん。 ししょーのお部屋は、ここでお話しした声聞こえちゃうかな?」
水蛇「・・・そうだな、あまり大きな声で無ければ聞こえることはないだろう」
美桜「そっか。ねぇねぇヘビさん これから言うことはししょーには内緒ね?」
水蛇「うむ、了解した」
美桜「私のパパとママはね、本当は幽霊に殺されたんじゃないの。 私は置いてどこかに行っちゃったの」
水蛇「!」
  何でもないことのように言ってのける美桜に、水蛇は絶句した。
美桜「パパもママも、私のこと叩いてばっかりだった。 ご飯も3日に一回くらいしか食べれなかったの」
美桜「それでも私はパパとママが好きだったから、ずっと一緒にいたかったけど、二人は違ったの」
美桜「ある時ね、パパの友達がししょーにお仕事でお金いっぱいはらってるのをパパが見たの」
美桜「それで、うちはびんぼうだから、ししょーに育ててもらえって、私をこのお家の外にポイって」
水蛇「・・・」
美桜「ごはん全然食べてなかったから、パパの車も追いかけれなかった。 すぐにししょーが気づいてくれて、けいさつ呼ぼうとしたんだ」
美桜「でもパパもママもけいさつはダメって言ってたから、ダメって私も言ったの」
美桜「そうしたらししょーは、けいさつじゃないけど一緒にいられるようにむずかしいてつづき?いっぱいしてくれたの」
水蛇「・・・」
  水蛇は美桜にかける言葉を持たなかった。
  美桜も特に気にした風でもなく話を続ける。
美桜「ししょーはね、パパとママの話になるといつも嘘つくの。 ポイってされるのはかなしいことだから、私がかなしくならないように」
美桜「悪いのは幽霊で、パパもママも私が大好きだったんだよって嘘ついてるの」
美桜「あの時の私はぼろぼろだったから、きっと何も分からないだろうなって思ってたんだろうな」
水蛇「・・・そうか」
美桜「パパとママと住んでたところは、どうやったら行けるか全然わからないの。 だから、あの時から一回も会ってない」
水蛇「・・・両親に会いたいと思うか?」
美桜「分かんない。 最初はさみしくて会いたくてしょうがなかったけど、今はししょーと一緒にいるのが好き」
水蛇「・・・そうか」
  やっとのことで絞り出した声に、美桜はにっと笑う。
美桜「ねねね、ヘビさん。 絶対にししょーには内緒だよ?約束だよ?」
水蛇「ふむ。それは構わないが・・・ 話してしまっても構わないのではないか?」
美桜「んとね、んとね。なんかそれはいやなの。 よく分かんないけど、私はししょーが嘘ついてくれてるままがいいの」
美桜「私が本当のこと知ってるって分かったら、きっと嘘ついてくれなくなっちゃう。 それはなんかいやなの」
水蛇「・・・そうか、無粋なことを言ったようだ。 忘れてくれ」
美桜「ん!」
  美桜はぴょんとソファから跳ね下りる。
美桜「ししょーは多分しょんぼりしてるから、ココア持ってってあげようかな。 ヘビさんもココアのむ?」
水蛇「・・・いや。気持ちだけ受け取っておこう。 二人だけで話してくるといい」
美桜「でも・・・」
水蛇「他人が入り込んではいけない領域というものがある。 お前たちと家族の話はまさにそれだ。私が立ち入るべきではない」
美桜「むー?」
水蛇「ふふ、まだ美桜には難しいか。 早く行ってやるといい。 きっと高見はしょんぼりしているだろう」
美桜「うん。 じゃあヘビさんまた後でね」
水蛇「ああ」
  ぱたぱたとキッチンへ駆けていく小さな背中を、水龍は目を細めて見送るのだった。

次のエピソード:いい女襲来!

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