23歳アイドル引退します

めぐる

卒業式(脚本)

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〇体育館の舞台
  この日は、高校の卒業式だった
マリン(・・・出たくないなぁ)
  私の通っていた高校は、都内の進学校で、有名な大学に行く人が多かった
  あっ、久しぶりー!元気だった?
マリン「久しぶりだねー!元気だよ!」
  クラス違ってから全然話さなかったもんねー。
  大学はどこ行くの?
マリン「・・・あっ、えっと、 うちのパン屋を手伝いながら、通信制の大学に行くことにしたんだ」
  嘘はついていない
  「アイドルstruggle」に出演することはまだ口外禁止だが、そもそもデビューできるかはわからない
  しばらくは、実家のパン屋で働きながら通信制の大学に行くという条件で、両親からはアイドル活動を許してもらった
  あぁ・・・そっかー。
  おうち、パン屋さんだって言ってたもんね!
  じゃあ将来は経営者?
  大変だねぇ
マリン「うん・・・」
  アイドルの世界では、一生懸命歌って踊るのが「良いこと」だった
  しかしここでは、偏差値の高い大学に行くのが「良いこと」とされている
マリン(堂々とできない。 肩身が狭い・・・)

〇空っぽの部屋
モモ「お疲れ〜 ・・・って、あれ?マリン今日自主練の予定入ってたっけ?」
ヒマ「どれどれ〜・・・ えっ!?今日卒業式って書いてあるじゃん!!」
マリン「あ、式はもう終わって・・・。 練習したくなったから、来ちゃった」
アヤメ「いーね、熱いねー!! よし、私もやる気出てきたっ」
コノハ「が、頑張りましょうっ!!」
  まだ出会って一ヶ月も経たないメンバーだが、ここは居心地が良かった
  同じ目標に向かって切磋琢磨できる「仲間」
監督「・・・」
監督「・・・あっ!! すまん、用事を思い出した!」
モモ「えっ!?」
監督「カメラはここに置いたままで行くから、油断するなよー! 20分くらいしたら戻る!」
ヒマ「はあっ!? もう、ほんと急なんだから。 みんな、練習再開しよー!」

〇空っぽの部屋
監督「悪い悪い、遅くなった! サボらずやってたかー?」
アヤメ「もちろんですよ! 今Aメロの合わせやってて・・・」
ヒマ「えっ何、ケーキ!?」
監督「マリン、卒業おめでとう!」
マリン「・・・えーっ!?」
「おめでとう!」
「おめでとー!」
マリン「うっ・・・」
監督「あ、お、おい!どーしたどーした!」
マリン「私、今日の卒業式、すごく居心地悪くて」
マリン「周りはみんな良い大学に行く子たちばっかりだから」
マリン「みんな頑張って勉強して、私はそれができなくて、ダメな人間だって言われてるみたいで」
モモ「そっかぁ・・・ でも、マリンは歌もダンスも一生懸命練習してるじゃない」
モモ「努力の形が違うだけだと思うよ」
モモ「私は芸能コースだから、勉強だけじゃなくて、歌や演技やトークや、自分の得意分野を伸ばしてる子たちもたくさんいるよ!」
モモ「もちろん勉強はできた方が良いけど、評価基準ってそれだけじゃないよ」
ヒマ「そーそー。 うちの学校は偏差値は低いけど、やっぱ運動できる人は一目置かれてるよ!」
コノハ「大丈夫です、そうやって一緒に卒業を祝える友達がいるというだけで、マリンさんは素晴らしい人です」
コノハ「私なんて・・・ブツブツ」
アヤメ「へー、ごめん私学校行ってないからよくわかんないけど、頭良い学校ってそんな感じなんだ!怖いね!」
監督(最後の方は、カットだな)

〇空っぽの部屋
コノハ「ところで、このケーキはどうやって分ければ・・・」
モモ「うーん・・・ナイフとか、ないもんねぇ」
監督「あぁ!フォークなら人数分もらってきたぞ!!」
ヒマ「もー、監督こういうの慣れてないのバレバレ!」
ヒマ「普通小さいケーキ人数分買ってくるでしょ」
監督「ははっ、すまんすまん」
アヤメ「ま、いーじゃん! みんなでかぶりつこう!!」
マリン「いただきます!!」

次のエピソード:第一関門

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