あひの風

kowaaa

読切(脚本)

あひの風

kowaaa

今すぐ読む

あひの風
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇水中
  海の中でも波の音ってするんだな・・・
  あー
  うるさい
  ゴゴゴゴゴ
  
  ゴボォ
  
  ゴボッ
  あー
  このまま人魚姫みたいに
  海の藻屑になれたらなぁ・・・

〇幻想空間
  うわっ
  何この黄色

〇海辺
七海「わっ!!」
七海「ようやく起きたぁーっ!!」
七海「死なんくて良かったわぁー!!」
亜衣「え・・・」
亜衣「ゴホッ ゲホゲホッ」
七海「あははっ めっちゃ水飲んでるんでしょー ハイハイ」
  そう言って
  見知らぬ女の子が背中を叩いてくれる
亜衣「ゲホゲホッ」
  ジャリ
亜衣「?」
  どうやら私は砂浜に横になっているようだ
  顔も身体も砂だらけだ
七海「もーほんと心配したよぉー この浜 人魚が人を呼ぶって迷信があるからさぁー」
七海「また人魚に呼ばれて あの世へ連れて行かれちゃうかと思った」
七海「でもちゃんと生きてるから 良かった!」
亜衣「え・・・ うん・・・」

〇海辺
  ザザーン
  砂浜に埋もれる
  身体が鉛のようで動く気がしない
  太陽が眩しい
亜衣「いっそ・・・ 連れてって欲しかったなぁー・・・」
七海「ん?海に?あの世に?」
亜衣「・・・」
亜衣「あの世・・・」
七海「マジか」
亜衣「うん・・・ もー生きてるのが面倒くさくて・・・」
七海「・・・」
  流石に引いたかと思って女の子の方を向く
亜衣「!!」
  その見知らぬ女の子は
  わたしの隣に並ぶように寝転がって
  こちらを見ていた
七海「じゃぁさ 死んだことにしよっか」
亜衣「へ?」
七海「うちも一緒の棺に入ってあげるっ」
亜衣「はい?」
七海「もーあなたは死んでるのでー! 口答えは禁止でーす!」
七海「上を向いたまま動いちゃいけませーん!」
  笑いながら
  女の子は訳の分からない
  死体ごっこを始めた

〇海辺
  2人
  無言で
  青い空を眺める
  ザザーン・・・
  
  ザザーン・・・
七海「好きなだけ死んでよう」
亜衣「えぇーっと・・・」
七海「うち等は死体なのでー 蟹さんが遊びに来てもー 砂が口に入っても動いちゃダメでーす」
七海「このまま砂浜に居ると どーなるか想像して?」
亜衣「このまま・・・?」
  女の子はふざけた口調で物騒な事を言う
  このまま
  ここで死んだら・・・
  風雨にさらされて
  肉が腐り
  浜辺の動物達の餌となり
  そのうち内臓も何もかも腐って
  奪われて
  骨になる
  そのまま何年も
  何十年も
  何千年だって
  白くて黄ばんだ骨のまま
  そのうち砂と同化して
  跡形もなくなる・・・
七海「好きなだけ死んでよう」
  ザザーン・・・
  波と風の音だけが私達を包む

〇海辺
  初夏のまだ少し寒い海
  日が暮れ始めるとぐっと寒くなってきた
亜衣「寒い・・・」
七海「だよねー だいぶ乾いたけど寒い・・・ トイレ行きたい」
亜衣「すいませんっ 生き返らせてください!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

コメント

  • 死体ごっこという発想がおもしろいな、と思いました。
    二人で気が済むまでやって…生き返って、その後は楽しそうでよかったです。

  • 母なる海!人間は海から生まれた。有名な学者の言葉を思い出しました。死にたいと思い海に身を沈めたが、生への起源が彼女の生きる証としているのでしょうか。

  • 昔同じような遊びしたなぁ。
    死にたいとかそういうわけではなく、ただ疲れて眠りたくてそう言う遊びに見立ててた記憶があります笑

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ