高嶺の花だったのは過去の話でしょ?

国見双葉

エピソード4 教室の端っこで(脚本)

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〇ファミリーレストランの店内
  いよいよ神秘のベールに包まれた天才作家、南雲泰雲との交渉が始まろうとしている。
  隣り合わせに座っている薫と笹川は、顔を合わせて頷き合い、姿勢を正す。
相川 薫(美容室も行ったし、南雲先生の情報は徹夜して基本的な部分は頭に叩き込んだからきっと上手くいく。うん、大丈夫。大丈夫)
  そう頭の中で唱えていないと緊張で押しつぶされそうになっている薫の瞳に、遂にある一人の男が映った。
南雲泰雲「・・・」
  小柄の瘦せ型で、一度会ったくらいでは忘れてしまうようなその地味な顔つきの男は、黙って薫の方を見つめ、しばらく立ち尽した。
  その時、薫は不思議と直感した。
  このどこにでもいるような無個性な男こそ、若き天才作家『南雲泰雲』であると。
笹川「・・・あなたが、南雲先生ですか?」
  笹川もまた、緊張しているのか若干声を震わせながら男に声を掛ける。
  すると男は、薫に視線を向けたまま、こくりと頷いた。
相川 薫(あれ?この人、どこかで・・・)
  ぱっと閃きはしないけれど、脳内に枝が引っかかったような薄い記憶。薫は頭をフル回転し、男の顔に検索をかけた。
相川 薫「電車?会社?合コン?通りすがり?それとも・・・」
  あらゆるシーンを浮かばせ映画のフィルムのように何度も切り替えていると、この間美咲と話した同窓会のところで一時停止された。
相川 薫「高校時代・・・。部活?告白された他校の生徒?それともクラスメイト・・・。 ・・・!!」
相川 薫「・・・松野くん?」
  薫が小鳥が鳴くような小さな声で呟くと、南雲は苦笑いを浮かべた。
南雲泰雲「松井です。惜しかったですね、相川さん」
相川 薫「!?」
南雲泰雲「松井大和。一応三年の時に同じクラスだったんですけど、覚えてますかね?」
相川 薫「う、うん!!覚えてる覚えてる!! ごめん、あまりにもびっくりしすぎて頭が真っ白に・・・」
  そう言いながらも、無意識に何度も何度も頭を下げている薫。完全に誤魔化しきれてない彼女の態度に、南雲は声をあげて笑った。
南雲泰雲「ははは。相変わらずですね相川さんは。僕みたいな地味な人間にも優しくて、気遣いを忘れない」
南雲泰雲「こんなところで再会できるとは思ってもみませんでしたが嬉しいです。 薫さんは僕らにとってはるか遠くに咲く高嶺の花でしたから」
  思わぬ再会に、双方違う形で浮き足だっていた。
相川 薫(み、美咲。信じられないけど、あなたの言う通りになったよ・・・)
  この偶然にしては出来過ぎた再会が、二人とあかつきの、いや、二人を取り巻く全ての環境すらも大きく変えることになるのだった。

〇教室
  結局三年間、君は一度も僕に振り向くことは無かったね。
  クラスの中でも人当たりがよく、常に周りに笑顔を振りまいていた君は他校でも評判の美少女だっけ。
  そんな美少女に、雑草のような僕はごく自然に恋をした。
  一目会えば、その日の夜はドキドキで寝られなかったし、たった一言挨拶でも話しかけて貰えれば、一週間は幸せな気分でいれた。
  けれど、告白なんてものは日陰で目立たず暮らしてきた僕にとってあまりにもレベルが高すぎて結局僕の恋は何もせずに終わった。
  教室の端っこで地味に君をずっと見つめてアピールを送っていたことなんて、気づかれてもいないだろう。
  それに、学祭のミスコンで君の名前を書いたり、君が所属していた吹奏楽のコンサートを観に行ったり
  君が図書室で借りた本を片っ端から借りたり・・・。
  って、こんなことをしたって気づかれるわけないよね。ただのストーカーだ。
  君は恐らく、僕の名前も知らないだろう。
  3年の時、同じクラスになれたは良いものの、僕は結局最後まで、君とまともに話すことが出来なかった。
  でも、それでいいんだ。
  この先きっと、君と僕は交わることがないだろう。
  だけど、この先僕は必ず大きくなって、君の事が好きだった自分を誇れるようにする。
  高嶺の花だった君と、同じ景色を見られるように僕は僕の道で高みを目指す。
  そしたらいつか、君の視線を奪うことも・・・。なんて、未練たらしいことを書き綴るのはもうやめにしよう。
  だけど、これだけは最後に言わせてほしい。
  ありがとう。3年間、君を好きでよかった。僕の初恋が、君で良かった。
  ・・・・・・・。
  そしてこれからも、君を好きでいると神に誓おう。

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