ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.28/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #20(脚本)

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〇屋上のヘリポート
  高層ビル屋上
NIGHT WATCH「・・・・・・」
NIGHT WATCH「ターゲット、発見」

〇大きいショッピングモール

〇ショッピングモールのフードコート
  僕は国産和牛ハンバーガーを食べながら、ちーちゃんに訊いた。
久常紫雲「・・・それにしても」
久常紫雲「さっきの今で、夕飯食べてる場合なの? いいのこれで?」
根須戸智是「いいの。今はすることないし」
根須戸智是「・・・でも、本当好きだねぇ。 国産和牛バーガー」
久常紫雲「ほっといて。 今日までの期間限定なんだ。これが食べ納め」
根須戸智是「そっか。今日までなんだ・・・」
根須戸智是「・・・私は、食べられないな。残念」
久常紫雲「・・・今から作戦決行すれば、間に合うかもよ?」
久常紫雲「決行する? 僕はいつでも」
根須戸智是「だから、今はすることないって言ってるでしょ」
根須戸智是「情報が足りないの。 昨日、情報不足で死にかけたの忘れた?」
久常紫雲「・・・あー。確かに・・・」
根須戸智是「特に私が監禁されてる施設“ネスト”はゼニス日本支部の地下。敵のお膝元よ」
  ちーちゃんが空中に、ゼニス本社ビルの概略図を表示させる。
  地下に巨大な地下施設があり「N.E.S.T.(ネスト)」と表示されている。
  そしてその最下層には「CHIZE(ちぜ)」と書かれた部屋が点滅していた。
久常紫雲「!」
久常紫雲「ちーちゃんの捕まってる場所、もうわかってるんだ!?」
根須戸智是「ええ。でもまだまだ情報不足」
根須戸智是「・・・絶対に失敗できない。 慎重にやらなくちゃ」
久常紫雲「僕も情報集め、手伝うよ!」
根須戸智是「今はまだAIのターン。 バステトがフル回転中よ」
根須戸智是「基礎情報を集め終わるまであと3日はかかる、かな」
久常紫雲「3日も!?」
根須戸智是「バステトから聞いたでしょ?」
根須戸智是「マシンパワーを使いすぎると、ゼニスに察知されるって」
根須戸智是「それだけは避けなくちゃ」
久常紫雲「うん・・・そうだった」
根須戸智是「あいつらネットを常に監視してるから」
根須戸智是「もしこの作戦がゼニスにばれたらそこでゲームオーバー」
根須戸智是「私、即刻処分されちゃうわね」
久常紫雲「ちょ・・・処分って・・・!」
根須戸智是「そんなつまらないミスしないから、大丈夫。 じっくり腰を据えて行きましょ」
  僕は国産和牛バーガーを見て苦笑した。
久常紫雲「つまり今僕にできることは食べて寝て、体調を万全にすることしかない、と」
根須戸智是「そういうこと」
根須戸智是「・・・それにしても、美味しそうね。 国産和牛バーガー・・・」
久常紫雲「そういえばちーちゃんって普段、なに食べてるの?」
  ちーちゃんの表情がずーんと暗くなった。
根須戸智是「カロリーバーと栄養ペーストと、サプリメント」
根須戸智是「・・・あと水。8年間、ずっと」
久常紫雲「・・・なんか、ごめん。 普通にメシテロだよね。今の状況・・・」
  ちーちゃんは見るからにテンションが低い。
根須戸智是「仕方ないよ。・・・気にしないで」
久常紫雲「いや、気にするって」
久常紫雲「・・・そうだ! デートいこう! これから!」
根須戸智是「デー・・・ト・・・?」
  やっとちーちゃんが微笑んだ。
根須戸智是「いいよ。どこ連れてってくれるの?」

〇海辺
  僕らは季節外れの海にやってきた。
  でも、なにぶん夜だ。
  少し欠けた月と星空のほかは何も見えなかった。
根須戸智是「真っ暗・・・」
久常紫雲「いやでも、海。海だよ! 見てよ、この景色。きれいじゃない?」
根須戸智是「だから、ほぼ何も見えないし・・・」
久常紫雲「や、ほ、ほら、月とか! 月の光とか! あと、月とか!」
根須戸智是「海を見せたいんじゃないの?」
久常紫雲「えっと、他にもさ、潮の香りとか!」
根須戸智是「臭いは、感じないのよね」
久常紫雲「じゃあ、ロマンティック! 季節はずれの砂浜に、ふたりっきり!」
根須戸智是「実際は私、いないけど」
久常紫雲「・・・まぁ、そうだけどさ」
  しょげる僕を見て、ちーちゃんが笑った。
根須戸智是「ごめん。ちょっと拗ねて意地悪した。 ・・・ありがと。励ましてくれて」
久常紫雲「力及ばず、だったけど」
根須戸智是「でも・・・海、か」
根須戸智是「確かに来てはみたかったのよね。 できれば、生身で」
久常紫雲「でしょ!? もうすぐ、好きな時に来れるようになるよ」
久常紫雲「そうしたら──」
根須戸智是「そのつもり」
根須戸智是「テキストと動画でしか知らない、海風とか、しょっぱい海水とか。潮の香りも」
根須戸智是「絶対、堪能してやるって思ってた」
根須戸智是「もちろん、美味しいものも山ほど食べたいって」
根須戸智是「・・・でも」
久常紫雲「ゼニスから脱出したら、来ようよ」
根須戸智是「うん」
久常紫雲「そうだ。 ちーちゃん、泳いだことないでしょ?」
久常紫雲「教えてあげるよ」
根須戸智是「それは、平気かな」
根須戸智是「水泳のデータは脳内にインストールしてあるから」
久常紫雲「脳内に、インストール・・・?」
根須戸智是「言ってなかったっけ。 私、普通の人間じゃないの」
根須戸智是「・・・なんて言うかな。 コンピューター人間なのよ」
久常紫雲「・・・どういうこと?」
根須戸智是「私の神経は特殊なマイクロマシンでできててね」
根須戸智是「それを使って、ネットにアクセスしたり、ハッキングしたりできるの」
根須戸智是「それこそ、自分の手足みたいに」
久常紫雲「それ、身体は大丈夫なの?」
根須戸智是「うん。・・・神経とマイクロマシンを入れ替える手術、地獄だったから」
根須戸智是「多少は寿命縮んだかも」
久常紫雲「! そんな!」
久常紫雲「ゼニスは本当、ロクなことしないな!」
根須戸智是「まぁでも百年は生きるつもり。 あらゆる手を尽くしてね。余裕よ」

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