ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.27/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #19(脚本)

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〇未来都市

〇殺風景な部屋
バステト「今夜の状況報告、智是の大脳内マイクロマシンネットワークに圧縮ダウンロード開始します」
  バステトが私の頭の中に埋め込まれたマイクロマシンにアクセスし、直接データを送りこんでくる。
  私は目を閉じて集中した。
根須戸智是「・・・!?」
  その内容に私は驚き、みっともなく動揺した。
バステト「・・・ダウンロード、完了」
  額に冷汗が浮かび、心臓が激しく脈打つ。
根須戸智是「・・・はぁ・・・はぁ・・・な、な・・・」
バステト「脈拍、心拍数、心理ストレス急速に上昇。 どうしましたか、智是?」
  私はただ茫然とつぶやいた。
根須戸智是「・・・なによ・・・これ・・・」

〇おしゃれな教室
  僕は教室で、うわのそらだった。
  昨晩バステトが通信を絶ってから、なんの音沙汰もないまま昼になっていた。
久常紫雲「・・・何かあったのかな」
  歩と美結が様子を見にやってきた。
辻崎美結「結局、今日もちーちゃん来なかったね。 ・・・ちゃんと連絡した?」
久常紫雲「・・・したけど、会えてない。 がんばったんだけどね」
久常紫雲「死ぬかと思った」
辻崎美結「・・・・・・」
辻崎美結「そっか。ちょっと時間かかるかもね」
御子柴歩「メッセージは送ったんでしょ?」
久常紫雲「気づいてるとは、思うけど・・・」
辻崎美結「元気出して。ちーちゃんがしゅーちゃんを嫌いになるわけないもの」
御子柴歩「美結がそう言うなら、まぁそうなんだろうけど・・・俺もそう願ってるよ」
久常紫雲「ありがとう。・・・僕、もう帰るよ」
辻崎美結「ばいばい。私は委員会の頼まれ仕事」
辻崎美結「歩君、手伝ってくれたりする? 女の子たち、喜ぶよー?」
御子柴歩「ごめん。俺はいつものバイト」
辻崎美結「また? いい加減、なにやってるのか教えてくれてもいいのに」
御子柴歩「そのうちな。それじゃ」
辻崎美結「はいはい。また明日」

〇屋上の隅
  そして僕は今日も、ナイトウォッチになる準備をしていた。
久常紫雲「さて、日暮れまでもうすぐ」
  ちーちゃんの行動計画書を表示して確認する。
久常紫雲「今夜は郊外の自動工場、と。 昨日よりは安全かな・・・いや、弱気になるな」
  僕は夕空にそびえるゼニスのビルを見た。
  ・・・あの地下に、ちーちゃんがいる。
久常紫雲「ちーちゃんを、助けるんだろ。 ・・・行くぞ・・・!」
???「・・・まだ、懲りてないのね」
久常紫雲「!」
  僕の目の前に、入院したときに着るような服を着たちーちゃんがいた。
根須戸智是「昨日も、死にそうになったのに」
久常紫雲「・・・ちーちゃん!?」
根須戸智是「・・・・・・」
久常紫雲「ちーちゃん・・・その・・・僕」
根須戸智是「改めて、お別れを言いに来たの」
久常紫雲「・・・お別れ・・・」
  ちーちゃんは酷薄な笑みを浮かべた。
根須戸智是「・・・用済みなのよ。あとは一人でやるわ。 そしてもう二度と、あなたの前には現れない」
久常紫雲「・・・ちょっと・・・」
根須戸智是「あとナイトウォッチの活動もやめて。 邪魔よ。何もしないで。いいわね?」
久常紫雲「・・・待って・・・」
根須戸智是「それじゃ、今度こそ本当にさような──」
久常紫雲「ちょっと待って!」
  僕は、がばっと頭を下げた。
根須戸智是「なに・・・」
久常紫雲「ごめん! ちーちゃん! 謝ってどうにかなるとは、思ってない!」
久常紫雲「でもごめんなさい!」
久常紫雲「僕のせいで、君を・・・8年間も苦しめて、本当にごめんなさい!」
  僕は涙目で、ちーちゃんを見た。
久常紫雲「僕はもう、絶対君を裏切らない。 だからお願い。君の力にならせて!」
  ちーちゃんは一瞬驚いた表情をした。
  しかし、元の冷たい目で僕を見る。
根須戸智是「・・・絶対とか、あるわけない。 信用できないわ」
久常紫雲「許してほしいとは、言わない。 利用するだけでいい。僕を手足として・・・」
根須戸智是「ダメよ」
久常紫雲「どうして!」
  ちーちゃんが視線をそらした。
根須戸智是「・・・ダメなものは、だめ」
久常紫雲「なんで! 君に損はないはずだよ! そうでしょ?」
根須戸智是「・・・そういう問題じゃ、ない」
久常紫雲「それに、君を助けるためには、誰かがネストに侵入しなきゃいけないよね?」
根須戸智是「・・・それは・・・」
久常紫雲「僕ならできる!」
根須戸智是「・・・でも」
久常紫雲「なんなら囮にしたり、追っ手を足止めしたり」
久常紫雲「使い捨てでもいい!」
根須戸智是「・・・! 絶対・・・だめ」
  ちーちゃんが視線を伏せた。
久常紫雲「どうしてさ! 君が助かるなら、僕が死んでだって何も問題ないだろ!」
  突然、ちーちゃんが僕をを睨みつけた。
  目の端には、涙が浮かんでいる。
久常紫雲「・・・ちーちゃん・・・?」
  ちーちゃんは、ぼろぼろと泣きだした。
根須戸智是「使い捨てとか・・・死ぬとか・・・言わないで・・・そんなの、絶対だめ!」
久常紫雲「え・・・」
根須戸智是「死んじゃうのはだめ! 絶対、だめなの!」
久常紫雲「・・・なんで・・・」
根須戸智是「確かにあのときは憎いと思った! いっそ殺してやろうかって!」
久常紫雲「・・・!」
根須戸智是「でもちがうって気がついたの」
根須戸智是「・・・昨日しゅーちゃん、自決システムを使おうとしたよね」
根須戸智是「すごく、動揺した」
  ちーちゃんがずいっと僕に迫った。
根須戸智是「わかる? 心臓止まるかと思った!」
久常紫雲「ご、ごめん・・・」
  ちーちゃんが泣きながら、僕を睨んだ。

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