〇学食
佑弦「──あぁ、あれ 本当か分からないらしいね？」
佑弦「・・・うん、俺も今日調べて初めて知った」
佑弦「まぁ、嘘でも何でも 良い和訳だと思いますけどねー？俺は」
佑弦「あ、でも、もう一つ有名な・・・」
佑弦「そう！『死んでもいいわ』ってやつ、あれは本当」
佑弦「まぁ、厳密には少し違うらしいけど・・・」
佑弦「んー・・・確か、『愛してる』じゃなくて」
佑弦「似たような意味の文を、そう訳したんだったかなぁ」

〇学食
佑弦「──うん、俺の分はもう終了 あとで確認してみて？」
佑弦「それにしても、課題提出の前日まで ２人共忘れてるなんてなぁ」
佑弦「まだ大学開いてて助かったー」
佑弦「・・・確かに 人が全然居ない学食って新鮮だね？」
佑弦「こんなに遅くまで残ること、あまりないからなぁ・・・」
佑弦「そう言えば、こんな時間まで平気なの？」
佑弦「門限は──流石にない？そうなんだ？」
佑弦「でも、遅い時間だと危ないでしょ？ 女の子なんだし」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「帰りはちゃんと送って行きますよ」
佑弦「だから焦らずレポート書いてくださいねー」

〇学食
佑弦「んー？何で謝るの？」
佑弦「・・・良いのいいの、２人１組の課題なんだし」
佑弦「退屈じゃないよー、全然 俺はむしろ楽しいですよ？」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「だから・・・俺が好きで一緒に居るんだけど」
佑弦「・・・だめ？」
佑弦「・・・よーし」
佑弦「じゃあ引き続き、君が終わるまで待ってますかねー」

〇学食
佑弦「はい、これどーぞ」
佑弦「え？おごりですよーもちろん」
佑弦「頑張ってるご褒美！」
佑弦「ついでにちょっと休憩したら？」
佑弦「ね、そうしよう」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「んー？なあに？」
佑弦「あぁ、それね、多分俺の香水じゃない？」
佑弦「珍しいけど良い香りでしょ」
佑弦「・・・今日、鞄に入れてたかなぁ、えーっと」
佑弦「ほら見て、パッケージも良い感じ」
佑弦「満月の香りなんだってさ、お洒落だよね？」
佑弦「・・・だろー？もっとかいでみます？」
佑弦「遠慮しなくて良いぞー？」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「じゃあ、こうしよう」
佑弦「ちょっと手、出してみて？」
佑弦「よーし、捕まえた！」
佑弦「あ、こら！動かない」
佑弦「──────」
佑弦「──はい、完了」
佑弦「気に入ってる香りだから、おすそ分け」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「・・・なんだなんだー？照れてんのかー？」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「──────」
佑弦「──仕方ない、そろそろ解放してあげますかね」

〇学食
佑弦「・・・・・・」
佑弦「まだ赤いねー、顔」
佑弦「・・・えー？大丈夫だよ、可愛いから」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「何で夏目漱石のレポート書いたか？」
佑弦「話変えるの無理やりだなぁ」
佑弦「うん、まぁでもそれはね、俺が家で猫飼ってるから」
佑弦「・・・あはは！意味分かんない？」
佑弦「うん、まぁ、どうでもいい話だから──」
佑弦「お、写真見たい？やったね」
佑弦「・・・当たり前だろー？ 猫好きはいつでもウチの子可愛い自慢したいんですよ」
佑弦「よーし、とっておきの写真を見せてやろう」
佑弦「あー・・・じゃあ、これ」
佑弦「ほらほら可愛いだろー？」
佑弦「猫のくせに凄い懐っこくてさ、ずっと抱っこしてないと家中ついて来て・・・」
佑弦「・・・なんだー？にやにやして」
佑弦「そんな反応してると、また捕まえますよー？」

〇学食
佑弦「・・・ただいまー」
佑弦「ごめんね、電話長引いちゃって レポートは───」
佑弦（・・・寝ちゃったのか）
佑弦「ほら、こんなとこで寝たら体痛くなるぞー」
佑弦「・・・・・・」
佑弦「おーい」
佑弦「・・・・・・」
佑弦（・・・仕方ない、少し寝かせてあげますかね）
佑弦（──まったく、本当に）
佑弦（無防備だよなぁ・・・ 警戒心とか無いのかねーこの子は）
佑弦（本当、目が離せないよなぁ）
　　冗談めいた言葉なら、いつも容易く出て来るのに。
　　大事な気持ちは、いつまで経っても言葉に出来ない。

〇空
　　おすそ分けした満月の香りが
　　不意にふわりと香り、窓から夜空を覗った。
佑弦（今日は曇りか・・・）
佑弦（・・・・・・）
佑弦「今日も月が綺麗ですね」