ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.25/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #17(脚本)

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〇刑務所
  ゼニスの基地に侵入しようとした僕の目の前に、突然バステトが現れた。
ナイトウォッチ「バステト!?」
バステト「紫雲。お手伝いします」
ナイトウォッチ「・・・いいの? ちーちゃんは知ってるの?」
バステト「智是は知りません。 彼女は今、眠っています」
バステト「あのあとからずっと──」
ナイトウォッチ「え。そろそろ丸一日だよ・・・? 大丈夫? 病気とかじゃ」
バステト「バイタルは正常の範囲です。 今までの疲れが出たのでしょう」
バステト「緊張の糸が切れた、と形容される状態のようです」
ナイトウォッチ「なら、よかった」
バステト「そして、計画の遂行を中止しろ、との命令は受けておりません」
ナイトウォッチ「・・・あとで怒られるかもしれないよ? 彼女が君のご主人でしょ?」
バステト「私の所有者は、智是と紫雲です」
ナイトウォッチ「そうだったっけ?」
  バステトの前にウィンドウが開き、地下室での映像が再生された。
  バステトよ。私たちのサポートAI。
  ・・・バステト、ご挨拶して
  ウィンドウが閉じる。
ナイトウォッチ「私たちのサポートAI、ってそういう意味・・・」
バステト「私の役割は、所有者の要望を最大限支援することです」
バステト「智是にかわって紫雲をサポートすることも想定されています」
ナイトウォッチ「・・・なら、早速頼むよ」
バステト「了解。私兵たちのヘルメットと監視カメラ、各種センサーをハッキング・・・」
バステト「完了。彼らの視覚とセンサーからナイトウォッチをリアルタイムで削除します」
ナイトウォッチ「つまり今から僕はゼニスの連中には見えない透明人間ってことか」
  同時に、僕の身体が半透明になった。
  AR端末が僕に見せている「あなたは今透明ですよ」という演出だ。
ナイトウォッチ「・・・いいね」

〇近未来の廊下
バステト「メインフレームコンピュータルームは、このすぐ先です」
  僕はメモリスティックを準備した。
ナイトウォッチ「順調だね。 あとはこいつに情報を落として、帰るだけ」
  正面からゼニス兵たちが歩いてきた。
  僕はとっさに壁に張りついた。
ナイトウォッチ「やばっ」
  ゼニス兵たちは、僕の前で立ち止まった。
ゼニス兵「そうだ。 昨夜のナイトウォッチ狩り、どうなった?」
ゼニス兵「追いつめたって」
ゼニス兵「・・・結局逃がしたらしい」
ゼニス兵「数十人、病院送りだって?」
ゼニス兵「でも手傷は負わせた。昨日の今日だ。 しばらく現れないだろう」
ナイトウォッチ「・・・・・・」
ゼニス兵「なにせこの厳戒態勢だ」
ゼニス兵「もし現れたら今度こそ始末 ・・・ ・・・おっと」
  ゼニス兵のヘルメットが通知音を発した。
ゼニス兵「セキュリティシステムの切り替え時間だ。 手動なのが面倒くさいな」
  ゼニス兵たちがヘルメットに手をやる。
ゼニス兵「仕方ない。ハッキング対策だ」
  僕は小声でバステトに訊いた。
ナイトウォッチ「手動? ハッキング対策? 嫌な予感。 ・・・対策してる?」
バステト「いいえ。想定外です」
ナイトウィッチ「え。それって」
ゼニス兵「行くぞ。 3・2・1 ・・・ ・・・切り替え」
  ヘルメットが通知音を発する。
  同時に、僕の姿が半透明から普通に戻った。
  ・・・まずい。
ゼニス兵「よし。見回りを続け・・・」
  ゼニス兵たちが、壁にへばりついている僕を発見して固まった。
ナイトウォッチ「やっぱり、見えてる?」
  ゼニス兵たちは僕に銃を向けた。
「フリーーーーズッ!!」
  同時に照明が赤く明滅して、けたたましく警報が鳴りだした。
ナイトウォッチ「ちっ!」
  僕はバチバチと電光を発する拳で、ゼニスたちを気絶させる。
  しかし警報は鳴りやまない。
ナイトウォッチ「すぐ脱出しないと・・・!」
  直後通路の奥から、無数のゼニス兵たちが押し寄せてきた。
バステト「反対側の通路からも敵影接近中。 囲まれます。ハッキング間に合いません」
バステト「敵影合計30。さらに増加中。 生存・生還確率、ほぼ0%」
バステト「対応策・・・ありません」
  殺せ! 奴には射殺命令が出ている
  ゼニス兵たちが一斉に発砲した。
  何発か身体にかすったが、素早く柱の陰に隠れる。
  しかし、このままでは身動きがとれない。
ナイトウォッチ「・・・まだ! 奥の手が!」
  EMP手榴弾を取り出す。
  しかし、弾丸が当たって破壊されていた。
ナイトウォッチ「あ。あぁ、そんな・・・」
バステト「このスーツの防弾機能ではあの弾幕を突破できません」
バステト「増援到着まであと1分ほどです。 紫雲、遺言はありますか?」
ナイトウォッチ「う、嘘でしょ ・・・ ・・・。 こんなにあっさりジ・エンド?」
ナイトウォッチ「そうか、そういうものかもね ・・・、ははは ・・・」
バステト「紫雲。情報漏洩防止と苦痛緩和のため、自決システムの起動を提案します」
ナイトウォッチ「・・・自決システム?」
バステト「電流で脳を、神経伝達速度以上の速さで破壊します」
バステト「苦痛はありません。 体組織も破壊するので、証拠も残りません」
  僕は天を仰いだ。
ナイトウォッチ「悪い夢、じゃないよね・・・」
バステト「現実です。決断してください」
ナイトウォッチ「でも・・・」
バステト「ここで貴方の身元がゼニスに露見すると、友人や家族に害が及びます」
バステト「智是の計画も感づかれてしまうでしょう」
ナイトウォッチ「・・・ここで身元不明の黒コゲ死体になれば、そうはならない?」
バステト「保証します」
ナイトウォッチ「そう、なのか・・・」
バステト「時間がありません。決断を」
ナイトウォッチ「・・・・・・」

〇黒
  一瞬、ちーちゃんが最後に見せた寂しそうな微笑が浮かんだ。
根須戸智是「・・・さようなら」

〇近未来の廊下

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