読切(脚本)
〇体育館の裏
2月14日、バレンタインデー
高津「誰にも呼び出されてないのに体育館裏に来てみたけど、やっぱり誰もいないな」
高津「青春を甘く見ていた」
やよい(高津くん・・・・・・)
やよい(言うんだ、今日こそ私のキモチ。そしてチョコを──)
高津「誰だ!?」
高津「同じクラスのやよいちゃんじゃないか」
やよい「チ・・・・・・」
高津「チ?」
やよい「・・・力が欲しいか?」
高津「チカラ!? 力はあんまり要らない。今はチョコとか彼女が欲しい」
やよい「そっか・・・・・・」
やよい(私のバカ、いくじなし!! 好きなのはイチジクより梨!!)
やよいはその場を立ち去った
高津「なんだったんだ」
先生「あ、高津くんじゃない。ちょうど良いとこにいてくれたわ」
高津「えっ!?」
先生「悪いけどあそこにある荷物、全部資料室まで運んでおいてくれる?」
高津「もしかしてあれは全部僕へのチョコですか?」
先生「いえ、資料室に運ぶ備品よ」
先生「それじゃ、よろしくね」
〇学校の廊下
高津は仕方なく荷物を運んでいた
高津「重い。なんてものを持たせるんだ!! 俺をボブ・サップと間違えてるんじゃないのか!?」
高津「しかしここで諦めたらどうなる?」
〇ホストクラブのVIPルーム
先生「こんなのも持てないの? だからモテないのよ。オーッホッホ(注:妄想)」
〇学校の廊下
高津「ウウッ、悔しい・・・・・・」
高津「俺にもっと力があれば──」
高津「力が、力が欲しい・・・!!」
やよい「あの──」
高津「やよいちゃん。よかった、探してたんだ!!」
やよい「わたしを、探してた──?」
〇地球
広い宇宙。その片隅にある太陽系第3惑星、地球。
人口77億人以上といわれるこの星で、高津はひとりの女子高校生、春野やよいを探していたのだ・・・・・・
〇可愛い結婚式場
高津「やっと見つけたマイ・プリンセス。ときめく笑顔はプライスレス──」
〇学校の廊下
高津「やよいちゃん。俺やっぱり、力が欲しいんだ」
やよい(ハッ!?)
やよい「ちょ。チョコじゃなくて、力が!?」
高津「そうだ、今の俺は力を欲している!!」
やよい「ダメ」
高津「ダメなのかよ!!」
高津「なぜ。さっき断ったから?」
やよい「自惚れないで。力を授けることはできる。でも条件がある」
高津「どんな条件なんだ!?」
やよい「帰り際に机の中をよく見ておくこと。そこにチカラ──ェート×◎Ξ△がある」
高津「力への扉が、俺の机の中に? 大量のポイントカードが詰まった俺の机の中に?」
高津「あれ、やよいちゃんがまたいなくなった」
高津「まあいいか。この用事が終わったら机の中を見てから帰ろう」
〇教室
高津「よし、やり遂げたぞ。 もうそこまで力は欲してないけど、一応机の中を見てから帰るか」
高津「こ、これは──」
高津「力じゃない、チョコだ!!」
高津「いったい誰が、まさかやよいちゃんが──?」
教頭「臭う、臭うぞ。青春の嫌なニオイがする」
高津「うわあぁぁ!!」
教頭「ムム、やはりチョコレート。校内でのお菓子の譲渡は禁止だとあれほど注意しておいたはず・・・・・・」
教頭「そのチョコは没収とする──!!」
教頭は高津からチョコを奪い取った
高津「ああっ、ご慈悲を!!」
教頭は抵抗する高津の手を振り払い、不気味な笑みを浮かべながら教室を出ようとする
高津「返すだ。それはオラの、オラがもらったチョコだべ!!」
追いすがる高津
教頭「グヒヒ・・・やかましいっ」
高津「あぁん」
教頭のディフェンスを破れず、力なく崩れ落ちる高津
教頭「どうしたその程度か?」
教頭「ならばこのチョコはもらっておく。グハハハ・・・・・・」
高津「クソッ、クソッ。 俺が無力なばかりに──」
ドクン──
〇裁きの門
声が聞こえる
目覚めよ、高津。立ち上がるのだ──
高津「ち、力が、力がみなぎってくる」
人々が高津を称え、愛を叫ぶ声が響き渡る
TA・KA・TSU!! TA・KA・TSU!!
〇学校の廊下
教頭「~♪」
やよい(学校内に強い力を感じたから戻って来たけれど)
やよい(なんで高津くんにあげた(机の中に入れた)はずのチョコを教頭が持ってるの?)
教頭「グヒヒ、生徒から没収したチョコの味は格別だからな。あとでじっくり食すとしよう」
やよい「なんだとあの野郎」
ちょっと待ちな!!
「!?」
高津DX「俺はまだ負けていない!!」
やよい(誰!?)
教頭「な、なんだお前。ここは学校だぞ!?」
高津DX「そのチョコは俺のものだ。返してもらおう」
教頭「まさか、高津なのか──?」
高津DX「違う。もはや俺は高津ではない」
高津DX「高津DXだ!!」
やよい「えぇー・・・・・・」
教頭「ククク、ついに力に目覚めたか。 “愛の戦士”高津よ・・・」
やよい「なんか教頭には話通じてるし」
教頭「ならばこちらも誠意をもって迎え撃たねばなるまい」
教頭の姿がみるみる変貌していく
教頭グレート「ウゴッ、ゴエッ、ゴエエエェ」
教頭グレート「ぐふふ、待たせたな」
やよい「教頭グロッ」
高津DX「お前が変身している間にチョコは返してもらった」
教頭グレート「あ!?」
教頭グレート「生意気な~、これでも喰らえ」
高津DX「グワァクッサー」
やよい「高津くん!?」
やよい「よくも高津くんを・・・!!」
高津DX「やよいちゃん、ここは危険だ。逃げるんだ!!」
教頭グレート「グハハ・・・」
やよい「高津くん見せてあげる、力とは何かを──」
教頭の魔の手がやよいに迫ったその時──
教頭グレート「グハッ、強い・・・・・・」
教頭、ダウン。そのまま起き上がれずやよいの1ラウンドKO勝。
高津DX「なんて速く的確な連撃なんだ。彼女はこんな力を秘めていたのか」
やよい「高津くん、まだまだね」
〇学校脇の道
高津「折角くれたチョコなのに、対教頭戦で粉々になった挙句、毒霧を浴びてしまった」
高津「もはや食品としての体を成していないよ」
やよい「いいの。高津くんが無事だったし──」
高津「しかし今回の戦いでは、もっと力が欲しいと痛感したよ」
やよい「あっ。じゃあ、明日から一緒に登下校しようよ!!」
高津「それで力が得られるだろうか?」
やよい「きっと大丈夫よ。愛の戦士なんだから」
(「愛の戦士」って何だ?)
Fin.
狂っているのに読みやすいw
変身が戻っているのにも一切触れない事とか、前しか向かない勢いに痛快さを感じました。
すみません、濃い内容ではないのに!それぞれの登場人物が放つ言葉がおもしろすぎて笑ってしまいました。とにかく、高津君がやよいちゃんに好意もたれたのは確実で、嬉しいフィナーレでした。
セリフとかすごくおもしろかったです!
こういった勢いのあるギャグって好きです。
チョコは粉砕されてしまいましたが、彼女がいれば大丈夫ですね!