落椿

ウツボ丸

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〇川に架かる橋
北海 ぼたん「お、おはようございます」
南原 柘榴「・・・ああ」
北海 ぼたん「あの、今日もすいません・・・・・・」
南原 柘榴「・・・チッ。 謝るんじゃねぇよ。ほら、行くぞ」
北海 ぼたん「あ、はい、すいま・・・お願いします」
  小さいときから普通の人には見えないものが見えた。
  どうやら私は、そういうものを惹き寄せる体質らしい。
  子供のころはいい遊び相手になってくれた彼らは、いつからか私や周囲の人に悪さをするようになった。
  高校に上がるころには彼らの“悪さ”は私と私に関わる人間への“危害”に変わってしまった。
  そんな私を助けてくれたのは、幼馴染の“南原 柘榴”だった。
  柘榴さん曰く、彼の家は普通の人には見えない“よくないもの”を祓う家系だったらしい。
  私のせいでその力を無理やり覚醒させられた彼はそれ以来、私の守り人としていつもそばにいてくれている。
北海 ぼたん「あ、あの・・・柘榴さん」
南原 柘榴「あ?なんだ」
北海 ぼたん「・・・私の護衛。もう、しなくていいです」
南原 柘榴「・・・お前が一人でいれば、あいつらの格好の餌食だろうが。そうなったら周りにも迷惑がかかる」
北海 ぼたん「・・・はい、ごめんなさい」
南原 柘榴「・・・チッ。 謝るんじゃねぇよ。これは俺の仕事だ」
北海 ぼたん「す・・・ありがとう、ございます」
  彼にはあまり迷惑をかけたくない。
  でも、少しだけ、今の関係が続いてほしいとも思ってしまう。
  幼馴染で初恋の人。
  今も続いている片思い。
  柘榴さんに守られていることに嬉しさを感じてしまう自分に嫌気がさす。

〇川に架かる橋
???「“オマエ、ジブン、キライ?”」
北海 ぼたん「「・・・んっ!?」
  いきなり声を発せなくなる。
???「“キライ、ナラ、チョウダイ?”」
  体が動かなくなる。寒気で体が震えだす。
???「“アノヒトニ、・・・振り向いてほしいでしょう?”」
  声が鮮明になる。それと同時に意識が離れていく。抗わなきゃいけないのに、渡しちゃいけないのに。
  ・・・そのささやきを振り払えない。
南原 柘榴「チッ。 ・・・俺の目の前でとは、いい度胸してるじゃねぇか。あぁ!?」
  柘榴さんが力強く私を抱き寄せると、黒い影のようなものが背中から離れた。
???「“あーあ、せっかく一緒になれそうだったのに・・・仕方ない。 君も一緒に、一つになろう?”」
南原 柘榴「・・・お前らなんぞにこいつを渡すわけねぇだろ!『焼滅術式:狐火』!」
  柘榴さんの手から火の玉が投げられる。
  それが当たったと同時に、影は炎に包まれた。
???「“あぁぁああぁあぁあぁあ!”」
  断末魔を発して燃え盛りながら、こちらに近づいてくる影。
???「“ゆるサナい!ユルサナイ!おまエ・・・だけデモ!”」
  影の手が鋭くとがると、目にもとまらぬ速さでこちらに伸びてきた。
南原 柘榴「くそッ!」
  柘榴さんが体を回し、影から私をかばう。
  ドスッ!
  鈍い衝撃を柘榴さんの背中から感じるとともに、影の声が薄れていく。
???「“ぁアァ・・・“」
  ・・・声が消えても、柘榴さんは私を離さなかった。
北海 ぼたん「あの・・・柘榴さん。もう、大丈夫ですから。 ・・・柘榴さん?」
南原 柘榴「・・・すまん」
  小さくそう一言つぶやくと、柘榴さんは膝から崩れ落ちた。

〇綺麗な病室
  ・・・柘榴さんは救急車で病院に搬送された。
  何とか一命はとりとめたものの、意識はまだ戻らない。
北海 ぼたん「・・・ごめんなさい」
  私は、いつもみんなを傷つける。
  私は、ここにはいないほうが良い。
南原 柘榴「・・・だから、お前が謝る必要ないって言ってんだろ」
北海 ぼたん「柘榴さん!?」
  顔を上げると、柘榴さんが目を覚まして、こちらを見つめていた。
北海 ぼたん「ごめんなさい・・・私のせいで、いつもいつも柘榴さんに怪我をさせて・・・ごめんなさい。ごめんなさい!」
南原 柘榴「・・・この傷は、俺の力が足りないせいだ。お前が謝る必要はない」
北海 ぼたん「でも・・・私さえいなければ、柘榴さんが傷つくことも危険にさらされることもなかったじゃないですか!」
北海 ぼたん「だから・・・もう、いいんです。私に構わないでください」
北海 ぼたん「・・・さようなら」
南原 柘榴「・・・待て!」
  立ち上がった私の手を、柘榴さんがつかむ。
南原 柘榴「・・・お前、俺がなんでお前を守ってきたのか、わかってねぇだろ」
北海 ぼたん「・・・え?」
南原 柘榴「・・・チッ。 まぁ俺も言ってねぇからお互い様か」
南原 柘榴「・・・俺はな、俺以外のやつにお前を守らせたくねぇんだよ」
南原 柘榴「・・・あぁ!もう、まどろっこしい!俺は!お前が!好きなんだよ!」
南原 柘榴「好きなやつが別の人間に守られてるとか我慢ならねぇんだ!!」
北海 ぼたん「え・・・えぇ!?」
南原 柘榴「・・・はぁ。 他に好きなやつがいるなら正直に言ってくれ。そん時はあきらめる」
南原 柘榴「けどな、お前を守るのは俺だけだ。 ・・・俺だけにしてくれ」
北海 ぼたん「・・・あの、えっと・・・・・・」
南原 柘榴「まぁ、こんなこと言われちゃ気まずいよな」
南原 柘榴「良いよ。お前の護衛も別のやつに頼んでおくから」
北海 ぼたん「いや!違うんです!・・・えと、私も同じ・・・ですから」
南原 柘榴「・・・は?」
北海 ぼたん「私も、柘榴さんに守ってもらえて、ちょっとだけ・・・というか、すごく嬉しかったので」
北海 ぼたん「むしろ柘榴さん以外は嫌というか、守ってくれる柘榴さんすごくかっこよくて好きというか・・・」
北海 ぼたん「だから、その・・・これからも、よろしくお願いします!」
  一気に言葉を投げつけると、私は病室を飛び出した。嬉しさと恥ずかしさで火が出たみたいに体が熱い。
  ・・・明日から、どんな顔して会えばいいんだろうか。
南原 柘榴「・・・チッ。 別に悩む必要なかったじゃねぇか」

コメント

  • 南原さんの荒っぽい性格が好きです!あと、互いが互いの事をとても大切に思っているんだな、と二人の言葉の端々から伝わってきました!素敵な作品ありがとうございます!

  • お互い好きなのに言い出せない、幼馴染みだからこそのすれ違いって切ないですね😢ヒロインも彼も少しの独占欲が垣間見れて、可愛いかったです。
    やっぱり好きな人に守られたいですね!二人が素直に想いを告げられて良かったです😊

  • 遠慮がちな彼女と言葉が勇ましい彼が、最後は愛情宣言で終わったところでなんだかスッキリしました。守られる立場と守る立場のストーリーは定番です。

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