第一話 社畜女子、悪役令嬢に転生する(脚本)
〇モヤモヤ
「来ないで!!!」
「貴様、──だな?」
「その首、頂戴する──」
──どうして、こんなことになったの?
こんなバッドエンディングなんて、あり得ない──
ここは、
──乙女ゲームの世界じゃないの?
〇時計
〇路面電車の車内
山田 莉里子(今日は、終電間に合ったぁー!)
今日も社畜として生きていた──
安い給料で日々を食い繋ぎ
唯一の楽しみは無課金でも遊べる乙女ゲーム
時なし、恋なし、貯金もなし
いつまで、こんな毎日が続くのだろう?
山田 莉里子(ああ、そうだ)
スマホを開いて、
乙女ゲーム「星屑のパラディオン」のアプリ画面をタップした。
山田 莉里子(ゲームにインして今日の分の無料ポイントゲットしなくちゃ)
突然、隣の車両から乗客が雪崩れ込んでくる。
山田 莉里子「な、何が起きてるの!?」
男「はあ、はあっ──」
山田 莉里子「い、いやっ! 近づかないで!! やめっ!」
斬られた腹へ触れると、真っ赤な血がべたりと手についた──
山田 莉里子(う・・・そ、私・・・死ぬの?)
山田 莉里子(ついさっきまで、永遠にくだらない毎日が続くって思ってたのに・・・)
山田 莉里子(死ぬ前に、もう一度・・・プレイしたかった・・・)
〇水玉2
〇華やかな裏庭
リアリナ・シャルルド・グレイ「きゃああああっ!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(ゆ、夢? はあ、びっくりした)
リアリナ・シャルルド・グレイ(それにしてもリアルな夢だったわ。働きすぎで、精神がいよいよ壊れたのね)
テオフィル・ベフトン「リアリナ様? どうかなされましたか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「なにこのイケメン! って、ここどこ?」
テオフィル・ベフトン「ははっ。まだ夢を見てらっしゃるんですか? 私はテオ。あなたの従者ではありませんか」
リアリナ・シャルルド・グレイ(どういうこと? リアリナって、プレイ中だった乙女ゲームの悪役令嬢の名前だったはず・・・)
テオフィル・ベフトン「あ、口元にクッキーの欠片が・・・」
と、テオの指先が、リアリナの唇に触れた。
口の端についていたクッキーの欠片を取り
ペロリと口の中へと──
リアリナ・シャルルド・グレイ「な、なななな!!」
テオフィル・ベフトン「まったく、お嬢様は世話が焼けますね」
リアリナ・シャルルド・グレイ(ちょっと! イケメンに免疫ない女子に何してくれんの!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(危うく、 きゅん死ぬところだったじゃない!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(危ない、危ない)
リアリナ・シャルルド・グレイ(この従者、テオ、って言ったわよね。確か攻略対象の1人だったわ)
リアリナ・シャルルド・グレイ(明らかに令和の日本ではない場所。乙女ゲームの攻略対象の登場に、鮮明な前世の記憶・・・)
リアリナ・シャルルド・グレイ(そして悪役令嬢のリアリナは・・・私!?)
リアリナ・シャルルド・グレイ(これってつまり、乙女ゲームの悪役令嬢に転生したってこと?)
リアリナ・シャルルド・グレイ(転生先が悪役令嬢なんて、バッドエンドしか待ってないじゃない!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(あ、でも待って!!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(上手くやれば国外追放されて、誰もいない田舎で、のんびり生活できるかも!!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(スローライフ最高じゃない!)
「リアリナー!」
テオフィル・ベフトン「スタン様」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「リアリナ、ここにいたのか」
リアリナ・シャルルド・グレイ(まあ♪ ツンデレ王子のスタンだわ!)
リアリナ・シャルルド・グレイ「あら、殿下、ご機嫌麗しゅう。 今日も後光が射してますわね」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「相変わらず嫌味か? もう少し可愛げある挨拶はできないのか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そうそう。このツンなところがスタンよね 本物が聞けるなんて、んー! たまらん!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「な、なんだ、ニヤニヤと気持ち悪い」
リアリナ・シャルルド・グレイ(あっ。つい、顔が緩んじゃった)
テオフィル・ベフトン「ところでスタン様、本日はどのような御用でしょう?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ああ、そうだった。 明日の晩餐会の招待状を持ってきてやったのだ」
テオフィル・ベフトン「王妃の生誕も兼ねての晩餐会ですね。 それは是非とも参加せねばなりません」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「我が婚約者であるリアリナには、必ず来てほしい」
リアリナ・シャルルド・グレイ(そう・・・。この晩餐会で、リアリナはスタンから婚約破棄を言い渡されるのよ)
リアリナ・シャルルド・グレイ(それに怒ったリアリナが、ヒロインに更なる意地悪をした挙句、国外追放されるのよね)
リアリナ・シャルルド・グレイ(王族に嫁ぐなんてストレス半端ないもの)
リアリナ・シャルルド・グレイ(さっさと婚約破棄をお受けして、湖の近くにでも隠居しましょ)
スタンスラス・ブラン・エレオノール「どうした? リアリナ? 先ほどからブツブツと、何を言ってる?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「いえ、なんでもありませんわ。 明日の晩餐会、必ずお伺いいたします」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「そ、そうか。 ではまた明日、城で」
リアリナ・シャルルド・グレイ(うっふっふ。 夢のスローライフが、すぐそこね♪)
〇貴族の部屋
リアリナ・シャルルド・グレイ「どこかの街で雑貨店を開くのもいいわね。湖の近くで絵を描いて過ごすなんていうのも素敵」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ああ、早く明日にならないかしら♪」
テオフィル・ベフトン「なんだか今日のお嬢様は嬉しそうですね」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ええ、明日の晩餐会が楽しみでならないの」
テオフィル・ベフトン「今までそのような催し物など、毛嫌いなさっていたのに、どんな心境の変化です?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(それは、ヒロインと攻略キャラがいちゃつくのを見るのが辛かったからだと思うわ)
リアリナ・シャルルド・グレイ(悪役令嬢だって、所詮人の子だもの)
リアリナ・シャルルド・グレイ(自分の男が他の女にデレてたら、嫉妬ぐらいするわ)
テオフィル・ベフトン「・・・スタン様、明日の晩餐会で何か重要なことを発表なさるおつもりでしょうか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「さ、さあ?」
テオフィル・ベフトン「もし婚姻の申し込みなら、私はリアリナ様の護衛からは離れることになってしまいますね」
リアリナ・シャルルド・グレイ「大丈夫よ、そうはならないから」
リアリナ・シャルルド・グレイ(だって、明日、スタンに婚約破棄を言い渡されるんですもの♪)
テオフィル・ベフトン「つまりそれは・・・ずっとお側にいてもいい、ということでしょうか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(そうね。1人で山奥に行っても苦労しそうだし、男手があった方が助かるわよね)
リアリナ・シャルルド・グレイ「ええ、これからもずっと一緒よ」
テオフィル・ベフトン「リアリナ様」
テオは片膝をつき、リアリナの手を取る──
リアリナ・シャルルド・グレイ「へっ!?」
テオフィル・ベフトン「この手に触れることを、お許しください」
リアリナの手の甲へと、テオの唇が押しつけられた。
テオフィル・ベフトン「私、テオフィル・ベフトンは、リアリナ様に一生の忠誠を誓います」
リアリナ・シャルルド・グレイ(ひゃああ! や、やめてええええ! キュン死ぬ!)
テオフィル・ベフトン「リアリナ様? お顔が・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「み、見ないで・・・」
テオフィル・ベフトン「ふはっ。すみません。 耳まで真っ赤になられるとは・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「もうっ! 笑わないで!」
テオフィル・ベフトン「申し訳ございません。 ただ、そんな反応をなさるお嬢様が愛らしくて、つい・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ(もう口を閉じてぇええ!! 心臓が弾け飛ぶからぁああ!)
テオフィル・ベフトン「さあ、もう横になってください。 明日は王宮へ参りますから、長旅となりますよ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「わ、わかってるわよ!」
テオに言われるがままにベッドに入る。
枕に顔を埋めていると、
ベッドサイドに腰掛けるテオの手が、おでこに触れる。
テオフィル・ベフトン「今夜もお嬢様が眠るまで、テオがそばにいて差し上げますね」
と、リアリナの髪を優しく梳いた。
リアリナ・シャルルド・グレイ「う、うん・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「な、なんの音かしら?」
テオフィル・ベフトン「大変申し訳ございません 少々外します」
リアリナ・シャルルド・グレイ「え、ええ。気をつけて」
テオフィル・ベフトン「はい。すぐに戻って参ります」
リアリナ・シャルルド・グレイ(はあー。心臓もたないよ)
リアリナ・シャルルド・グレイ(イケメンが横にいる状態で眠るなんて、さすが悪役令嬢ね。肝が据わってるわ)
リアリナ・シャルルド・グレイ「な、何者!?」
ツヴァイ「貴様、リアリナだな?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「一体何? どういう展開なの!!」
アインス「悪いが、その首、頂戴する」
リアリナ・シャルルド・グレイ「きゃああああ!!!!」
──ゴロッ
アインス「・・・これでよし。いくぞ!」
〇水玉2
〇華やかな裏庭
リアリナ・シャルルド・グレイ「きゃああああ!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「く、首! 私の首!」
テオフィル・ベフトン「リアリナ様? どうかなされましたか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「い、生きてる?」
テオフィル・ベフトン「ははっ。まだ夢を見てらっしゃるんですか? 私はテオ。あなたの従者ではありませんか」
テオフィル・ベフトン「あ、口元にクッキーの欠片が・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「食べちゃダメー!」
いうのが遅かったか、
既にクッキーの欠片は、テオの口の中だった。
テオフィル・ベフトン「・・・大変失礼いたしました」
リアリナ・シャルルド・グレイ「この会話、さっきもしたわ」
テオフィル・ベフトン「さきほど? と申しますと?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(この後、スタンが来るのよ)
「リアリナー!」
テオフィル・ベフトン「スタン様!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「リアリナ、ここにいたのか」
リアリナ・シャルルド・グレイ(やっぱりぃいい!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(夢じゃない。 これは、死んでループしたってことー!?)
リアリナ・シャルルド・グレイ(どうしよう、スローライフが目前なのに、死亡エンドを回避しないと、先に進めないじゃない!)
こんばんは!
口元のクッキー、手の甲にキス、きゅんとくる展開が沢山あるのに迎えるのはバッドエンド😭👍主人公がどのように攻略するのか、周りのイケメンキャラクターもめちゃくちゃ気になります!
タイトルからある程度覚悟はしていたのですが、展開が非情すぎる・・・でもオモシロイ・・・
彼女はあと何回死んでしまうのでしょうか・・・
ドキドキです・・・
ここでループしてしまうとは。
次の日まで生きてないとゲームは進みませんよね。
次から次へといろんなことが起きてますが、彼女のメンタルはタフですね。
すごくおもしろかったです!