読切(脚本)
〇教室
村松 充(むらまつ しゅう)「茜、数学の教科書貸してくれ」
陸上一筋のイケメン。ぶっきら棒で近寄りがたいところが女子に人気。
山口 茜(やまぐち あかね)「また、忘れたの。いいよ」
明るくて、世話好き。しっかり者に見えるが、実はおっちょこちょい。
山口 茜(やまぐち あかね)「はい」
山口 茜(やまぐち あかね)「今晩は、私がハンバーグ作るから食べに来てよ」
村松 充(むらまつ しゅう)「また、焦げたやつか」
山口 茜(やまぐち あかね)「今日は、焦がさないよ」
村松 充(むらまつ しゅう)「部活で、遅くなるからいいよ」
充は差し出された教科書をサッと取ると、自分の教室へ歩き出した。
〇学校の廊下
山口 茜(やまぐち あかね)「ダメだよ。どうせコンビニ弁当でしょ。遅くなってもいいから、来てね」
充は背を向けたまま、教科書を高く上げた。
佐々木 茉莉(ささき まり)「村松君と仲いいよね。もしかして、付き合ってるの?」
陸上部のマネージャー、学年きっての美少女。
山口 茜(やまぐち あかね)「えっ!つ、付き合ってないよ。幼なじみなの」
佐々木 茉莉(ささき まり)「ふ~ん」
〇学校脇の道
部活の帰り道、茉莉は他校生の男子に付きまとわれていた。
他校生の男子「佐々木さん。僕と付き合って下さい」
佐々木 茉莉(ささき まり)「前も断ったよね」
他校生の男子「付き合ってる人、いないんですよね」
茉莉が逃げるように角を曲がると、充がこちらに向かって歩いていた。
茉莉は走り出し、充の後ろに隠れた。
佐々木 茉莉(ささき まり)「私、この人と付き合ってるの。だから、もう付きまとわないで!」
他校生の男子「付き合ってるって本当ですか?」
佐々木 茉莉(ささき まり)「お願い。今だけそう言うことにして」
村松 充(むらまつ しゅう)「次ぎ来たら、どうなるか分かってるだろうな!」
男子生徒は、慌ててすぐに立ち去った。
佐々木 茉莉(ささき まり)「ありがとう。本当にしつこくて」
村松 充(むらまつ しゅう)「あいつまだいるかもしれないから、駅まで送ってやるよ」
佐々木 茉莉(ささき まり)「うん」
〇教室
次の日、充と茉莉が付き合っていると学校中で噂になっていた。
クラスメイト「ねぇ。村松君と付き合ってるの?」
佐々木 茉莉(ささき まり)「えっ!う、うん」
クラスメイト「え~。マジ。すごいじゃん。いいな~」
すると、茉莉が茜のところに来て小声で囁いた
佐々木 茉莉(ささき まり)「村松君にあまり馴れ馴れしくしないでね」
山口 茜(やまぐち あかね)「私ってバカだな。どうしてこのままずっと充と仲良しでいられると思ってたんだろう」
山口 茜(やまぐち あかね)「佐々木さんみたいな綺麗な子、充とお似合いだよね」
大会を控えた充は部活の練習で忙しくなり、あれから茜は充と距離を置いていた。
〇教室
ある日の放課後
山口 茜(やまぐち あかね)「上田君何してるの?」
上田「文化祭の出し物のアンケート集計」
山口 茜(やまぐち あかね)「一人で?」
上田「みんな用事があるとかで・・」
山口 茜(やまぐち あかね)「これ一人じゃ大変だよ。私も手伝うよ」
上田「でも、山口さんは委員じゃないし、悪いよ」
山口 茜(やまぐち あかね)「そんなこと気にしてるの。いいから、いいから。ね!」
二人でひたすら頑張り集計し終えると、何となく一緒に帰ることになった。
〇学校脇の道
たわいもない話をしながら歩いていると、突然上田が立ち止まった。
上田「僕、山口さんが好きなんだ。よかったら付き合ってくれませんか?」
山口 茜(やまぐち あかね)「え?。私・・・ごめんなさい」
上田「やっぱ、ダメか」
上田「でも、なんか気持ち伝えたらスッキリしたよ」
山口 茜(やまぐち あかね)「そうだよね!」
山口 茜(やまぐち あかね)「やっぱり自分の気持ち、ちゃんと伝えなきゃね」
上田「ん?」
山口 茜(やまぐち あかね)「上田君、ありがとう。私も好きな人に気持ち伝えるね」
そう言うと、茜は走り出しだ。そして、振り返り上田に向かって大きく手を振った。
上田「山口さん、やっぱ可愛いな」
〇競技場のトラック
陸上競技大会当日
〇球場の観客席
いつもなら、一番前の席で大きな声で応援していた茜だが、この日は一番後ろの目立たない席で静かに見守っていた。
充の結果は、予選敗退だった。
グランドに立つ小さな充の背中を泣きながら茜は見つめていた。
〇国立競技場
会場を出ると茉莉が茜を待っていた。
佐々木 茉莉(ささき まり)「山口さん。謝りたいことがあるの」
佐々木 茉莉(ささき まり)「村松君とは、本当は付き合ってないの」
佐々木 茉莉(ささき まり)「嘘つて、ごめんなさい」
山口 茜(やまぐち あかね)「ううん。本当のこと言ってくれてありがとう」
〇クリーム
大会お疲れ様。
残念だったね。
お腹空いたでしょ。
ハンバーグ作ったから家に来ない?
来てたのか?
うん。
スゲー腹減ったから行く。
待ってる。
〇綺麗なダイニング
しばらくして、充が茜の家に来て、
いつものようにリビングのソファーに座った。
茜は少し離れて充の隣に座った。
山口 茜(やまぐち あかね)「充にずっと伝えたかったことがあるの」
村松 充(むらまつ しゅう)「うん?」
山口 茜(やまぐち あかね)「好きだよ。もう思い出せないくらい前からずーっと」
村松 充(むらまつ しゅう)「・・・俺と付き合うか?」
山口 茜(やまぐち あかね)「うん!」
山口 茜(やまぐち あかね)「いいの?」
充は、少し微笑みながら軽くうなずいた。
山口 茜(やまぐち あかね)「私、今から充の彼女!」
山口 茜(やまぐち あかね)「えー。うれしい。うれしい!」
村松 充(むらまつ しゅう)「うるさい!はしゃぐな。くっつくなっ!」
山口 茜(やまぐち あかね)「ねぇ。充は私のこと好き?」
山口 茜(やまぐち あかね)「どう思ってるか言ってよ」
村松 充(むらまつ しゅう)「今度な」
山口 茜(やまぐち あかね)「今度っていつ?明日。あさって?ねぇ!」
村松 充(むらまつ しゅう)「・・ん?・・焦げ臭くないか?」
山口 茜(やまぐち あかね)「あっ!ガスつけっぱなし」
二人は急いでキッチンへ
〇綺麗なキッチン
山口 茜(やまぐち あかね)「ハンバーグまた焦げちゃった」
山口 茜(やまぐち あかね)「どうしよう・・」
村松 充(むらまつ しゅう)「腹減ったし、食おう」
山口 茜(やまぐち あかね)「充は、あんまり焦げてないこれを食べて」
村松 充(むらまつ しゅう)「茜、焦げてんの嫌いだろ。それは茜が食え。俺は真っ黒の食うから」
山口 茜(やまぐち あかね)「今日は、私が真っ黒の食べる」
村松 充(むらまつ しゅう)「いいって。もう慣れたから」
あーだこーだといつものように言いあう二人なのでした。
〇クリーム
次の大会は、マジでがんばる
茜がいつもみたいに大きな声で応援してくれねーと、力がでねーよ
それと、そろそろ焦げてないハンバーグが食いてーな!
あと、オレの気持ち
好きだよ
全身で青春を浴びれるような作品でした!!陸上部という設定や、途中のすれ違いなど、2000字という制約の中で、色々とつめこまれていて、とてもキュンとなりました!とても素敵な物語ありがとうございます!!
失って初めて自分の気持ちに気付いたりすることってありますよね。誰もが共感できるその想いに、自分から行動できた茜ちゃんはすごいなぁと尊敬しました。
登場人物みんなの優しさが溢れている青春のお話だからか、爽やかな読了感でした!
次の大会では茜ちゃんのめいいっぱいの声援で、充くん予選突破できるといいなぁ✨
茜ちゃんのように男の子の幼馴染に恵まれなかったから、彼女が告白に至るまでの気持ちに共感はできないけど、好きと伝えてそれを受け止めてもらえた嬉しさはとってもよくわかります! 充君も彼女のそばで素直になっていくでしょうね。