〇古生物の研究室（３Dプリンタあり）
小鳥遊遥「ふおぉぉぉぉ・・・！」
生島宗吾「水槽に顔をつけるな。ガラスに皮脂がつく」
小鳥遊遥「もうちょっと感動にひたらせてよー」
小鳥遊遥「ハルキゲニアが、 ちゃんと歩いてるんだよ？」
小鳥遊遥「何度再生しても、くしゃくしゃになって死んでた生き物がこんなに元気に・・・」
生島宗吾「あんたに最初に会った時に見たやつか。 そういえば、そんなこともあったな」
小鳥遊遥「ああ、このゆらゆらした動き、最高！」
生島宗吾「聞いちゃいないな・・・」
生島宗吾「観察が終わったら、 ガラスをクロスで拭いておけよ」
小鳥遊遥「はいはい。あれ？ 今気が付いたんだけど、この水槽だけ、 ろ過用のパーツが見当たらないよ？」
小鳥遊遥「ポンプの音はしてるのに、どうして？」
生島宗吾「吸い込み防止だ」
生島宗吾「触手で移動するハルキゲニアは、 遊泳能力がほとんどないだろう？」
生島宗吾「他の水槽と同じように吸水口を設置したら、水流に巻き込まれてフィルターに詰まる可能性がある」
小鳥遊遥「うわー、それはえぐいね」
生島宗吾「この水槽では、底砂の下にスノコ状のプラスチック板が入っていて、その下の複数の穴から水を吸い込んでいるんだ」
小鳥遊遥「吸い込み口を分散して流れを作らないようにしてるのか・・・ 水槽アイテムって奥が深いねえ」
新人飼育員「失礼しまッス！ 斎川さんがエントランスでお呼びですよ」
小鳥遊遥「斎川さんが？ どうしたんだろ、 自分のパスで入ってくればいいのに」
新人飼育員「それが、配送業者の方たちも連れてて」
小鳥遊遥「宅配？ あれー何か頼んだっけなあ・・・」
生島宗吾「ああ、注文したのは俺だ。すぐ行く」
新人飼育員「よろしくお願いしまッス！」
小鳥遊遥「なになに、何が届いたの？ 気になる！」
生島宗吾「見ればわかる」

〇実験ルーム
斎川理央「博士、生島さん、おはようございます！」
生島宗吾「斎川さん、わざわざすまないな」
斎川理央「お気になさらず。 これも仕事のうちですから」
小鳥遊遥「うわ、本当にたくさんの荷物が来てる！」
斎川理央「まだまだ運ばれてきますよ」
小鳥遊遥「これで全部じゃないの？ マジで？」
斎川理央「ふふふふ・・・思い切りましたよねー」
斎川理央「生島さん、納品リストをお渡ししますので、確認をお願いします」
生島宗吾「わかった」
小鳥遊遥「ねえねえ、この箱開けていい？」
生島宗吾「チェックをすませたらな」
小鳥遊遥「この木箱とか気になるー！ ひとつでいいから開けてよー」
生島宗吾「はあ・・・ちょっと待ってろ。 中身は、あんたになじみ深いものだぞ」
　　納品番号を確認してから、
　　釘打ちされた木箱のひとつを開ける。
　　そこには、
　　見慣れた形をした石が入っていた。
小鳥遊遥「三葉虫の化石だ！」
斎川理央「ミロクンミンギア、マルレラ、 ハルキゲニアの化石もありますよ」
生島宗吾「生体の隣に、 それぞれの化石を並べる予定だ。 再生元があったほうがわかりやすいだろう」
小鳥遊遥「いいねえ！」
斎川理央「残念なことに、アノマロカリスの化石は手に入らなかったんですよね」
小鳥遊遥「人気の化石だもんねー」
生島宗吾「気にする必要はない。 アノマロカリスはすでにある」
斎川理央「どこに・・・ああ、 そういえば研究室にありましたね」
小鳥遊遥「ちょっと待って！ それ、ボクの私物！」
生島宗吾「研究室に置いてあるものは、備品だ」
小鳥遊遥「横暴だ！」
生島宗吾「ちゃんとケースにいれて飾るから、 問題ないだろ」
小鳥遊遥「絶対！ 傷つけないでよね！」
斎川理央「生き物については、午後の到着の予定です」
生島宗吾「わかった。それぞれの水槽の準備はしているから、届き次第割り振りをしよう」
小鳥遊遥「待って待って、 なんでそんなもの発注してるわけ？」
小鳥遊遥「ここは古生物の水族館だよ？」
生島宗吾「堺さんにも言われただろう。寂しすぎると。一緒に現代の生き物も展示する」
小鳥遊遥「えー」
生島宗吾「何も、考えなしに並べるわけじゃない。 生きた化石を中心に、 古生物に似た性質の生き物を展示するんだ」
斎川理央「三葉虫の隣に、オオグソクムシとカブトガニが並ぶんですよ！ かわいすぎないですか？」
小鳥遊遥「うわあ、夢の節足動物パラダイスだね！」