アンドロイドと暮らしたら?(脚本)
〇駅前広場
〇駅前広場
最近は婚活というものが流行っているらしい。ぼくはといえば、三十歳を越えるとなぜかはわからないが、どうでもよくなっていた。
かといって、ひとり暮らしをしているせいか、ときどきは人恋しくもなった。
そんなある日、ぼくの好きな絵画の美術展が開かれるというので、駅前にある文化会館にやってきたのだ。
〇会議室のドア
なんとなく生理現象がもよおしてきたのでトイレにいこうとすると、『未来研究室』と看板がつけられているのをみつけた。
好奇心旺盛なぼくは、そっとドアをあけた。
〇研究装置
〇研究装置
〇研究装置
室長「ようこそ。どうぞなかにお入りください」
おそるおそるなかに入ると、白衣を着た男性が立っていた。ぼくより少し若い感じにみえた。
部屋のなかには、みたこともないような機器と、数人の若い女性と男性たちがいた。
いや、彼や彼女らはまったく動かない。目をあけてはいるが、まばたきひとつしないではないか。
ぼくはなにか怖くなって外にでようとすると、
室長「ご安心ください。この人間の女性にみえるものは、リアルなアンドロイドなのです」
室長「どうぞ、さわってみてください。噛みついたりしませんから」
〇魔法陣のある研究室
微笑む男をみて、アンドロイドだという男性の髪の毛や手をさわってみた。
男「人間とおなじ感触ですよ。ほんとにアンドロイドなのですか?」
〇魔法陣のある研究室
室長「信じてもらえないと思って、話していませんでしたが、私は未来からやってきたのです。過去の世界を調査するためにきました」
男「ふつうのビルのなかの部屋なのに、なかに入るとやたらと広いのですね」
室長「ここはいわゆる亜空間で、別の世界とつながっているのですよ」
男「そうなんですか? 信じられない!!」
〇研究所の中枢
男は微笑みながら、未来の世界をいくつかみせてくれた。SF映画でみたような幾何学的な建物の映像が立体的に映しだされていた。
室長「これらをみても信じられないでしょうから、どうです。こちらの女性アンドロイドをレンタルしてお試ししてみませんか?」
室長「妻用として製造されていますから、食事や掃除。夜の営みまでひととおりプログラムされています」
室長「私も、あなたとアンドロイドの交流のデーターが欲しいのです」
ぼくは、恐怖心よりも好奇心が勝って、男のすすめにのることにした。
〇明るいリビング
〇明るいリビング
アンドロイドの名前は史子にしてもらい、一週間、一緒に過ごすことにした。
この世界の知識もプログラムされているようで、ある程度の会話も可能だった。
ただ、未来のことは秘密なのか、なにひとつ答えようとはしなかった。
史子「あなた、お風呂をわかせてあるからご飯のまえにはいっていて」
〇おしゃれなリビングダイニング
なんとなく照れくさいがうれしいものだ。
それから六日間、ほんとうの結婚生活はこうも理想的にはいかないのだろうと思いつつも、まるで夢のような日々を過ごした。
〇おしゃれなリビングダイニング
レンタル最終日の翌朝、いつもはぼくよりもはやく起きて朝食をつくってくれているのだが、史子はまだ起きていない。
ぼくが朝のあいさつをすると、
史子「うるさいわね! まだはやいんだから勝手に食べて仕事にいってよ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
〇明るいリビング
と、すごい剣幕で怒鳴られたのだ。機械の調子が悪いのかと思いつつも、仕事にでかけたが、
その夜帰宅しても、彼女の態度は変わらなかった。怒鳴る、物は投げるわでもう一緒にいられないと思い、
早々に彼女を返しにいった。
〇魔法陣のある研究室
室長「いかがでしたか?」
微笑みながら話しかける男に、
男「昨日までは快適でしたが、今日はまるで別人みたいにひどかったですよ」
ぼくは少し、苛々した口調で答えた。
室長「はい。それはサービスです。あまりに幸せに過ごすと、アンドロイドに恋い焦がれる人もでてきます」
室長「ですから最終日は、悪妻になるプログラムになっているのですよ」
〇研究装置
fin
アンドロイドの配偶者、確かに未来ではありそうですね。最終日設定のように、気分にムラが出るようにも設定されて、夫婦喧嘩なんかも起こるかもですね。離婚って”契約終了”扱いでしょうかね。
こんな人が家で待ってくれてたらいいな〜と思っていたので、読んでいてこちらもビクッとなりました。でも自分もその時が来たら、こんな風に誰にも未練を感じさせずに消えたいですね〜。着眼点が面白かったです。未来でも人の心のありようはあまり変らないのかな?と思うと、何か微笑ましいというか、人間そのものへの暖かい笑いを誘ってくれる作品でした。
アンドロイドは感情を持つことはできないけど、アンドロイドと接した人間は、普通の人間と接したように感情を持ってしまうという結果ですね。主人公のように、結婚の適性を知る目的などで需要が増えるかもですね。