突発的!甘々ランチタイム(脚本)
〇学校の屋上
日差しが柔らかく降り注ぐ、春の昼下がり。
4人でご飯を食べようと誘われた私は穏やかな風を浴びていた。
友達の友達の友達である彼と並んで残りの2人を待っていたのだけど
隼斗「え、マジかよ」
・・・・・・隣から驚愕の声が漏れた。
私「どうかしましたか?」
隼斗「あいつ、先生に呼び出されたらしくて来られないって」
そう言って携帯を睨みながらため息をつく。
あいつ・・・・・・お友達のことか
私の友達もなかなか来ないけど
ここに来る前に先輩に呼び出されていたし、もしかしてなにかあったのかな?
ごめん!委員会の仕事があるの忘れてた!
急がなきゃだからこっちで食べるね!
私「えーっと、こっちも来られないみたいです」
隼斗「繋ぎ役の2人がドタキャンかよ」
私「どうしましょう・・・・・・?」
隼斗「あー、まぁ。それじゃあ2人で食べるか」
隼斗「それとも、俺と2人じゃ嫌?」
私「そんなわけないです!」
私「座って食べましょう! どうぞこちらへ!!」
隼斗「・・・・・・」
隼斗「ふ、ははっ! ハンカチって、それ男がするやつな!」
隼斗「まぁでも。ありがとう」
隼斗「なぁ、隣に来いよ」
私「・・・・・・はい」
〇学校の屋上
小川隼斗。
特に関わりのない私でも入学当初から知っているほどの有名人。
制服がないこの高校で、彼はいつもラフな格好をしている。
気合が入っていなくてもかっこいいのはイケメンの特権だ。
こんなイケメンと2人でお昼なんて、今日が最初で最後なんだろうな
箸の持ち方、合ってるかな
大口開けて食べないように気をつけないと・・・・・・
黙々と食べ続ける私。
胃がぎゅうっとしてきた。
隼斗「もしかして人見知り?」
私「どうしてですか?」
隼斗「敬語だし、緊張してそうだし」
隼斗「それに、ここから逃げ出したそうな顔をしてる」
私「うっ・・・・・・」
隼斗「ま、逃がさないけどな」
私「えっ!?」
隼斗「見てるだけでも面白いし」
隼斗「小動物みたいですっごく可愛い」
───カラン
隼斗「ははっ、箸落としてやんの」
私「だ、だって小川くんが!」
隼斗「俺が、なに?」
笑うのを止めてじっと見つめてくる小川くん。
これわかってて聞いてきてるよね!?
顔がいいから文句の一つも言えない!
隼斗「あ、いいこと思いついた」
これ絶対いいことじゃないやつだ・・・・・・
不穏な言葉をぽつりと呟いたかと思えば、
私のお弁当の中に入っていた卵焼きを、箸で器用に掴み取り───
隼斗「ほら、あーん」
躊躇なく私の口元へ近づけた。
私「ま、待ってください!!」
隼斗「待たない。 それに自分の箸はもう使えないでしょ?」
隼斗「ってことで観念して。あーん」
私「うぅ・・・・・・」
やむを得ないと小さく口を開くと、
隼斗「と見せかけて、」
───パクッ
隼斗「うわ、うっま!」
隼斗「この卵焼き、美味すぎる!!」
卵焼きを自分の口へと放り込んだ小川くん。
太陽にも負けない眩しい笑顔をこちらへ向けて。
───照らされた私の頬は熱を帯びていく。
私「お、お口に合ったようでなによりです」
隼斗「これを自分で作ったってこと?」
私「はい。お弁当くらいは自分で作ろうと思いまして」
隼斗「へぇー・・・・・・偉いな。凄い!」
ぽんぽん、と。
遠慮なく私の頭へと伸ばされる手に、心が乱される。
隼斗「なぁ、隼斗って呼んで」
私「別にそんなのどっちでも───」
隼斗「良くない。ついでに敬語もやめて」
隼斗「距離を感じるからやだ」
やだって。
なんだか子どもみたい
今の小川くんはかっこいいよりも可愛い気がする
ギャップが面白い、かも
私「ふっ・・・・・・あははっ!」
私は堪えきれずに笑い声を上げた。
隼斗「・・・・・・」
隼斗「そんな可愛い顔して笑うんだな」
隼斗「もっと見たい」
私「だ、ダメ」
隼斗「なんで? 顔隠すほど俺のこと嫌い?」
私「ち、違う!」
隼斗「じゃあなに?」
私「だ、だって、」
私「隼斗くんはかっこいいし可愛いけど、 私はそうじゃないから・・・・・・」
自信のなさが語尾に色濃く表れる。
だけど、俯く前に隼斗くんが息をのんだのがわかったから
隼斗くんの胸辺りまで落としていた視線をゆっくりと上げた。
すると・・・・・・
隼斗「不意打ち・・・・・・」
隼斗「落として上げるのずるくね?」
隼斗「でもさ、」
隼斗「俺、今世界一幸せな自信あるわ」
廊下ですれ違ったときも。
遠くから見つけたときも。
にこにこ笑っていたけれど。
たった今向けられたものはそれ以上に笑みが深く、弾けるようで
瞳に込められた熱と一緒に、私の胸を強く刺激した。
隼斗「明日からも一緒にご飯食べたいんだけど」
隼斗「っつか、ご飯以外の時間も一緒にいたい」
隼斗「隣にいさせて」
───キーンコーンカーンコーン
隼斗「うわっ、やべぇ。予鈴じゃん!」
隼斗「全然食べてねーな・・・・・・」
隼斗「卵焼きがマジで美味かったから、これは食べとくべき。ほら」
私「───んぐっ!?」
───パクリ
隼斗「な、美味いだろ?」
残り一つになっていた甘い卵焼きを、口の中に押し込まれた。
隼斗「これを毎日食べられるやつは幸せだろうな~。なんて」
いつもより甘い気がする・・・・・・
砂糖の量は変えてないはずなのに
もぐもぐもぐ。ドキドキドキ。
誤魔化すように咀嚼する私の耳元へ、隼斗くんの顔が近づいた。
隼斗「放課後、教室で待っててよ」
隼斗「もう一度、ちゃんと告白するから」
扉の向こうへ消えた隼斗くん。
最後に見えたのは、遠くからでもわかる耳まで染めた想いの色で。
甘いのは好きだけど、でもっ!!
私「過剰摂取は心臓に悪いよ!!」
しばらく余韻から抜け出せなかった私は
その日人生で初めて遅刻というものを経験したのだった。
こちらも、ストーリーを通して甘さの過剰摂取をさせていただきました。屋上でお弁当を食べるって青春感があっていいですね!素敵な物語ありがとうございました!
青春だし、キュン!!ってしました!!(o^^o)素敵なお話でした!!
いつもの卵焼きが甘く感じられる。
何ともキュンキュンするじゃないですか、やだー!
密です!
そして蜜です!!