エピソード1(脚本)
〇桜並木(提灯あり)
イツキ「会いたいな・・・」
新しい季節
新しい環境
新しい出逢い
ヒロコ「飲んでるー?」
ヒロコ「なぁーにシケた顔してんのよっ! ほら飲んで飲んで!!」
イツキ「あはは・・・ 先輩は飲み過ぎですよ」
ヒロコ「えぇー?そんな事ないわよーっ」
ヒロコ「でもぉイツキくんが注いでくれたらぁ 飲み過ぎちゃうかもー」
ヒロコ「・・・ね」
ヒロコ「2人で抜けない・・・?」
大学生になった
たまたま隣の席に座ったケンスケに
誘われるままにサークルに入った
新歓と言う名の恋人探しに巻き込まれた
ヒロコ先輩が上目遣いに僕を見る
気持ちがざわつく
〇駅のホーム
ミキ「それじゃ・・・ね・・・」
上京する日
幼なじみのミキは
ホームまで見送りに来てくれた
ミキ「東京行ったら 私の分まで楽しんでね!」
イツキ「そ・・・だね」
ミキ「また落ち着いたら連絡して!」
『3番ホームに参ります列車は──』
ミキ「じゃ、またね!!」
精一杯の笑顔で僕を送り出してくれた
後ろ髪をひかれる思いで故郷を離れた
〇走る列車
僕の初恋はミキだ
今も続いている
でも幼なじみ止まり
それで良いと思ってた
あの日までは
〇学校のプール
ミキが失恋した
最低な形で
彼氏と同じ大学に行きたくて
受験勉強を頑張っている間に
親友に彼氏をとられた
あんなに頑張っていた
大学受験も失敗した
たまたま居合わせてしまった
見捨てることなんて出来るはずがない
母校のプールサイドで
土砂降りの雨の中泣いている彼女を
後ろから抱きしめた
寒さと悲しみでカタカタと震える彼女を
壊れないように優しく抱きしめた
こんなに小さかったっけ・・・
あぁ・・・
僕がもっと上手に勉強を教えることが出来ていれば・・・
僕にもっと勇気があったなら・・・
あんな男に渡さなければ・・・
後悔が溢れた
〇施設の展望台
大学が始まってからしばらくは忙しかった
ミキも地元で忙しくしているだろうか・・・
イツキ「どうしてるかな・・・」
少し落ち着いたころ
思い立ってスカイツリーに行ってみた
スカイツリーの周りが
こんなに下町だとは知らなかった
ミキが行ってみたいと言っていた場所
パシャ
スマホで展望台から景色を撮る
イツキ「行ってきたよ──うらや──」
ミキ宛にメッセージを打って
送信せずに
消す
本当は一緒に来たかった
イツキ「ミキ・・・」
〇渋谷駅前
時間を見つけては
ミキが『行ってみたい!』と言っていた場所を巡るようになっていた
渋谷
新宿
センター街
竹下通り・・・
スマホで写真を撮って
メッセージを書いて
消す
送信ボタンを押せないまま
写真だけが増えていく
『会いたい』
『ずっとミキの事考えてる』
『好きなんだ』
打っては消す
その繰り返し
イツキ「はぁ・・・僕は何を・・・」
〇大学の広場
この人はサークルで知り合ったヒロコ先輩
同じ学部の2年生
周りからの情報だと
僕のことをやたらと気に入っているらしい
ヒロコ「ね! 今度の新歓の買い出し付き合ってくれない?荷物持ってくれたら帰りにアイス奢るから!」
イツキ「いいですよ 荷物持ちなら」
断る理由は無い
1人の思い出巡りもネタが尽きてきた
〇アーケード商店街
授業後
待ち合わせて買い出しをした
予想と違い
買い出しの荷物はあまり多く無い
ヒロコ「夕ご飯食べて帰らない?」
イツキ「あ・・・はい」
〇焼肉屋
全国チェーンの居酒屋に入った
先輩は慣れた手つきで注文する
ヒロコ「大学はどう?思っていたより忙しいでしょ?」
イツキ「そう・・・ですね もっと暇かと思ってました」
イツキ「勉強も・・・ 思ったより大変ですね」
ヒロコ「だよねーっ!! めっちゃ分かるーっ」
たわいない話しをしていたが
ふと会話が途切れた
先輩がこっちをじっと見ている
ヒロコ「あの・・・さ イツキくんって彼女いるの?」
イツキ「え」
先輩は目を逸らさない
イツキ「いません・・・けど」
ヒロコ「ふぅーん そうなんだ」
イツキ「・・・」
ヒロコ「じゃあ、好きな人は・・・?」
イツキ「・・・」
ヒロコ「・・・」
ヒロコ「残念だなぁーーーっ 好きな人いるのねぇっ!」
ヒロコ「どんな人? 教えてよっ」
先輩はズルイ
〇桜並木(提灯あり)
新歓は盛況
僕達が居なくなったところで誰も気づかない
少し離れたベンチに腰掛けた
ヒロコ「この辺で飲み直そうよ」
そう言って先輩は
持っていた缶チューハイを渡してきた
カシュ
軽く缶を合わせて乾杯をする
ヒロコ「その後、例の彼女に連絡したの?」
イツキ「え?」
イツキ「いえ・・・ きっかけが見つからなくて・・・」
ヒロコ「えぇー!?」
ヒロコ「話のキッカケなんて何でも良いのよ!! 何で連絡しないの?」
イツキ「そんなこと・・・言われても・・・」
ヒロコ「その子の事 また誰かに取られちゃっても良いの!?」
イツキ「えっ」
それは・・・
ヒロコ「嫌なんでしょ!?」
イツキ「・・・はい・・・」
ヒロコ「だったら!!」
イツキ「でも・・・」
ヒロコ「もー!! 早く告白して玉砕してきてよ!! じゃないと私にチャンスが来ないじゃ無い!!」
イツキ「え!?」
ヒロコ「もー鈍感っ!!」
ヒロコ「私の方が勉強教えられるし 何かと役に立つわよ?」
イツキ「ぇっ」
ヒロコ「冗談よっ」
ヒロコ「あと、」
ヒロコ「遠距離は本当に大変だからね! 覚悟なさい!『経験者は語る』よ!」
ヒロコ「軽い気持ちで始めたら お互いすごく傷つくんだから!」
イツキ「そう・・・なんですか・・・」
ヒロコ「告白できないなら せめて ちゃんと自分の気持ちを確認してきたら?」
イツキ「ぇ・・・」
ヒロコ「いい男になって迎えに行くんでしょ?」
僕の気持ち
僕の覚悟
〇駅のホーム
帰省する電車の中で
僕はスマホと格闘していた
『ミキ、元気かな──』
消す
『夏休みで帰るんだけ──』
消す
何度もメッセージを打っては消すを繰り返し
『ミキに相談したい事があるんだ』
『あのプールに一緒に行って欲しい』
送信
僕は自分の覚悟を確かめに
あの場所に行く
切ないお話、まるで映画のワンシーンを見てるようでした。彼を後押しする先輩のキャラクターが魅力的ですね😌
先輩が、めちゃくちゃいい女性ですね!また、主人公の視点がずっと続くということもあり、主人公の変化が分かりやすかったです!
素敵な物語ありがとうございました!
先輩いい女ですね!
自分の気持ちを伝えないことには先に進めなくて、それはどっちも同じことなんですよね。
彼もちゃんと伝えることに決めたようでよかったです。