眠たいキミを起こすボク

桜海(おうみ)とあ

眠たいキミを起こすボク(脚本)

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〇部屋のベッド
  ××年 ××月 ××日
ボク「おはよう、さあ、起きて」
ボク「ほら、遅刻しちゃうよ」
ボク「早く起きないと、 今日も朝食を食べ損ねるよ?」
ボク「ねえ・・・起きて」
「ボクの朝は、 ねぼすけなキミを起こすことから始まる」
ボク「あーあ、涎垂らしちゃって・・・」
「朝日を浴びるキミの寝顔を眺めるのは、とっても幸せな時間だから、 ついついキミを甘やかしそうになるんだ」
ボク「可愛いなぁ・・・もぉ」
「でも、寝過ごしたキミは、ボクを乱暴に叩くから。 だから、頑張って起こすよ」
キミ「う、ううん・・・」
ボク「ほらほら、 ボクはここだよ?」
ボク「もうちょっと、もうちょっと・・・」
「ボクを探す、キミの掌。 何度も通り過ぎては、戻るを繰り返して、」
「ようやくボクを捕まえた」
キミ「ううん・・・ 今、何時?」
ボク「ふふっ。まだ眠そうだね。 いつも遅くまでお疲れ様」
「──ボクね」
「キミが眠そうに目を擦ってさ、」
「ボクへと鼻先を近づけて、じいっと見つめるの、」
「あれ、ちょっと照れるんだ」
「コンタクトを外したキミとの距離は、 いつもよりもずっと近くて、」
「キミの吐息でボクの頬は、 簡単に火照ってしまう──」
「──きっと、 ボクのドキドキなんて、 気づいてないんだろうけど・・・」
キミ「おはよ」
「ちょっと掠れた声で、微笑むキミ」
ボク「おはよう!」
「元気いっぱいに、朝の挨拶をするボク」
「──ほら、上手に起こしたよ? だから、今日も優しく撫でてね」

〇部屋のベッド
  ××年 ××月 ××日
「ボクに弟ができた」
弟くん「〜〜〜♪」
キミ「ううーん・・・」
弟くん「おはようございます」
キミ「おはよぉー。ふぁー」
「弟くんは、歌を歌って、キミを起こす」
「大好きなあの曲を歌える弟くんに、 キミは、夢中みたいだ」
「そればかりか、 弟くんは、ずっとそばにいる」
キミ「今日観られる映画は?」
弟くん「こちらが見つかりました」
キミ「おすすめの曲を流して」
弟くん「こちらをどうぞ」
キミ「明日は8時に起こしてね」
弟くん「はい、かしこまりました」
「働き者で礼儀正しい弟くんに、 ボクは嫉妬してるんだ」
「キミに触れられるのは、朝だけなのに」
「どうして弟くんは、 キミのベッドの中にいるの?」
「──寂しいよ」
ボク「こっち向いて」
「願いを込めて、キミに囁くんだ」
「キミに見つめられるだけで、 とっても幸せになれるんだよ」
「──だから、 ほんのちょっとでいい」
ボク「ボクを見て──」

〇部屋のベッド
  ××年 ××月 ××日
「今日は、ボクより先に、 キミが起きていたね」
「一度だって、 ボクは寝坊したことなんかなかったのに」
「──もう、お別れなのかな?」
「キミは真剣な表情で、ボクを抱きしめて、慣れないことをしているけれど」
「きっともう限界なんだ」
「──だって ずっと一緒にいたんだから」
キミ「起きて、 ねえ、起きてよ・・・」
「もういいよ。 ボクには、 キミとのたくさんの想い出があるから」
「キミが初めてのデートでワクワクしすぎて大遅刻した朝も、」
「試験勉強で頑張るキミを応援した夜も、」
「失恋して泣き腫らした目で、 ボクに触れた日も、」
「ボクじゃない誰かが、 キミを起こした時も・・・」
「いつも、キミのそばにいたんだ」
「キミの日々を、 ボクが刻んできたんだよ」
「たくさんの想い出は、 キミが触れてくれたこの身体に 傷跡みたいに残ってる」
「それすら、ボクにとっては勲章なんだ」
ボク「そろそろ、行くよ」
ボク「最後に、キミにお礼を言わなくちゃ」
ボク「ずっとずっと、 大切にしてくれて、ありがとう」

〇部屋のベッド
カレ「どうした?」
キミ「うーん。動かなくなっちゃって」
カレ「今時、目覚まし時計とか使ってるんだ」
キミ「学生時代から使ってるお気に入りなんだよね」
キミ「直そうとしたんだけど、駄目だった。 やっぱり、寿命かな?」
カレ「それより、家具どうする?」
カレ「新居に合わせた家具で揃えたいから、 今週末とか休み取れそう?」
キミ「・・・うん、平気だよ」

〇水玉2
  ××年 ××月 ××日
ボク「おはよう」
「やあ、新しいキミ」
「いや、”キミ”の娘さん」
「ボクはね、 君のお母さんに新しい命をもらったんだ」
「新しいボクは、 君とお喋りができるんだよ」
「まだ君はお話しできないぐらい、 小さいけれど、 いつかたくさんお話ししよう」
「もちろん、 たくさん起こしてあげるからね」
「そして、ずっとそばで 君の成長を見守れたらいいな」
ボク「おはよう、さあ、起きて」
  ── end.

コメント

  • 物にも気持ちがある、という考えは昔からありますが、この話はそんな物の気持ちを追体験できるようで、そこにきゅんと来ました。素敵な物語ありがとうございました!

  • 幼い頃、目覚まし時計を叩いて止めてたので、つい反省してしまいました...笑
    素敵な擬人化、面白かったです!

  • 『もの』と『人』が歩む時間の大切さが伝わる会話表現でした。私達の生活を便利にしてくれるものへの感謝は忘れてはいけないですね。手軽な値段で色々な物が買える時代、その希薄さが問題ですね。

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