エピソード1(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
亜衣(あい)「亜衣と柾がつき合っていたこと、隠していてゴメンね」
柚子(ゆず)「お、オタ研でも、そんなそぶり見せたことないじゃん、いつからなの?」
亜衣(あい)「もう、半年前かな」
亜衣(あい)「亜衣が、可愛くないから、学校ではナイショにしてくれって柾が言ったの」
亜衣(あい)「このことは、柚子と亜衣だけのヒミツね」
柾とデートだと言って亜衣が席を立ってから、柚子はもう飲み干してしまったジュースのストローを、思いっきり吸い上げた。
〇教室
柚子と亜衣と柾は幼馴染みで、共にアニメ研究部(通称・オタ研)に所属していた。
柾(まさき)「おいーっす」
柚子(ゆず)「柾、また授業中寝てたから、単位やらないって英語の三上がオコだったよ」
柾(まさき)「出席取ったときは、返事したのにな。 それより、昨日のキスキュン見た?めるの作画、神がかってたよね」
柚子(ゆず)「部室に入ってきて早々、亜衣のこと気にかけもしないで、後輩たちと楽しそうにアニメの話しするな!」
柚子(ゆず)「やっぱり、彼女居ることは隠したいのね」
〇学校の廊下
柚子(ゆず)「亜衣、今日は放課後どこ行く?」
亜衣(あい)「ゴメン、柚子。今日は柾との記念日なんだ」
柚子(ゆず)「マジかっ! でも、良かった。学校では素っ気ないフリして、2人の時はラブラブみたいだね」
亜衣(あい)「ま、まあね。じゃあ。また明日!」
柚子(ゆず)「亜衣、リア充してるな〜。羨ましい」
柚子(ゆず)「私も、実は柾のこと・・・ ううん、親友の恋を応援しなきゃ」
〇通学路
柚子(ゆず)「あ、猫!キミもおひとりさまなの?私と仲良くしよ〜♪」
柚子(ゆず)「物心ついた時から、亜衣と柾と遊んでいたから、あの2人がくっついたら、私ぼっちだわ」
柚子(ゆず)「もし、これがファンタジー小説なら、キミがイケメン王子様になって、私を助けてくれるのにね」
灰色の猫「ニャニャニャ」
柚子(ゆず)「あはは、カワイイ。 よ〜し、キミは実は、」
柚子(ゆず)「私の推しキャラ、シオンヌ似のイケメンだったという小説を書こう!!」
柚子(ゆず)「なーんてね。早く、この淋しい現実を、受け止めなくちゃ」
灰色の猫「ニャーン」
〇学校の廊下
男子高生「ニュース!ニュース!あの、若葉が、オタ研の男に駐輪場で告ってた!!」
男子高生「ありえねー!」
男子高生「誰なんだ?!その福オトコはあっ」
男子高生「名前なんて、知らねーよ。冴えない眼鏡ヤローだったけど?」
柚子(ゆず)「で、どうなったの?」
男子高生「春高美人ランキング一位の若葉に告白されて、断るバカがいんのかよ。 ソッコーOKしていたぜ」
柚子(ゆず)「あ、亜衣大丈夫?」
青ざめた顔の亜衣が、柚子の肩にもたれかかった。
柚子(ゆず)「私、もう限界!どういうつもりでつき合っているのか、柾に言ってくる!!」
亜衣(あい)「柾は、何を聞いてもしらばっくれると思う。だから、聞かないで」
亜衣(あい)「私、早退するから、また明日愚痴聞いてね」
柚子(ゆず)「亜衣〜!メールでもいいから、連絡して! ウチら、ニコイチでしょ!」
亜衣(あい)「ありがとう。柚子だけだよ、亜衣の親友は」
二人はしっかりと、お互いを抱きあった。
〇広い公園
柚子(ゆず)「それにしても、柾のヤツ。冴えないオタクのくせに二股かけるなんて」
柚子(ゆず)「マジ、許せない!」
ムサシ「何イライラしてるの?」
柚子(ゆず)「し、シオンヌ?」
ムサシ「誰それ?俺はムサシ」
柚子(ゆず)「し、失礼いたしました。 知り合い(とゆうか、推しなんだが)に激似だったもので〜💧」
ムサシ「キミも俺の知り合いに似てるから、つい声かけたんだけど、」
ムサシ「なんかあったなら、相談乗るよ」
柚子(ゆず)「はあ、なにコレ。 私、異世界転生でもしたのかな?」
柚子(ゆず)「こんなイケメンに声かけられるなんて、新手の詐欺かもしれない」
ムサシ「二股オトコって聞こえたけど、君が二股かけられたの?」
柚子(ゆず)「い、いいえ。それが、私の親友でして・・・」
ムサシ「自分のことみたいに怒れるなんて、優しいね」
柚子(ゆず)「め、めっちゃ良いひとやん!それに、何か初めてな気がしないような」
柚子(ゆず)「こんなイケメン、忘れるハズないのになあ」
柚子(ゆず)「ヤバっ。声に出てた!」
ムサシ「面白いね、君」
〇広い公園
ムサシと話していた柚子は、スキップしながら歩いて帰る柾を見かけた。
柚子(ゆず)「あいつ〜許すまじっ!」
柚子(ゆず)「っとうっ!!!」
柾(まさき)「いって!何するんだよ・・柚子?」
柚子(ゆず)「亜衣のことはどーすんのよ、サイテー男!二股なんて、ありえないんだからねっ!!」
柾(まさき)「亜衣?二股って、なんのこと??」
柚子(ゆず)「コッチは、みんな知ってるのよ? 柾が亜衣とつき合っているのに、若葉ちゃんともつき合うことにしたってね!」
柾(まさき)「亜衣と俺は、つき合ってるわけないんだが」
柚子(ゆず)「そう言うと思った!もう一発、喰らいなさい!」
ムサシ「ちょっと待ってよ、二人とも」
ムサシ「公園のちびっ子たちにビビられてるから、一旦、落ち着いて話さないか?」
〇公園のベンチ
柾と亜衣はつき合っていなかった。
柾は誤解が解けて帰ったが、柚子はベンチから立てなかった。
ムサシ「ちょっとは、落ち着いた?」
柚子(ゆず)「わからない。亜衣が私に嘘をつくメリットは何なの?」
ムサシ「さあ・・。人間て、自分勝手に物事を考えちゃうから」
柚子(ゆず)「どうしよう。私、亜衣と親友を続ける自信がないよ」
ムサシ「柚子が亜衣と親友でいたいのは、誰のため?」
ムサシ「柚子は今まで、他人の恋バナや小説のストーリーでしか、自分を表現できなかったみたいだね」
ムサシ「でも、柚子の人生の主役は、柚子しか居ないんだよ」
ムサシ「誰かのために自分を殺す人生なんて、選ぶ必要ないよ」
ムサシ「大丈夫。君は素敵な女の子だよ」
柚子(ゆず)「ありがとう。 でも、これから亜衣と、どうしたらいいかな?」
ムサシ「まずは、亜衣と話すことかな。 遠慮なんかせず、自分の言葉で」
柚子(ゆず)「電話してみる」
柚子(ゆず)「私、ムサシに名前名乗ったかな?」
〇本棚のある部屋
柚子(ゆず)「今日柾と話したわ」
亜衣(あい)「だから、つき合ってないって言うって言ったじゃない?柾は、私が可愛くないから・・・」
柚子(ゆず)「もう演技は止めて。どうして、私に嘘をついたの?」
〇本棚のある部屋
いつものきゃぴきゃした亜衣の声が、ワントーン下がった。
〇本棚のある部屋
亜衣(あい)「柚子って」
亜衣(あい)「柾のこと好きでしょ。 あと柾、意外に後輩にも人気あるじゃん」
亜衣(あい)「柾を好きなのは、私だけで良かったの」
柚子(ゆず)「亜衣、あんたって・・・」
亜衣(あい)「怒ってるよね? ・・・ゴメンね」
柚子(ゆず)「亜衣も、告る前にフラれたようなものだから、」
柚子(ゆず)「ちょっと可哀想かな」
亜衣(あい)「許してくれる?」
柚子(ゆず)「・・・うん」
亜衣(あい)「ありがと! あ〜良かったぁ!」
亜衣(あい)「それにしても・・・XX」
柚子(ゆず)「何?笑ってる?」
亜衣(あい)「柚子ってぇ、純粋だから、昔から、何でも信じちゃうじゃん」
亜衣(あい)「面白くて、エスカレートしちゃったなあと思って。 これって、柚子のせいじゃん!」
亜衣(あい)「柚子は昔から、亜衣が居なくちゃ、なんにもできないもんね」
亜衣(あい)「トイレに部活にアイドルのライブ。 亜衣が居なくなったら、困るのは柚子だもんね!」
柚子(ゆず)「亜衣、」
柚子(ゆず)「サヨナラ」
「え?」
柚子は亜衣の連絡先を消去した。
〇広い公園
あれから、何度もあの公園に行ったが、ムサシには会えなかった。
柾にも、ムサシのことを聞いたのだが、覚えていないという。
柚子(ゆず)「あ、猫」
白猫「ニャーン」
柚子(ゆず)「今日は彼女も一緒なんだね。 おひとりさま同士だと思ってたのに、リア充だったか!」
柚子(ゆず)「まあ私にも、待っている人くらい居るんだけどね」
たま「おまたせ!ごめんね、待った?」
柚子(ゆず)「今来たところ!ねえ、今日のライブ、楽しみだね!」
柚子(ゆず)「私は、私の人生を歩いている。誰のためでもなく、自分のために」
笑いながら公園を走り去る少女たちを追いかけるように、二匹の猫はじゃれ合いながら去って行った。
Fin
思春期女子特有の、真っ直ぐさや自己否定感、そしてドロドロの感情などが満載ですね。生々しすぎておなかいっぱいになります(笑)
柾くんは、途中までホントにフタマタ浮気野郎と怒りを覚えてしまいました、柾くん、ゴメンナサイ!
なんだか悲しく悲しくなりました、、、人を裏切る時のってそんな簡単なものなのでしょうか、、、でも最後はよかったです。もう傷つく人が出来ませんように。
親友のために身を引いて、その後も話を聞いていた彼女が裏切られて悲しくなりました。
なぜそんな嘘を…と思ったら理由までひどくて。
でも、新しい友だちもできて、明るい終わり方で良かったです。