「同名転生」 同じ名前の別人に…

鷹志

「同名転生」 同じ名前の別人に…(脚本)

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〇怪しげな祭祀場
  「同名転生」
  同じ名前の全くの別人に生まれ変わること
レイラ「別の人間に生まれ変わって、人生をやり直したい」
レイラ「そう思ったことが誰でも一度はあるのでは?」
レイラ「その願いを叶えることができるのが、ここ「同名転生」」
レイラ「そんなことできるはずないって?」
レイラ「そう思いたければご自由に」
レイラ「私の力を信じられる人だけが来てくれればけっこう」
レイラ「誰に生まれ変わるかは、私にもわかりませんが・・・」

〇テレビスタジオ
  伊代は気象予報士。
  あるテレビ番組のお天気キャスターを務めている。
  年齢はもうすぐ30歳。
伊代「え? 番組降板ですか?」
プロデューサー「まあ、まだ決まったわけじゃないんだけどね」
プロデューサー「伊代さんも、気象予報士本来の仕事をしながらお天気キャスターを続けるのは大変でしょう?」
伊代「いえ、そんなことはありません」
プロデューサー「そう言われてもねえ・・・」
プロデューサー「やっぱりお天気キャスターには天気の知識だけじゃなくて、何というかこう華やかさが欲しいんだよ」
プロデューサー「実は新任の候補も何人かいてね。新人のSちゃんとかKちゃんとか・・・」
伊代「そんな・・・」
プロデューサー「おっと、時間だ。この話はまた改めてするよ」
伊代「・・・・・・」
伊代「何が華やかさがないよ。私はタレントじゃなくて気象予報士よ!」
伊代「若いだけで気象のことなんて何も知らないSやKに番組を取られるなんて・・・」

〇狭い裏通り
伊代「番組を外される?」
伊代「絶対納得できない。 あー、もう、イライラする」
  そのとき、一軒の店の前で伊代が立ち止まる。
  「同名転生」
  
  別人に生まれ変わってみませんか?
  生まれ変わって人生やり直せるかも・・・
伊代「は? 別人に生まれ変わる?」
伊代「こんなバカな店があるのね」
伊代「・・・今日は頭に来て疲れたから、気晴らしに入ってみようかしら?」

〇怪しげな祭祀場
伊代(何これ? 怪しすぎる・・・)
伊代(やっぱり帰ろうかな)
レイラ「いらっしゃいませ」
伊代「えっと、店の前の看板を見て、ちょっと見学に・・・」
レイラ「そう・・・」
伊代「同名転生って一体どういうもので・・・」
  レイラが一枚の紙を伊代に見せる。
  「同名転生」
  
  1 自分と同じ名前の人物に転生できる。
  2 過去や未来の人物にも転生できる。
  3 料金は10万円。 以上
伊代(10万円!? 高い!)
伊代「ええと・・・」
伊代「自分と同じ名前の人、つまり私だと「伊代(いよ)」って子に転生できるってことですか?」
伊代「それとも名字のほうですか? それともフルネームが同じ人とだけとか・・・」
レイラ「さあね」
伊代「さあね?」
レイラ「10万円払って転生するか、やめるか。どっちにするの?」
伊代「あ、はい。あの・・・」
伊代(何なのこの人。こんな店来なきゃよかった)
伊代(そもそも他人に生まれ変わるなんてできるわけないでしょ)
伊代(けど、今日はイライラして散財したい気分だわ)
伊代(10万円は高いけど、生まれ変わりはともかく、何か変わった体験ができるなら・・・)
伊代「わかりました。10万円払います」
レイラ「確かに頂戴したわ。 じゃあ、そこの魔方陣の中に入って」
伊代「え、ここですか?」
レイラ「ほら早く」
伊代「わかりました」
  伊代が魔方陣に近づき、その中央に立つ。
レイラ「同名転生」
レイラ「・・・・・・」
レイラ「同名転生完了と」
レイラ「さて、彼女はどこの誰に転生したのかしら?」

〇後宮の一室
イヨ「う、うん・・・」
イヨ「ここは?」
イヨ「そういえば、確かあの同名転生の店に行って、魔方陣に入って・・・」
女官「イヨ様、おはようございます」
女官「イヨ様、髪を整えますね」
イヨ「は? あなたたちは一体・・・」
女官「終わりました。間もなく長官が来ますので」
女官「私たちは失礼します」
イヨ「ちょっと・・・ イヨ様? 長官?」
長官「イヨ様、ご準備のほうはよろしいでしょうか?」
イヨ「はあ・・・」
長官「民が女王イヨ様からのお告げをお待ちしております」
イヨ「女王イヨ様!? 私が!?」
長官「寝ぼけておられるのですか?」
イヨ「私が女王イヨ? 女王ってことはどこかの国の王様?」
長官「・・・イヨ様、少しお疲れのようですね」
長官「イヨ様が大変なのはわかりますが、イヨ様にはしっかりしていただかなければ」
長官「邪馬台国の女王として・・・」
イヨ「邪馬台国の女王!?」
長官「?」
イヨ(邪馬台国の女王イヨ・・・そういえば日本史の授業で習ったかも)
イヨ(確か邪馬台国の女王卑弥呼(ひみこ)の後を継いで、わずか13歳で王になった女性の名が、壱与(いよ)・・・)
イヨ(!? ・・・ということは、私は邪馬台国の女王イヨに転生したっていうの!?)
長官「イヨ様、こちらへ」
イヨ「え、ちょっと、あの・・・」

〇村の広場
長官「皆の者、女王イヨ様のお越しだ!」
民「イヨ様!」
民「イヨ様!」
長官「イヨ様、お願いします」
イヨ「は?」
イヨ(ちょっと聞いてないわよ)
イヨ(確かにあの店の案内には「過去の人物にも転生できる」とは書いてあったけど、まさか邪馬台国の女王だなんて!)
長官「イヨ様?」
長官「イヨ様、いつものあれをお願いします」
イヨ「いつものあれ?」
イヨ(何のこと? 今ここに来たばかりなのに、いつものあれって言われても・・・)
長官「また日照りが続いています。いつものように雨を降らせてください」
イヨ「は?」
イヨ(雨を降らせる? そんなことできるわけないでしょ)
長官「すぐに降らせるのが無理なら、今度いつ降るかを民に告げてください」
イヨ(だから、雨を降らせるなんて無理だって!)
イヨ(ん? 待てよ。 今降らせるのが無理なら、いつ雨が降るかを告げて欲しい?)
イヨ(私は気象予報士・・・)
  イヨはふと空を見上げる。
イヨ(この雲の様子なら、あと1時間もすればひと雨きそうね)
長官「イヨ様、お早めに。民も不思議そうにこっちを見てますよ」
イヨ(そう言われても・・・わかったわよ。やってやろうじゃないの)
イヨ「皆の者、静まれ!」
イヨ(こうなったら、女王イヨを演じてやるわよ)
イヨ(確か邪馬台国の女王卑弥呼やイヨは、呪術で国を治めていたって話よね)
イヨ(それっぽくやってみるか!!)
イヨ「オンマカア ボダボキラヤマ ベニイロハ シンドヤマナウ・・・」
イヨ「皆の者、よく聞け! 間もなく雨が降る!」
イヨ「私が雨を降らせてみせる!」
民「イヨ様!」
民「イヨ様!」
  その1時間後・・・

〇村の広場
長官「空が暗くなってきた!」
長官「雨だ。雨が降ってきたぞ!」

〇草原の道
民「雨だ!」
民「雨が降ってきたわ!」

〇森の中
民「雨だ!」
民「これで作物がとれるわ!」

〇村の広場
長官「皆の者、これが女王イヨ様の力だ!」
  そこにいる者が全員ひざまずき、口々に叫ぶ。
民「イヨ様! イヨ様!」
民「我々の偉大な女王イヨ様!」
イヨ「皆の者、これからも仕事に精を出すのじゃぞ!」
民「はい!」
民「イヨ様! イヨ様!」

〇村の広場
イヨ「そう、私はなんと、邪馬台国の女王イヨに転生してしまった」
イヨ「私の新しい人生、邪馬台国の女王としての人生の始まりだ」
イヨ「こんな人生も悪くないかも・・・」
イヨ「あれ?」
イヨ「そういえば、もともとここにいた女王イヨは、どこに行ってしまったのかしら?」

〇テレビスタジオ
プロデューサー「いやー、伊代さん、最近なんかこう明るく若々しくなったね」
伊代(イヨ)「そうですか? ありがとうございます!」
プロデューサー「視聴者からも好評で、おかげで視聴率も上がってるよ」
プロデューサー「天気予報も100%的中だしね。すごいね」
伊代(イヨ)「私、不思議な力を持っていて、雨がいつ降るかとか未来の天気がすべてわかるんです!」
プロデューサー「不思議な力?」
伊代(イヨ)「邪馬台国の女王卑弥呼様から、直々に天気を予測する方法を教わったんです!」
プロデューサー「は?」

〇怪しげな祭祀場
レイラ「お天気キャスターの伊代は邪馬台国の女王壱与(イヨ)に、」
レイラ「邪馬台国の女王壱与(イヨ)はお天気キャスターの伊代に、それぞれ転生した」
レイラ「二人とも転生後の人生を楽しんでいるようで、何よりだわ」
レイラ(毎回こううまくいくとは限らないけどね)
レイラ「・・・あなたも同名転生して、別人になって人生をやり直してみませんか?」
レイラ「ただし、誰に転生するかはわかりませんが・・・」

コメント

  • 同名転生っていうのにすごく惹かれました!!
    同じ名前の金持ちと転生したいです😁
    根っからの庶民なので…
    マイナンバーカードで同名と紐付けみたいなのはあるようですけどね…
    古代のイヨ様が、どんなシャーマン天気予報をやるのか見てみたいですね🤩

  • とても良いお話だと思います!
    過去に行くのも良いし、未来に行くのもいいと思います。なんなら新文明とかもありだと思います!また、パラレルワールドで(本人とパラレルワールドで生み出された本人と入れ替わるという話です)も話は作れそうだと思います!

  • この作品でも、邪馬台国が!
    伊代の名前を見た時にん?と思い出したが、こちらの作品にも、強い邪馬台国愛を感じます。
    天気予報士のスキルが役立ち、自分が必要とされる世界に行けるなんて、同名転生どうなるかは怖いけど面白いですね!

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