エピソード(脚本)
〇白
〇空
夏が終わろうとしていた
〇シックな玄関
姉「また兎田君ち?」
亀梨「そだよ」
姉「あんたらホント仲良いわね」
亀梨「まあマブだね」
亀梨「じゃ、いてくる」
姉「アレで恋人じゃないのよね?」
姉「不思議だわ」
〇黒背景
〇古いアパート
兎田「あいつもう部屋に来てんのか」
兎田「今日こそ伝えなくちゃな」
〇古いアパートの部屋
兎田「あのさあ」
亀梨「おかえり バイトご苦労」
兎田「クーラー勝手につけんなよな」
亀梨「消すならせめて扇風機出して」
兎田「そんなものはない」
兎田「ウチは30度超えるまでは 窓を開けて過ごすの」
亀梨「過激だよなぁ」
亀梨「まあいいや」
亀梨「それよりお腹すかない?」
兎田「もう昼だしな」
〇安アパートの台所
兎田「あいつ冷凍庫にあずきボー詰め込んでやがる!」
兎田「卵が残り8」
兎田「賞味期限は明日か」
兎田「ゆで卵潰してサンドイッチにでもするか」
亀梨「ボクはオムライスがいい」
兎田「やだよ まだ鶏ムネ使いたくねーし」
亀梨「オムライス〜!」
兎田「じゃあ自分でやれ」
兎田「材料使っていいから」
亀梨「やった」
〇黒背景
亀梨「ボク料理したことないけど」
〇安アパートの台所
亀梨「でやっ」
卵と卵をぶつける亀梨
兎田「変わった割り方だな?」
兎田(てかオムライスなら 卵を割るのは最後の方が)
兎田「だ、大丈夫なのか!?」
亀梨「うるさいなぁ」
亀梨「こうすれば一気に2個できると思ったんだよ」
〇安アパートの台所
亀梨「君は相変わらず手先が器用だな」
兎田「自炊歴が長いからね」
兎田「知恵だってついてくる」
兎田「例えば、ゆで卵は古い方が綺麗に剥けるんだ」
兎田「空気が抜けて底に隙間ができるらしい」
亀梨「へ〜!」
兎田「どうだ 俺、女子力高いだろ」
亀梨「今どき料理ができると女らしいって古くない?」
亀梨「価値観のアップデートしていこうよ」
兎田「100%正論なんだが」
兎田「そもそも料理しねえ奴にドヤ顔されると腹が立つ」
〇安アパートの台所
亀梨「目が痛て〜!」
兎田「玉ねぎを切ってて目が沁みるのは、アリシンって成分が」
亀梨「そんなのボクだって知ってる」
亀梨「そういえば!」
〇古いアパートの部屋
〇安アパートの台所
亀梨「これを装着すればいいのだ」
兎田「水中ゴーグルなんてどうして持ってんだ!?」
〇学校脇の道
亀梨「来る途中小学校前で拾った」
亀梨「夏休みの落し物さ」
〇安アパートの台所
亀梨「懐かしかったから、君にも見せてやろうと思って」
兎田「持ち主が今頃探してないといいな」
〇安アパートの台所
亀梨「おかしい」
亀梨「まだ涙が出る」
兎田「甘いなぁ」
亀梨「ふごっ!?」
兎田「鼻からもアリシンは侵入してくるんだ」
兎田「そこにティッシュつめとけよ」
亀梨「はるほろへ」
兎田「ぷっ、変な顔w」
兎田「ゴーグルかけて 鼻にティッシュ詰めて」
兎田「変人すぎる」
亀梨「ちくそ〜」
兎田「女子力とか以前に俺らって小学生みたいだよな」
亀梨「わはは」
亀梨「いえへる〜」
〇黒背景
30分後
〇古いアパートの部屋
兎田「い、いただきまーす」
亀梨「いただきます・・・」
亀梨「まずっ!」
亀梨「玉ねぎが半ナマで」
亀梨「玉子に殻が入ってる」
兎田「半分くれよ」
亀梨「やめろ」
亀梨「下手な同情されるとみじめだ」
兎田「いや」
兎田「朝めしジャムトーストだったんだよね」
兎田「だから米も食べたい気分なんだ」
亀梨「ボクは朝、納豆ごはんだった」
兎田「じゃあパンも半分食べなきゃな」
亀梨「そうだね」
〇古いアパート
それから
2人はたくさん遊んだ
〇古いアパートの部屋
兎田「ここでチェンジアップ!?」
亀梨「うへへ三振〜」
〇古いアパートの部屋
兎田「どうだ?いい曲だろ」
亀梨「うーん」
亀梨「あんま分かんね」
亀梨「ボク、アニソンしか聞かないし」
兎田「むぅ」
兎田「とうとうラップに目覚めさせられなかったか」
〇古いアパートの部屋
亀梨「こいつ寝てやがる!」
亀梨「おススメサメ映画聞いておいて」
亀梨「バイトで疲れてたんだな」
亀梨「ま、いいさ」
亀梨「夏休みが終わってもまた遊べばいいんだ」
兎田「・・・」
〇古いアパート
〇古いアパートの部屋
亀梨「マジで?」
兎田「ああ」
兎田「大学辞めて田舎に帰ることになった」
〇田舎の総合病院
兎田「親父の病気がまた悪化してさ」
兎田「いよいよ働けなくなったらしい」
兎田「母さんだけじゃもう支えられないんだ」
〇古いアパートの部屋
兎田「秋になったらすぐ工場で肉体労働だ」
兎田「親父の友達が勤め先を世話してくれてさ」
兎田「助かったよ」
兎田「俺は運が良かったんだ」
兎田「今までありがとな 遊んでくれて」
兎田「楽しかった」
亀梨「どうせ」
亀梨「ボクの事なんて忘れるよ」
兎田「忘れねえよ」
兎田「あの卵の割り方とか強烈だもん」
亀梨「ボクは忘れる」
亀梨「もう会えない人のことなんか覚えてても仕方ないもんね」
〇黒背景
〇綺麗な一戸建て
〇システムキッチン
姉「なにその不細工な顔!」
姉「てか珍しい!料理の練習?」
亀梨「ぐすん」
姉「あんた泣いてんの?」
亀梨「ち、違う」
亀梨「ゆで卵を剥くと涙が出ちゃうんだ」
亀梨「アリシンが染みるから」
亀梨「だから」
亀梨「それを止めたくて」
姉「よしよし偉いね」
姉「でも、泣きたい時は我慢なんかしなくてもいいんだよ」
姉「あたしがついてるからさ」
〇黒背景
そして
〇駅前ロータリー
秋がやってくる
〇駅のホーム
兎田(あれから亀梨とは会えなかった)
兎田(あいつの顔もう1回だけでも見たかったな)
「兎田!」
兎田(顔見たら)
兎田(泣きそうになっちまった)
兎田「来てくれたんだな」
兎田「あずきボー1人で食べ切るの苦労したぞ」
亀梨「悪かったよ」
亀梨「君、大丈夫なのか?」
亀梨「不安なのを我慢してないか?」
兎田「何言ってんだ」
兎田「俺、これから親父の代わりをやるんだぜ」
兎田「弱音なんか吐いてらんないよ」
亀梨「そっか」
亀梨「あのさ」
兎田「弁当?」
兎田「俺に?」
兎田「ありがとう!」
兎田「すっげー嬉しい!」
兎田「電車の中で食べるよ」
亀梨「兎田!」
〇黒背景
亀梨「ボクは君のことずっと覚えてるからな」
亀梨「君と遊んだ時間を」
〇駅のホーム
兎田「なんて言ったんだ?」
亀梨「・・・」
亀梨「君はボクのことなんかすぐに忘れろ!」
兎田「俺は忘れねーよ」
兎田「お前のことずっと覚えてる」
亀梨「忘れろって!」
亀梨「そんで!」
亀梨「とっとと大人になっちまえ」
〇黒背景
〇白
まもなく電車が参ります
白線の内側までお下がりください
〇駅のホーム
亀梨「電車が来ちゃう」
兎田「・・・」
亀梨「お別れだな」
亀梨「さよならだ」
兎田「何言ってんだよ」
兎田「また会おうぜ、だろ」
亀梨「・・・」
亀梨「兎田」
亀梨「バイバイ」
〇黒背景
〇走る列車
〇新幹線の座席
兎田「そういえば亀梨が弁当くれたんだったな」
兎田「タマゴサンドだ!」
兎田「それと」
兎田「手紙?」
〇黒背景
兎田へ
ボクは子供すぎた
君の事情とか想像もできずに
いつも自分の事ばっかりでさ
それでも
ボクがついてるから、って
兎田の力になってあげられたらと思う
待ってくれてる必要なんかない
ボクの事なんて忘れちまってもいい
だけど
自分が成長できたと思えたその時は
きっと会いに行くよ
〇黒背景
〇走る列車
兎田「やっぱあいつ料理下手だな」
兎田「マスタード多すぎだろ」
兎田「・・・」
兎田「辛すぎて」
〇街の全景
涙が止めらんねえ
〇黒背景
〇黒背景
兎田と亀梨がどうなるのか
〇駅のホーム
再会する日がくるのか
〇古いアパート
それは分からない
ただ
〇学校脇の道
もう二度と来ない夏休みが終わった
それだけが確かだった
〇黒背景
〇白
〇走る列車
〇田舎町の駅舎
おわり
背中を押したくなる様な二人でした。
でも亀さんがいつか追い付きそうなのでそっとしておきたくもありますね。
ウサギとカメ、追いつきそうな予感のする終わり方に、よかったね、となりました!最初の何気ないやりとりから、二人の気の置けない仲の良さが伝わってきました!素敵な作品ありがとうございます!
前半の微笑ましい何でもない二人のやり取りがあるからこそ、後半の別れがつらかったです😭
恋人だったとしたら行かないでって言うこともできたかもしれないけど…🥲
子供だった亀は兎に追いつくことが出来たのかな、と匂わせるラストとキャラ名が秀逸でした😆